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微生物が難分解性プラスチックストローを分解!西鎌倉小学校の土壌よりP-Lifeを添加したポリプロピレンの分解菌を発見

PR TIMES / 2024年11月25日 13時15分

PPストロー分解菌が示す未来、難分解性プラスチックの課題解決へ。



[画像1: https://prcdn.freetls.fastly.net/release_image/153129/1/153129-1-f96ef72d499be3601e568566e9d41357-2011x1330.jpg?width=536&quality=85%2C75&format=jpeg&auto=webp&fit=bounds&bg-color=fff ]


ピーライフ・ジャパン・インク株式会社(社長:冨山 績 本社:東京都世田谷区)と慶應義塾大学(塾長:伊藤公平 所在地:東京都港区)、株式会社伊藤園(社長:本庄大介 本社:東京都渋谷区)、SI樹脂産業株式会社(社長:坂下信行 本社:静岡県牧之原市)、慶應義塾先端科学技術研究センター(所長:津田裕之 所在地:神奈川県横浜市)の研究チームは、プラスチックに生分解性を付与する添加剤「P-Life」(用語1)を添加したポリプロピレン(以下PP(用語2))の分解菌を取得することに成功しました。

この成果は、難分解性ポリオレフィン系プラスチック(用語3)の微生物による分解処理を実現する上で重要な一歩となります。更に、これらの分解菌は、ポリオレフィン系プラスチックから生成されるマイクロプラスチックを分解・除去し、地球環境への蓄積解消に有効であると期待できます。

本成果は、2024年11月28日の日本分子生物学会で発表します。

主要研究者:慶應義塾大学理工学部 生命情報学科 二木彩香、慶應義塾先端科学技術研究センター研究員 黄 穎、慶應義塾大学理工学部 生命情報学科教授 宮本憲二、ピーライフ・ジャパン・インク株式会社 冨山 績、SI樹脂産業株式会社 安倍義人、株式会社伊藤園 内山修二

本研究のポイント:
1. 鎌倉市立西鎌倉小学校の土壌よりP-Lifeを添加したPPの分解菌を複数発見しました。

2. これらの分解菌をP-Lifeを配合したポリオレフィン系素材のプラスチックストローに作用させたところ、明確な分解痕を確認しました。

3. これら分解菌は、PPだけでなくP-Life含有PEも分解することが分かりました。


研究の背景:
近年、環境へのプラスチックの流出と蓄積が大きな社会問題となっています。中でも、PPやPEなどのポリオレフィン系プラスチックは難分解性であり、特にPPは自然界での微生物分解が非常に困難です。この様な状況の中、ピーライフ・ジャパン・インク株式会社により、ポリオレフィン系プラスチックに生分解性を付与する画期的な添加剤「P-Life」が2003年に開発されました。


P-Lifeは、PPを徐々に官能基を持つ低分子化合物へと変化させます。生成した低分子化合物は、自然環境に生息する微生物によってゆっくりと代謝分解されることが既に分かっています。そこで本研究では、2019年よりP-Life添加PPストローの微生物による代謝分解度の測定をJIS K6955法“プラスチックの土壌中での二酸化炭量測定による好気的究極生分解度の求め方”に基づき行ってまいりました。


しかし、土中での分解速度が比較的緩やかなこともあり、通常の手法ではこれまで分解菌の取得には至りませんでした。そこで本研究チームでは、探索源や分離条件を工夫することで、このたび分解菌の取得(単離)にはじめて成功しました。


研究の内容・成果:
本研究チームは、2022年度に鎌倉市立西鎌倉小学校において、JST共創の場形成支援プログラム(COI-NEXT)リスペクトでつながる「共生アップサイクル社会」共創拠点の一環として、「地球に還るストロープロジェクト」(※1)を実施しました。


このプロジェクトでは、給食で使用するプラスチックストローをP-Lifeを配合したPPストロー(P-Life添加PPストロー)に置き換え、西鎌倉小学校の校庭の土壌を採取し、同小学校の教員、生徒の皆様の協力のもと分解実証実験を行いました。


持続可能な循環型社会について学びを深める教育プログラムであるとともに、これまで難分解とされてきたプラスチックごみを土に還す研究です。また、この分解実証実験において使用した土壌には、優秀な分解菌が存在すると予想し、この土壌からの微生物探索を試みました。

[画像2: https://prcdn.freetls.fastly.net/release_image/153129/1/153129-1-06cdd4ad5bfadf4e19b14a781dc89464-454x178.jpg?width=536&quality=85%2C75&format=jpeg&auto=webp&fit=bounds&bg-color=fff ]


