7割が広告に自分の姿を見出せないと回答。これからの広告に必要なインターセクショナリティに関する調査「Beyond Gender 2(ビヨンド・ジェンダー2)」をUN Womenが発表。
PR TIMES / 2021年12月22日 14時15分
UN Women(国連女性機関)日本事務所は、日本・トルコ・イギリス・アメリカの4カ国を対象に広告におけるインターセクショナリティ(交差性)の影響を調査した「Beyond Gender 2(ビヨンド・ジェンダー2)」の日本語訳版を発表しました。
[画像: https://prtimes.jp/i/58172/3/resize/d58172-3-ca1c3da6a5f97e3eeb63-0.png ]
インターセクショナリティとは、人種、階級、ジェンダーなど、個人やグループに適用される社会的属性が重なり合い、差別や不利益が重複することを指します。世界最大規模の広告・コミュニケーション関連アワード・フェスティバルである「カンヌライオンズ 国際クリエイティビティ・フェスティバル」を主催するカンヌライオンズがスポンサーとなり、アンステレオタイプアライアンス(注1)のためにグローバル・マーケティング・リサーチ会社イプソスが実施した「Beyond Gender 2(ビヨンド・ジェンダー2)」は、日本・トルコ・イギリス・アメリカの広告におけるインターセクショナリティの存在と影響力を調べることを目的とし、2021年4月に各国2,000人の回答者を対象にオンラインで行われました。
「Beyond Gender 2(ビヨンド・ジェンダー2)」全文はこちら:https://japan.unwomen.org/ja/news-and-events/news/2021/12/beyond-gender-2
インターセクショナリティを描くブランドへの親近感は高くなる
さまざまな社会的属性を持つ人々を表現するインターセクショナルな広告は、ブランドに対する消費者の「親近感」を高めることがわかりました。広告を見た後のブランドへの親近感には、トルコ(+3.50)、イギリス(+4.09)、アメリカ(+5.50)で大きな効果があり、日本(+1.23)での効果はやや劣りました。
日本では7割が広告に自分の姿を見出せない
広告に対する反応には各国で大きな違いがありましたが、すべての国において過半数が自分と同じような人が広告に登場することはあまりないと感じていました。日本では「広告の中に自分を見出すことはほとんどない」と回答した人が68%となり、4カ国の中で最も高くなりました。また、日本では「自分のために作られたと感じる商品を容易に見つけることができる」と答えた人は10人中わずか4人という結果となりました。
ブランドは未だに、日本の多くの消費者の生活実態を反映しない伝統的家族やジェンダー役割の人々を描いている
6割を超える人が「多くのブランドは未だに、現実を反映しない伝統的ジェンダー役割の人々を描いている」「多くのブランドは未だに、広告において伝統的な家族内の役割に依存している」と回答しました。また、定量調査では、日本の広告は伝統的に個人よりも調和を重視する文化を反映し、特に女性らしさに関連する場合には、ステレオタイプに挑戦するのではなく強化する傾向があるという意見が多く出されました。
日本では約半数が仕事における差別や偏見を恐れている
「自分自身であることが理由で、職を見つけたり、維持したりすることが難しい可能性がある」と回答した人は、日本では48%に上りました。自己認識については国により大きな違いが見られましたが、差別された経験については、すべての国で伝統的に社会の周縁にいると考えられてきた人々(日本では未婚者、トルコではLGBTIQ+、アメリカやイギリスではマイノリティとされる人々など)が、最も差別を恐れていました。
日本で「自分であることに誇りを持つ人」は1割
回答者の多くが自己表現をすることで社会的評価や反響を受けることを恐れていますが、それでもアメリカとトルコでは、恐れを表明したマイノリティのグループを含め、人々は肯定的な自己認識を持っていました。日本では文化的規範の違いからか、自信や自意識について強調する回答者が非常に少なく、「自分であることに誇りを持っている(13%)」「自信がある(10%)」と回答した人は4カ国の中で最も少ない結果となりました。
日本の結果について考察をいただいている、アンステレオタイプアライアンス日本支部アドバイザーであり、東京工業大学リベラルアーツ教育研究員准教授の治部れんげ氏に和訳版の発表にあたり、コメントをいただきました。
「広告におけるジェンダー表現に関心を寄せる日本企業や行政機関が増えています。国際比較やインターセクショナリティに関心があるビジネスパーソンにこのレポートを読み、組織内での議論に生かしていただきたいです。」
広告やメディアは人々の価値観や行動に影響を及ぼし、社会的慣習を形成する力を持っています。広告にインターセクショナリティを取り入れることは、差別や偏見をなくし、さまざまな属性を持つ人が受け入れられる社会をつくっていくために必要な変化です。本調査結果によって広告やメディアに関わる、より多くの人々がステレオタイプを取り除き、インターセクショナリティを取り入れた発信を行っていくことで、インクルーシブな社会に近づくことを期待します。
「Beyond Gender 2(ビヨンド・ジェンダー2)」高解像度(13.5MB):https://www2.unwomen.org/-/media/field%20office%20japan/pdf/3%20beyond%20gender%20report%20ii_print.pdf?la=ja&vs=5409
「Beyond Gender 2(ビヨンド・ジェンダー2)」低解像度(3.4MB):https://www2.unwomen.org/-/media/field%20office%20japan/pdf/13%20beyond%20gender%20report%20ii_pc.pdf?la=ja&vs=5623
注1:<アンステレオタイプアライアンスについて>
UN Women(国連女性機関)が主導する、メディアと広告によってジェンダー平等を推進し有害なステレオタイプ(固定観念)を撤廃するための世界的な取り組みです。アンステレオタイプアライアンス日本支部は、2020年5月に設立されました。現在の参加企業は17社。企業の広告活動がポジティブな変革を起こす力となり、社会から有害なステレオタイプを撤廃することを目的とし、持続可能な開発目標(SDGs)、特にジェンダー平等と女性・女児のエンパワーメント(SDGs 5)の達成を目指します。
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