40代:教育費に年300万!「お金=子どもへの愛」の末路
プレジデントオンライン / 2013年6月4日 10時45分
■Cさんの悩み
外資系企業に勤めるCさんの年収は1200万円とハイクラス。しかしそのわりに貯蓄額が少なめだ。年俸制でボーナスがないため、貯蓄をするなら月々の収入からとなるが、貯蓄ができないどころか、生活費が足りず貯蓄から補填する月もある。
そこで最近、「自分たちは世間一般とズレているのでは?」と思い始めた。家計簿をつけてみると、支出に占める割合が大きいのは教育費だった。妻は教育熱心で「子どもには十分な教育を受けさせてあげたい」と、子どもたちはほぼ毎日習いごとや塾に出かけている。
長女は私立中学へ通っており、現在公立小学校へ通う長男も私立を受験する予定である。少なくとも12年間は私学の授業料を払うことになり、長女が大学へ入学する頃には生活が苦しくなるのではないかと不安だ。
10年前に25年ローンを組んで、3125万円のマンションを購入した。ローンが終わる15年後にちょうど定年になる。いまのうちに少しでも貯蓄額を増やしておきたいが……。
■横山さんのアドバイス
年収は高いほうだが、高いなりに贅沢もしているという印象だ。これだけ収入があればさすがに余ると思いきや、「稼ぐに追いつく貧乏なし」的な考え方で、節約するという意識がない。手取りが70万円以上あり、しかも住居費に関していえば収入や家族構成に対して高くはない。にもかかわらず給与を使い切ってしまう原因は何か。
まずは「食費」である。子どもが食べ盛りというが、高級食材を買うことや、家族での外食も多いという。予算を決めて節約を心がけ、家族での外食を月1回減らすことで1万8000円を節約できた。
目立つのはCさん自身も言うように「教育費」だ。長女が通う私立中学校の授業料はともかく、2人ともが塾へ通い家庭教師もつけている。長女がピアノ、長男がサッカーを習っており、ピアノの発表会や夏期講習がある月は赤字になるとのこと。この先もっと教育費がかかることを考えて、家庭教師はやめて塾1本に、かつ必要科目を絞った。また本人たちがピアニストやサッカー選手を志しているわけではなかったので、受験までは習いごとをセーブ。毎月11万円が浮いた。
「娯楽費」も多すぎた。「子どもが大きくなったら家族での思い出づくりもできなくなる」との思いから、頻繁に週末旅行などに出かけていたという。思い出づくりが悪いとは言わないが、お金のかからない方法もあるはず。遠出は控えることで2万3000円の削減となった。
そのほか保険の項目で夫の死亡保障を減らす、夫の小遣いや夫婦のワイン代を一部削って約10万円が貯蓄に回るようになった。年間では約130万円。定年までの15年間に2000万円近くが貯まる。これを子どものためではなく、自分たちの老後資金と考えよう。
「生命保険料」には子どもの学資保険も含まれており、大学入学時には1人200万円が確保できていることになる。大学4年間にかかる費用は私立の場合でも約500万円。すると、子どもに必要なのは1人あたりあと300万円で計600万円だ。これは現在の貯蓄でまかなえる。
60歳の時点で住宅ローンの負担がなく、金融資産が2000万円あれば、老後は何とかなりそうだ。それでも不足する心配があれば、下の子が中学生になった時点で妻が働くか、60歳すぎても夫が働けばいい。
私の家族は北海道にいる。私は東京と北海道を行ったり来たりの生活をしているが、北海道と東京を比べると「東京だから教育費がかかる」のではなく、「東京には教育にお金をかけなくてはいけないと思っている親が多い」と感じる。
教育費は投資であり、それができない親は子どもに対して申し訳ないと思っているのだ。はたしてそうだろうか。子どもにお金をかけすぎると、子どもの金銭感覚もズレてくる。
私の事務所に相談に来るお客さんはたいてい、貯蓄ができずに悩んでいる人たちだ。彼らに「子どもの頃はどうでしたか?」と尋ねると、「わが家はわりと裕福でした」と答える人が多い。何でも買ってもらえたし、大学時代は口座に一定額が入っているよう親がお金を足してくれていた、という人までいた。
そういう子どもが大人になり、困って相談に来るのだ。正しい金銭感覚を持ち、自立した大人になるよう教育するのも親の役割ではないか。子どもにかけるお金は最低限にし、「稼いだお金は老後のために蓄える」と意識を変えてほしい。
■世代別「老後破滅」ウイルス&処方箋
●「溺愛投資」ウイルス
【症状】子どもにかけるお金はすべて投資だから、子どもがやりたいと言ったことはとにかく何でもやらせてあげたい。周囲に類似タイプの親がいれば触媒となってこのウイルスは増殖。年収も少なくないので、塾、家庭教師やスポーツ、ピアノなど子どもの才能を伸ばすためならお金は惜しみなく使う。
【処方箋】教育費ならすべて投資とはいえない。勉強も趣味もと考えず、子どもが本当にやりたいことだけに絞る。特効薬は、かけられる教育費を子にも隠さず伝え、やりたいことを自分で考えさせること。
●「保険加入」過剰症
【症状】何かあったら不安だからと、営業担当から勧められるがまま保険に加入。適額がわからず過剰になっている。死亡保険、がん保険、医療保険など、入っただけで安心するという兆候が見られる。保険商品の構成が複雑すぎて、じつは保障内容が理解できていない。
【処方箋】治療の第一歩は入っている保険の内容を把握することから。子どもももう小さくないので、高額な死亡保障がついた保険に入ったままなら、見直す。ネット生保なども活用しつつ、必要最低限の保険プランに見直しを。
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横山光昭
1971年生まれ。FPとして司法書士事務所に勤務した後、2001年に独立。5300人以上の家計を再生した実績を持つ。
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(家計再生コンサルタント 横山 光昭 構成=八村晃代 撮影=アーウィン 写真=PIXTA)
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