なお本研究チームは、分解菌の発見の確率を上げるため、予めP-Life添加PPストローを加熱して熱分解処理を行いました。つぎに、その熱分解処理物を、微生物が食べ易いと考えられるアセトンに可溶な低分子化合物群と、食べ難い不溶の高分子化合物群に分けました。そして、西鎌倉小学校で実証実験に使用した土壌から、これら2つの化合物群について分解菌を探索しました。


その結果、低分子化合物群から2種類、高分子化合物群から3種類の分解菌をそれぞれ単離することに成功しました。次に、これら分解菌を用いて熱処理していないP-Life添加PPストローの分解能を評価した結果、ストロー表面に明確な分解痕を確認しました(図1の右の写真)。

[画像3: https://prcdn.freetls.fastly.net/release_image/153129/1/153129-1-427afd5dc9b36ca8f4d5b7d40c1f0436-1839x795.jpg?width=536&quality=85%2C75&format=jpeg&auto=webp&fit=bounds&bg-color=fff ]
図1 P-Life含有PPストローの表面の電子顕微鏡写真。無処理のストロー(左)と微生物処理したストロー(右)


また、様々な場所から採集した土壌に、P-Life添加PPストローを加えて1ヶ月後の菌叢を、ストローを加えていないものと比較しました。その結果、ほとんど全てのサンプルに於いて、P-Life添加PPストローを加えた時の分解菌の存在割合が大きく増加していました(図2)。したがって、この分解菌がメジャープレーヤーであることが強く示唆されました。
[画像4: https://prcdn.freetls.fastly.net/release_image/153129/1/153129-1-7ef4ef7a864022a16cde08ee10ce71d5-494x450.jpg?width=536&quality=85%2C75&format=jpeg&auto=webp&fit=bounds&bg-color=fff ]
図2 分解菌の網羅的菌叢解析の結果


今後の展開:
P-Life添加PPの分解菌を発見し、高い分解能があることを明らかとしました。また、本成果により見いだされた分解菌とP-Lifeを組み合わせることで、ポリオレフィン系素材を使用した製品の微生物による分解効率の大幅な向上が期待できます。


そのため本研究チームは、今後、P-Life添加ポリオレフィン系素材を使用した様々な製品(キャップ、ボトル、ラベルなど)やポリオレフィン系以外の素材についても、分解菌とP-Lifeによる微生物分解の効果を検証し、難分解性プラスチックの自然環境での循環に向けた取り組みを推進してまいります。


(※1)慶應義塾大学が代表機関となり、参画企業と参画大学、鎌倉市の共創による国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)の「共創の場形成支援プログラム(COI-NEXT)地域共創分野育成型デジタル駆動超資源循環参加型社会共創拠点」のプログラムのことです。当プログラムは、地域大学等を中心とし、地方自治体、企業等とのパートナーシップによる、地域の社会課題解決や地域経済の発展のための自立的・持続的な地域産学官共創拠点の形成を目的としたものです。

-学会発表情報-

第47回日本分子生物学会、11月28日(木)、福岡国際会議場 マリンメッセ福岡
演題:P-Life含有ポリプロピレンの微生物分解メカニズムの解明
演者:二木 彩香、黄 穎、冨山 績、安倍 義人、内山 修二、宮本 憲二


-用語の説明-

(用語1)P-Life
微生物分解が困難とされる難分解性プラスチックを、微生物分解へと導く画期的な添加剤です。難分解性プラスチックは、P-Lifeにより官能基を持つ低分子化合物へと変化し、微生物により分解されやすくなります。さらにP-Lifeは, 植物油から製造されており、安全性の高いものです。また、P-Lifeは、PPの物性や加工性に影響を与えません

(用語2)ポリプロピレン(PP)
水素と炭素から構成される合成樹脂で、日常で最も目にするプラスチック素材の一つです。ポリエチレン(PE)と比べて硬く、耐熱温度も高い点が特徴です。

(用語3)ポリオレフィン系プラスチック
単純なオレフィンをモノマーとして合成された高分子化合物の総称です。代表的なものとして、ポリプロピレン(PP)やポリエチレン(PE)があります。一般的に、微生物による分解(自然界に存在する微生物の働きにより最終的にCO2と水に完全に分解する。)は困難で、環境中に廃棄されたプラスチックの多くは蓄積されてしまいます。

(用語4)菌叢(きんそう)
細菌以外も含めて、ある一定の環境に存在する微生物群。マイクロバイオームとも呼ばれます。

                                                          
本件に関するお問い合わせ先
研究内容の詳細に関して
慶應義塾大学理工学部生命情報学科 教授 宮本憲二(みやもと けんじ)
TEL:045-566-1786 E-mail:kmiyamoto@bio.keio.ac.jp

本リリース全般に関して
ピーライフ・ジャパン・インク株式会社
TEL:03‐3705‐7284 E-mail:info@p-lifejapan.com
https://www.p-lifejapan.com/ja/contact

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