「全自動トンネル覆工コンクリート打設システム」を実工事に初導入
PR TIMES / 2023年3月7日 16時15分
中流動覆工コンクリート打設の高速施工と、生産性および品質向上を実現
鹿島(代表取締役社長:天野裕正)は、岐阜工業株式会社(岐阜県瑞穂市、代表取締役:宗像国義)、株式会社シンテック(高知県高知市、代表取締役社長:田所知美)と共同で、「全自動トンネル覆工コンクリート打設システム」を開発し、西日本高速道路株式会社発注の「新名神高速道路 大津大石トンネル工事」(滋賀県大津市)に初導入しました。本システムは、2020年に開発した締固めが不要な覆工用高流動コンクリートによる完全自動打設システムを、軽微な締固めが必要な中流動覆工コンクリートにも対応できるよう進化させたものです。これにより、中流動覆工コンクリートにおいても全自動による高速打設が可能となり、省力化による生産性および品質の向上を実現しました。
[画像1: https://prtimes.jp/i/116603/2/resize/d116603-2-2208fb6ac8f879213d64-4.png ]
2020年に開発した覆工用高流動コンクリートによる完全自動打設システムの概要
鹿島は、トンネル工事特有の狭隘な空間での人力作業の削減と生産性・安全性の向上を目的に、締固めが不要な覆工用高流動コンクリートを自動打設するシステムを2020年に開発しました。本システムはコンクリートポンプ車の圧送信号と配管の切替えをリンクさせることで、アジテータ車の入替え時以外は人の手を全く介さずに、打上がり高さを自動で調整しながら、左右均等にトンネル覆工の全断面をコンクリート吹上げ打設するものです。同年に、静岡県の模擬トンネルにて実証を行い、その有用性を確認しました。
本工事への導入にあたっての課題
大津大石トンネルは、3車線道路の大断面トンネルであり、覆工コンクリートの打設量は通常の2車線トンネルの約2倍となる約200m3/日になります。そのため、人力によるコンクリート配管の切替を行う従来工法を採用した場合、打設時間が長時間となり作業員の負荷の増大が懸念されました。また、地域の生活環境保全の観点から工事車両の通行時間にも配慮しており、限られた時間の中で品質確保と高速施工を両立する必要がありました。
【本工事への導入にあたっての改良点】
本工事で使用する、軽微な締固めが必要な中流動覆工コンクリートに対応できるよう、既開発の覆工用高流動コンクリートによる完全自動打設システムに以下2点の機能を追加しました。
[1] コンクリートポンプ2台を連携させた打設制御装置
1日あたり200m3の中流動覆工コンクリートの大量・高速打設に対応するため、コンクリートポンプ(以下、ポンプ)を左右に1台ずつ配置しました。同コンクリートは普通コンクリートに比べて型枠に作用する圧力が高くなるため、左右均等に打ち上げることが重要な管理項目となります。通常、ポンプ2台を用いて左右の独立系統で打設すると、左右の打上がり高さを均等に保つことが難しく、高さ調整によるロスタイムが発生し打設速度が下がることがあります。そこで、型枠表面に設置した複数のセンサでコンクリートの打上がり高さを検知して、各ポンプの吐出量を自動で切替制御する装置を開発しました。これにより、常に左右同じ高さを保ちながら打設することができます。
[画像2: https://prtimes.jp/i/116603/2/resize/d116603-2-842a600466587f17a277-3.png ]
[2] 型枠バイブレータ完全自動制御装置
中流動覆工コンクリートを用いたコンクリート打設における締固めは、従来、型枠バイブレータの制御を人が操作盤を介して手動で行う必要がありましたが、今回、型枠バイブレータを完全自動制御する装置を開発し、人による操作を不要としました。本装置は、予め設置した全ての型枠バイブレータを自動制御するものであり、稼働のタイミングや持続時間をパターン化して事前に設定することにより、[1] の打設制御装置と連動して、コンクリートの打上がり高さに応じて自動で締固めを行います。
[画像3: https://prtimes.jp/i/116603/2/resize/d116603-2-b4d69527be5e293ace9b-1.png ]
本システムの導入効果
本システムの導入により、中流動覆工コンクリートの全自動高速打設を実現したことで、生産性および品質が向上しました。
1. 生産性向上
本システムを用いて打設した結果、人力による配管切替が必要な従来工法と比べ、平均打設速度は約15%向上、マンアワー※は約50%低減できることを確認しました。
※ トータル作業人員×打設作業時間
2. 品質向上
従来工法と本システムで打設した覆工コンクリートの表層品質を透気係数により比較したところ、本システムを用いた覆工コンクリートの透気係数は従来工法に比べ大幅に良好であり、ばらつきも小さいことを確認しました。これは、今回新たに搭載した型枠バイブレータ完全自動制御装置により、作業員の技量や熟練度によることなく、確実かつ均等な締固めを行うことができた結果です。
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今後の展開
鹿島は今後、本システムを他の工事に広く展開するとともに、既開発の締固めが不要な覆工用高流動コンクリートによる完全自動打設システムの実工事への導入により、さらなる合理化施工を検証していきます。また、本システムを用いた覆工コンクリートの美観および品質の向上も含めた打設計画の最適化にも取り組んでいきます。そして将来的には、型枠の設置からコンクリート打設および養生に至るまでのすべての作業工程を自動的に行う統合システムの構築を目指し、研究開発を進めていきます。
工事概要
工事名称: 新名神高速道路 大津大石トンネル工事
工事場所: 滋賀県大津市大石東町~大石龍門町
発注者 : 西日本高速道路株式会社関西支社
施工者 : 鹿島建設株式会社
工事諸元: トンネル延長上り線695m、下り線917m、設計掘削断面積127.3m2、内空断面積103.8m2
工期 : 2019年5月~2025年2月
(参考)
トンネル覆工コンクリートの完全自動打設に成功! (2020年7月15日プレスリリース)
https://www.kajima.co.jp/news/press/202007/15c1-j.htm
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