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レポート「地球温暖化対策と経済成長との両立に向けた考察~バイオエタノール活用が石油業界に与えるポジティブインパクト~」の発表

PR TIMES / 2019年3月5日 16時40分

バイオエタノール混合ガソリンの本格普及が石油業界にもたらす具体的メリットを試算

 一般社団法人 日本パブリックアフェアーズ協会理事である慶應義塾大学大学院経営管理研究科の岩本隆特任教授は、レポート「地球温暖化対策と経済成長との両立に向けた考察~バイオエタノール活用が石油業界に与えるポジティブインパクト~」を発表しましたのでお知らせします。



【サマリー】

パリ協定発効を契機として各国で「脱炭素」化が加速する中、内燃機関自動車(ICEV:Internal Combustion Engine Vehicle)から電気自動車(EV:Electric Vehicle)へのシフトが大きな潮流に。一方、電力の多くを火力発電に依存する日本においては、EVシフトのCO2排出量削減効果は大きくありません。むしろ、ハイブリッド車とバイオエタノール混合ガソリンの併用で、EVと遜色ないCO2排出量削減効果が期待できます。
石油業界にとって、EVシフトはガソリン需要・収益の減少に直結。まだ日本で普及が進んでいないバイオエタノール混合ガソリン(特に直接混合E10)を本格的に普及させることによる石油業界へのポジティブインパクトを試算したところ、ドラスティックなEVシフトが進んだ場合と比べ、石油業界の収益を9,402億円(2030年時点の推計)も向上させることが分かりました。
また、仮に政府目標どおりにEVシフトが進んだ場合、2040年頃には石油業界最大手であっても事業継続困難なレベルまでガソリン需要が落ち込むことも分かりました。脱炭素化と経済成長の両立のため、バイオエタノール混合ガソリンの本格的普及が必要とされています。


 2016年11月4日に「パリ協定」が発効し、地球温暖化対策が喫緊の課題となるなか、各国では内燃機関自動車から電気自動車へのリプレイス(EVシフト)が加速しています。2018年6月に発表した「地球温暖化対策と経済成長との両立に向けて一考察-日本の基幹産業である自動車産業を中心に-」では、化石燃料の構成率が高い日本の電源構成ではEV普及によるCO2削減効果は高くなく、また自動車業界等へのネガティブインパクトが大きいことから、ガソリンへのバイオエタノールの混合比率の増加を短期の提言としました。

※「地球温暖化対策と経済成長との両立に向けて一考察-日本の基幹産業である自動車産業を中心に-」については以下のURLをご参照ください:
https://www.j-paa.or.jp/policyproposal/111/

自動車業界だけでなく、内燃機関自動車に欠かせないガソリンを供給する石油業界にとってもEVシフトのマイナスの影響は無視できるものではありません。石油業界においても地球温暖化対策と経済成長を両立するため、本レポートでは定量的な分析を実施しました。

【日本における輸送燃料へのバイオエタノール導入状況】
 CO2排出量削減に有用な手段の一つであるガソリンへのバイオエタノールの混合には、二つの方式があります。ガソリンに直接バイオエタノールを混合する「直接混合方式」と、バイオエタノールと石油ガスの一種であるイソブテンを合成したバイオETBEをガソリンと混ぜる「ETBE方式」で、日本国内流通量のほとんどをETBE方式が占めています。ETBE方式はバイオエタノールそのものの添加量が低いため、高いCO2削減効果を得るためには、世界的に主流となっている直接混合方式(E10、E20)の本格導入が肝要となります。なお、日本の自動車業界ではすでにE10対応はほぼ完了している状況にあるため、バイオエタノール混合ガソリンの流通を待つ状態にあるといえます。

【バイオエタノール混合ガソリン(特に直接混合E10)本格普及のメリット】
■石油業界のメリット:
 政府目標どおりにEVシフトが行われた場合と、(EVシフトではなく)E10の本格普及によりCO2排出量削減を目指す場合のガソリン需要量を推定し、石油業界としての収益減少の試算を行ったところ、E10本格普及のほうが9,402億円の増収となり、石油業界にとってもメリットがあることが示されました。
・EVシフトする場合 ▲1,410,560,190千円 (2030年時点の推計)
・E10を本格普及させる場合 ▲470,313,740千円 (2030年時点の推計)

また、EVシフトする場合の2050年までのガソリン需要を推計した結果以下のような状況が想定され、石油元売会社の業界再編や撤退に直結することが分かりました。
・ 2036年の需要量は業界最大手1社の供給能力で賄える
・ 2040年頃までに石油元売各社は撤退の意思決定
・ さらに2040年以降は業界最大手であっても事業継続が困難な需要量へ

[画像: https://prtimes.jp/i/42181/2/resize/d42181-2-556456-1.png ]


                                 図表:ガソリン消費量(KL)の推計予測

それに対して、バイオエタノール混合ガソリンの本格的普及はガソリン消費量の急落の回避につながることが示されました。バイオエタノールはガソリンの代替であるため、バイオエタノールの導入はガソリンそのものの消費量を一定の添加割合で減少させることとなります。しかしながら長期に渡り経済性を保ちながら環境への貢献を果たすという点において、バイオエタノール混合ガソリン(E10、E20)本格導入の意義は大きいことが分かります。

■ガソリンスタンドの維持:
 ガソリンスタンドは、運輸や地域社会を支え、また災害時の燃料供給拠点としても機能する重要な基礎的社会インフラです。E10を本格普及させることにより、4,344箇所のガソリンスタンドを維持できることが分かりました。
・EVシフトする場合 24,294箇所(2030年予測)
・E10を本格普及させる場合 28,638箇所(2030年予測)

【提言】
■短期:ICEVでのCO2削減 -バイオエタノール混合比率の増加-
■中長期1:発電時でのCO2削減 -再生可能エネルギーの積極的な導入-
■中長期2:バイオ燃料の産業化

(レポート本文は、下記URLから御確認ください。)
https://www.j-paa.or.jp/policyproposal/159/

【執筆者プロフィール】
岩本 隆 慶應義塾大学大学院経営管理研究科特任教授

東京大学工学部金属工学科卒業。カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)工学・応用科学研究科材料学・材料工学専攻Ph.D.。
日本モトローラ株式会社、日本ルーセント・テクノロジー株式会社、ノキア・ジャパン株式会社、株式会社ドリームインキュベータ(DI)を経て、2012年より慶應義塾大学大学院経営管理研究科特任教授。「技術」・「戦略」・「政策」を融合させた「産業プロデュース論」を専門領域として、様々な分野の新産業創出に携わる。

【事務局】
「一般社団法人 日本パブリックアフェアーズ協会」事務局
TEL:03-6821-7869  /  FAX:03-6674-2730

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