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父の夕食は納豆だけ……教育費の誤算で共倒れ寸前

プレジデントオンライン / 2013年5月22日 9時45分

「誤算ですよ。まさかこんなにかかるとは……」――肩をがっくり落としたまま、仲本茂樹氏(仮名、51歳)は悔しがる。妻(46歳)と女・男の2人姉弟の4人家族。首都圏郊外で購入した一軒家から都内中堅メーカーに通う。長女は4年前、みずから「中学受験がしたい」と塾通いを始めた。

仲本氏は晩飯を水か“もずく”で我慢してバックアップ。私立校の授業料を考えると、年収570万円弱の仲本氏も気が気ではなかったが、「めでたく失敗、公立へ行ってくれた(苦笑)」。その後も月2万円の個人塾に3年通った末、今春に第一志望の県立高校へと進学した。

初期費用は入学金5650円と通学用の自転車1台分ですむはずだったが……。

「入ったバスケ部が県内有数の強豪。毎週土・日はすべて他校への遠征。夏休みなんて、3泊の合宿を4回ですよ」

この費用がバカにならない。遠征時は、電車代とコンビニ弁当代で1日3000~5000円が消える。月々の手取り40万円、うち住宅ローンが15万円(25年ローン、残り5年)。そこから3万~5万円弱が飛ぶのはつらい。

「夏合宿では合計11万円が消えました。ユニホーム代4万円の請求書が手元にありますが、まだ払ってません」

2カ月ごとに4万円弱、年内に計12万円支払う修学旅行の積立金が、仲本氏の神経をさらに逆撫でした。

「高校の授業料無償化に賛同して民主党に1票入れたのに……。長女は帰宅が10時、11時。塾に通う暇もないが、自宅では1秒たりとも勉強していない。逆に、中1の長男は塾にも行かせず放ったらかし。2人ともグレてないのが救い」

倹約も限界に近い。昼は同僚の誘いを断り、1人オフィスでカップラーメンかコンビニのおにぎり。晩飯は1パック95円のもずくの代わりに3パック68円の納豆を1パックのみ。自宅のパソコンが壊れたのを機に、ネットをやめた。学校とのやりとりは今やメールが主流だが、仲本家の分だけプリントを貰う。

「休日の朝、ゴルフに行く直前にファンヒーターが壊れた。かみさんが怖くて、その日にゴルフ代と同価格のを即買い。洗濯機もガタガタ鳴り始めた。次は冷蔵庫か……家電が寿命を迎えるのが怖い」

昨年の台風ではがれた自宅の天井も、ガムテープで張りつけたままだ。

■「後で返す」とわが子のお年玉を……

教育費が誤算だったのは確かなようだ。が、妻のパート収入を含めれば年収600万円弱。なのに「預貯金がプラスになったことがない」(仲本氏)のはなぜか。

「私と同じ、『何とかなるわ』の典型的なバブル世代。見栄を捨てられず、消費をまだ美徳だと思っている」

仲本氏の家計を見たFPの深野康彦氏が苦笑する。その消費=美徳の意識が如実に表れているのが車だという。

「軽自動車と、新古で購入したベンツの計2台を持っていた。先日ベンツのドアミラーを修理に出したら18万円と聞いてビックリ」(仲本氏)、2台とも売却して国産車を170万円で購入した。

「“軽”1台を残せばいいのに。買い替えという“美徳”の口実だったのかも。長女にゴルフセットを買ったそうですが、使わないなら売ったほうがいい」(深野氏)

一番怖いのが、仲本氏の健康だ。

「この食事では体を壊し、かえってお金がかかる。家族のためにわが身を犠牲に、という考えは独りよがり。奥さんに『風邪ひくな』と一喝されそう」(同)

震災で仕事はガタガタに。最近ようやく持ち直すも、収入増は望み薄だ。おのおのの両親は健在だが、長女の高校受験が終わると“支援打ち止め”を宣告された。最近、妻が「後で返す」と言いつつわが子のお年玉に手を付けたという。

「奨学金を借りられるから、というだけでお子さんを大学に進めるのはやめたほうがいい。4年間で数百万円の債務を背負ったまま社会に出ることになる。子供が就職できず、かつ夫が失業ともなれば、親子で共倒れになります。まず、奥さんにもっと稼いでもらわないと、老後は最悪で生活保護を受けるかも。とにかく見栄とプライドを捨て、家族で内実をあけすけに話しあうべきでしょう」(深野氏)

就職できれば幸運というご時勢は続く。“最悪”は絵空事ではないのだ。

(プレジデント編集部 西川 修一 宇佐見利明=撮影)

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