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ワーキングマザーは名門私立では肩身が狭いの?

プレジデントオンライン / 2013年5月11日 9時0分

出展:ベネッセ教育研究開発センター「中学受験に関する調査」2012年9月に、首都圏で小学3年生~6年生の子供を持つ親にアンケート。「中学受験をさせる」「中学受験をさせるかまだ決めていない」「中学受験はさせない」のうち、前2つに回答した「中学受験検討世帯」で、第1志望が私立中学だった世帯の数字。

「共働き夫婦が子供を私立に入れるのって、おかしいことなんでしょうか?」

中川亜紀さん(36歳・仮名・以下同じ)は、少々苛立たしげな表情を浮かべながらいきなりこう切り出した。

中川家は3人家族。夫の道治さん(38歳)の年収は約800万円、食品メーカーで研究員を務める亜紀さんの年収は700万円。世帯年収は1500万円であり、子供を私学に通わせる余裕は十分にある。

そこで亜紀さんは、かわいい一人息子を私立の小学校に通わせようと考えたのだが、義理の母親に待ったをかけられたというのである。

「お義母さんたら、私立の小学校はお金持ちの子たちが通うところだから、共働き夫婦が通わせたら子供が惨めだなんておっしゃるんですよ」

実を言うと、家計相談に来られる方の「教育プラン」はここ数年の間に激変している。

2006年から08年にかけては、いわば“私立バブル”の時代だった。所得格差の拡大と、それに伴う公立校の低迷ぶりが吹聴されたことで、大半は中学からなのだが、多少無理をしてでも子供を私立に入れたいという相談者が、この時期、急激に増えたのである。

現状の収入では難しいと指摘しても、決まって奥さんが「私がパートに出るから」とおっしゃる。たしかに子供が1人だけなら、パートで年間100万円稼げばなんとかならなくもない。そこまでして子供を私立に通わせたいというムードが、この時期にはあったのだ。

ところが私立バブルは、08年9月に起きたリーマン・ショックによって、完全に終息することになる。

仮に小学校から大学まで私立に通わせるとすると、16年間にわたって、毎年100万円程度の教育費がかかることになる。リーマン・ショックによってサラリーマンの給与は完全に頭打ちになり、しかもいつリストラされてもおかしくないという時代が到来して、これだけの負担を背負っていけると断言できる家庭は一握りになってしまったのである。奥さんがパートに出てまで私立に通わせるというパターンも、ほぼ絶滅してしまった。

「つまり、義母の言う通り、共働きで私立に入れるのはおかしいということでしょうか」

「いや、そんなことはありません。たしかに私立バブル以前は、子供を私立に通わせるのは一部のお金持ちだけであり、お母さんは専業主婦が相場でした。しかし最近は、お母さんもフルタイムでバリバリ仕事をしているケースが増えているのです」

少子化によって一部のブランド校を除けば、どの私立も生徒の確保が難しくなってきている。学校側にすれば“新しいお客”は大歓迎のはずである。しかし、学業の途中で親が学費を払えなくなって公立に転校ということになると、学校も困るし子供もかわいそうである。

その点、共働きでしかも妻が高収入という夫婦は、私学にとってウエルカムな“新しいお客”であることは間違いない。

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出典:「平成22年度子どもの学習費調査」(文部科学省)、「平成22年度学生生活調査」(独立行政法人日本学生支援機構)

しかも、共働き夫婦はリストラに強い。夫が1人で1000万円稼いでいる場合、夫がリストラされれば収入はゼロになるが、夫と妻が500万円ずつ稼ぐ共働き夫婦なら、一方がリストラされてもいきなり年収がゼロになることはない。

さらに、同じ世帯年収なら1人よりも2人で稼いでいるほうが税金が安いというメリットもある。所得税と住民税は累進課税であり、1人で年収1000万円の場合と、2人合わせて年収1000万円の場合を比較すると、後者のほうが約50万円も税金が安いのだ。私立の年間学費のほぼ半分を賄えてしまう金額である。

「だったら、共働きで何の問題もないじゃありませんか」

「経済的にはその通りです。ただ1つだけ問題があります。それは、お子さんをいつから私立に入れるかという問題です」

亜紀さんは小学校から私立に通わせたいと希望している。しかし、私立小の場合、親が全面的に学校教育に協力することを前提にしている場合が多いのだ。だから、さまざまな行事が当然のごとく平日にも開催されるし、PTA活動への参加もほとんど義務。仕事を持っているという理由で逃れるのは難しい。

つまり、共働き夫婦が子供を私立に通わせるなら、親があまり学校にかかわらないでも済む中学からというのが、より現実的な選択なのである。

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藤川 太
1968年、山口県生まれ。ファイナンシャルプランナー。東京、大阪、名古屋に拠点を持つ「家計の見直し相談センター」の看板相談員。教育費と老後資金の危機を憂える著書『サラリーマンは2度破産する』(朝日新書)や『1億円貯める人のお金の習慣』(PHP研究所)が好評。

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(ファイナンシャルプランナー 藤川 太 構成=山田清機)

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