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AIで発見した「新規バイオマーカー」に基づいた迅速な抗がん剤開発をスタート

PR TIMES / 2023年8月9日 18時15分

大学とDeep Techが切り開く新しい創薬の姿

大阪大学大学院薬学研究科 井上豪 教授、生命機能研究科 日本電子YOKOGUSHI協働研究所 難波啓一 特任教授(常勤)、九州大学大学院薬学研究院 大戸茂弘 教授らのチームは、Deep Tech ベンチャー(株)COGNANOと共同で、バイオマーカー*1が発見されていない難治がんを解決する抗がん剤開発に乗り出します。これまでトリプルネガティブ乳がん(TNBC)*2は、標的となるバイオマーカーが発見されておらず、治療のための創薬が困難でした。バイオマーカーが不明な疾患をアンメットメディカルニーズ*3と呼びますが、TNBC以外にも膵がん、胆管がん、肺小細胞がんなど、多くの疾患が未解決のまま残されており、将来に向け大きな課題となっています(図)。
本事業では、ビッグデータを用いて新規バイオマーカーの探索に取り組むCOGNANO社と、大阪大学大学院薬学研究科/生命機能研究科、九州大学大学院薬学研究院が共同で、新規バイオマーカーを認識する抗体を用いて抗体薬物複合体(ADC)の開発に向けて研究を進めます。



本事業は、8月9日の大阪府知事定例記者会見において発表された通り、令和5年度創薬シーズ研究開発費補助金として採択されました。事業名称は「新規がんマーカーを標的とするVHH創薬の高速プラットフォーム戦略(トリプルネガティブ乳がんADC創薬のフィージビリティスタディ)」です。
[画像1: https://prtimes.jp/i/104790/6/resize/d104790-6-390d5f747b54985e60bc-4.png ]


1.研究の背景
トリプルネガティブ乳がんは、薬の標的となる分子(バイオマーカー)が発見されていないがんで、治療法が確立されていません。
Deep Tech ベンチャーの株式会社COGNANOは、トリプルネガティブ乳がん(TNBC)のがん細胞表面を特異的に認識するアルパカ由来抗体(VHH)*4を、ビックデータAI技術を活用した採掘技術を駆使して探索する技術を複数取得し、特許出願しています。
これは、抗体創薬を迅速に開始できるばかりではなく、新規バイオマーカーの発見も意味し、一石二鳥の創薬手法と言える、世界で初めての方法論です。

2.研究の内容
今回、株式会社COGNANOの方法論と合わせて、大阪大学大学院薬学研究科/生命機能研究科と九州大学大学院薬学研究院が協力してデータ取得を高速化します。
大阪大学大学院薬学研究科と生命機能研究科の構造生物学*5の研究チームが、連携して開発した世界に誇る最新のクライオ電子顕微鏡(タンパク質などを瞬間的に凍結させることで構造を保ったまま観察できる装置)の技術を用いて、これらの抗体ががん細胞とどのように結合するか、詳細な分子構造を明らかにするとともに、抗体に抗がん剤を結合させた薬剤(抗体薬物複合体: ADC*6)を開発して、抗がん剤を患部に直接送達する治療効果をマウスモデル*7で検証する予定です。
本事業でデータを蓄積し、未だ治療法のないTNBCに対する創薬の問題を高速に解決することをめざします。

3.本事業が社会に与える影響
本事業によりトリプルネガティブ乳がんのみならず数々のアンメットメディカルニーズ(膵がん、胆管がん、肺小細胞がんなど)を克服する創薬のモデルケースを樹立できると期待されます。

4.特記事項
本事業採択発表については、2023年8月9日(水)午後2時(日本時間)大阪府知事よりオンラインにて発表されました。
支援制度名「令和5年度創薬シーズ研究開発費補助金」
事業名「新規がんマーカーを標的とするVHH創薬の高速プラットフォーム戦略(トリプルネガティブ乳がんADC創薬のフィージビリティスタディ)」

代表事業者名:
大阪大学大学院 薬学研究科(創成薬学専攻 生体構造機能分析分野)
https://yakubun.jp/

共同事業者名:
株式会社COGNANO(京都府京都市)
https://www.cognano.co.jp

大阪大学大学院 生命機能研究科 日本電子YOKOGUSHI協働研究所
https://www.fbs.osaka-u.ac.jp/ja/research_group/detail/24

