「YOLO」「小確幸」「マイルドヤンキー」アジアに見られるミレニアル世代の価値観、その先にある“独立”出版・書店ブーム
PR TIMES / 2018年12月4日 12時40分
“Y世代”や“デジタル・ネイティブ”ともいわれ、新しい価値観を有す若い世代。平成“後”を牽引する彼らとは。
東アジアのカルチャーシーンでは、“インディペンデント”ブームがいま同時多発的に起こっている。本屋や出版という切り口から迫った新刊書籍、『本の未来を探す旅 台北』が株式会社朝日出版社より刊行されました。
アジアの中でも経済成長を早くに遂げた国々の間では、近年、さまざまな価値観が広まっています。
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たとえば2017年の韓国では「YOLO(ヨロ)」というライフスタイルが、若い世代を中心にトレンドになっていました。「You Only Live Once.」の頭文字をとったもので、「人生は一度きり、今を楽しく生きよう」という考え方です。
私たちに明日はないけれど、現在はある
カナダのラッパーDrakeが歌詞に綴り、アメリカから世界中の若者に広がった「YOLO」は、競争社会や受験戦争というイメージが強い韓国でも近年取り入れられるようになりました。一時は「YOLO族」という人たちも増え、音楽番組発のアイドルグループ『少年24』の曲名でも「YOLO!」というタイトルの曲が発表されるなど、「未来ではなく、今のために生きよう」という考え方が一般的になっています。
日本と同水準の物価の高さ、都市部の高賃料問題や学歴社会が若者を取りまく台湾でも、数年前から「小確幸」が大流行し、今では日常語として使われています。
会社勤めやマイホームが幸せとは限らない
「小確幸」とは、村上春樹氏がエッセイ内で使い始めた造語で 、「小さいけれど、確かな幸せ」という意。マイホームや高級車など昔ながらの大きな成功ではなく、「日常に溢れている確実な小さな幸せを積み重ねていこう」というライフスタイルは、台湾の若者の価値観にマッチし、本のタイトルや商品のキャッチコピー、店名や看板など、いたる所で「小確幸」という言葉が使用されるほどまでのブームに。
若い世代が次々と本屋を立ち上げたり、出版社をおこす
そういったライフスタイルが若いミレニアル世代(1980-2000年代に生まれた人)を通じて具現化した現象として、ここ最近ソウルや台北などアジアの都市では“独立”ブームが沸き起こっています。
「書店やカフェを開いたり、本や音楽を作ったりと、自分の手で何か表現ができて満足できるのなら、企業でバリバリ働いて稼がなくてもいい。物質的な満足よりも個人の自主性や自己表現を追求していく。これが今の若い世代の傾向だと見ています。だからこんなにもたくさんの人が本屋を始めるんでしょう」ー『新活水』編集長・ティエズー・チャン(本書より)
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朋丁(ポンディン) ――― スーパーミニサイズな美術館
「朋丁 pon ding」は台北の中山エリアにある、アートブック書店。3階部分がギャラリー、2階がワークショップスペースになっていて、さまざまなクリエイターやデザイナー・アーテイストとの展示やイベントを企画。1階にはハイセンスなアートブックや写真集が世界中からセレクトされていて、クリエイティブな若者が集うスポットとなっている。
≪No.6, Ln. 53, Sec. 1, Zhongshan N. Rd., Zhongshan Dist., Taipei City≫
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小日子(シャオズーツ)――― 台湾の現代生活をショップで立体化
台湾の若者の日常や生活に焦点をあてた『小日子』は、雑誌の世界観をまるごと立体化したショップを、台北市内を中心に数店舗展開。店内には、特製ドリンクを提供しているカフェスタンドや多数のオリジナル雑貨も置いている。ショップによって雑誌の存在を知るお客さんも多く、常に人足が途絶えない。
≪No.9, Ln. 8, Pucheng St., Da'an Dist., Taipei City≫
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週刊編集(しゅうかんへんしゅう)――― 「新聞」というメディアを再創生
「若い人にも読んでもらえる新聞を」というコンセプトのもと創刊された『週刊編集』。旧来の新聞とは異なるデザイン性の高い誌面と、読み応えのある特集記事が特徴。デジタルメディアが隆盛する中、あえてじっくり時間をかけて「読書」体験をしてほしいという想いから、「新聞」という形をとっている。2017年に創刊された同誌だが、既に定期購読会員数は1万人を突破。
本屋を開くことは自己表現の手段のひとつ
このように、務めていた会社を辞めたり、または社会に出る最初の一歩としてごく普通に、自分で店や会社を立ち上げる若者が増えています。優秀な学校に進学し、大手企業に勤めること=幸せという構図が成り立たなくなっている現代では、自分の好きなものやライフスタイルを表現する手段として、身の丈にあったお店を開くことのほうが「YOLO」的であり「小確幸」なのです。
「書店」が都市のカルチャー発信地となる
そしてミレニアル世代が立ち上げた、「書店」や「出版社」はギャラリーやカフェやコンセプトストアや、ひいてはメディアとしての役割も兼ねており、複合的で多様性に富んだ新しい形態のお店であることが多いのです。これらのお店はカルチャーの担い手として、独自の流行や文化をその国・都市の若者に発信しています。『本の未来を探す旅 台北』では、台湾の独立書店や独立出版を牽引する、さまざまな新世代に行なった取材インタビューが収録されています。
平成が間もなく終わりを告げようとしていますが、これからの時代を牽引する“ミレニアル世代”の多様な価値観やライフスタイルの端緒を、今我々の知らないアジアのいたるところで起きている”インディペンデント”ブームに見出すことができるのかもしれません。
(※写真は全て本書より。写真=山本佳代子)
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『本の未来を探す旅 台北』
(内沼晋太郎/綾女欣伸=編著 山本佳代子=写真)
定価:2,300円+税
内沼晋太郎(うちぬま・しんたろう)
1980年生まれ。ブック・コーディネーター、クリエイティブ・ディレクター。NUMABOOKS代表、下北沢「本屋B&B」共同経営者。著書に『これからの本屋読本』(NHK出版)、『本の逆襲』(朝日出版社)など。
綾女欣伸(あやめ・よしのぶ)
1977年生まれ。朝日出版社で編集職。共編著に『本の未来を探す旅 ソウル』、編集に内沼晋太郎『本の逆襲』ほか〈アイデアインク〉、武田砂鉄『紋切型社会』、九螺ささら『神様の住所』など。
山本佳代子(やまもと・かよこ)
フォトグラファー。参加写真集に『Tokyo Halloween』。主な仕事はミュージシャンのCDジャケットやプロフィール写真など。http://www.kayokoyamamoto.com/
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