九州大学大学院 薬学研究院(薬剤学・薬物動態学・グリーンファルマ構造解析センター)
https://www.phar.kyushu-u.ac.jp/lab/list.php

用語説明:
*1 バイオマーカー
疾患や健康状態を特徴づける目印のこと。診断や治療の目安となる生体分子(タンパク質、核酸、糖鎖、脂質)を意味しますが、抗がん剤開発においては特に「(ほぼ)がん細胞だけに発現している分子」のことを指します。このマーカー分子を追跡・把握することで、がん細胞の所在がわかるだけでなく、分子を標的とするミサイル療法をも可能にすることができます。バイオマーカーを追跡するために最も有用な物質が抗体です。

*2 トリプルネガティブ乳がん(TNBC)
トリプルネガティブ乳がん(TNBC)は、乳がんの治療標的となる三つの受容体が欠如していることから、そのように名付けられており、治療法が確立されていないがんの一つ。日本では全乳がん患者数の約15%にあたる約13,800人が罹患し、世界には約30万人の患者がいると推定されています。

*3 アンメットメディカルニーズ
創薬を開始するためには薬剤が結合して影響を及ぼす相手分子(バイオマーカー)が出発点になるのですが、未だに多くの疾患でバイオマーカーが発見されておらず、創薬を開始できない最大の理由となっています。患者さんからの要望が大きいにもかかわらず、バイオマーカー未発見のため創薬が行き詰まっている疾患群を、とりまとめてアンメットメディカルニーズと総称しています。

*4 アルパカ由来抗体(VHH)
アルパカなどラクダ科動物が持つ単純な抗体の名称。抗体も一種のタンパク質であり、抗体遺伝子を設計図として生物の体内で変化しながら無尽蔵に産生されます。COGNANO社は莫大な抗体遺伝子情報を解読する世界で初めての技術を開発し、抗体のビッグデータ化に成功しました。これにより、トリプルネガティブ乳がんのバイオマーカー発見に成功しただけではなく、高速に難治がん創薬を可能にするプラットフォームを樹立しました。COGNANOは、デジタル化されたバイオ情報に興味を持つITテックとも共同研究を行なっています。

*5 構造生物学
ビッグデータにより発見された新規バイオマーカーの多くはがん細胞の表面に存在するタンパク質と考えられます。抗体も一種のタンパク質であることから、1.バイオマーカー 2.抗体 3.両者の複合体 の3次元構造(立体構造)を詳細に理解し、抗がん剤の作用機序を明確にすることが最先端の創薬技術として可能になっています。大阪大学 大学院薬学研究科 ・生命機能研究科は、結晶構造解析およびクライオ電子顕微鏡による単粒子解析において世界トップレベルの技術を有しており、強力に創薬支援を実施する体制を組んでいます。

*6  抗体薬物複合体: ADC
がん細胞だけに発現している目印(バイオマーカー)に結合することができる抗体に、細胞を殺傷する抗がん剤を結合し、がん患者に投与することによりがん細胞のみを消滅させることができる、先進的な創薬のこと。

*7 マウスモデル
抗がん剤候補をヒトに投与する前に動物実験で有効性や安全性を確認する必要があります。抗がん剤の場合、まず、がん細胞株をマウスに移植した担がんモデルを作成し、薬物評価を行うことになります。本事業では九州大学大学院薬学研究院が共同研究として参加します。

SDGs目標
[画像2: https://prtimes.jp/i/104790/6/resize/d104790-6-707775271f2a2c757411-1.png ]

[画像3: https://prtimes.jp/i/104790/6/resize/d104790-6-0b88fba9f46647a4a142-2.png ]

[画像4: https://prtimes.jp/i/104790/6/resize/d104790-6-a672fb9d23c8c958a525-3.png ]







参考URL
大阪大学大学院薬学研究科 生体構造機能分析分野
https://yakubun.jp/

大阪大学大学院 生命機能研究科 日本電子YOKOGUSHI協働研究所
https://www.fbs.osaka-u.ac.jp/ja/research_group/detail/24

九州大学大学院 薬学研究院(薬剤学・薬物動体学・グリーンファルマ構造解析センター)
https://www.phar.kyushu-u.ac.jp/lab/list.php

株式会社COGNANO  https://www.cognano.co.jp

本件に関する問い合わせ先
大阪大学大学院薬学研究科 教授 井上豪

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