有機エレクトロニクスデバイスの高機能化に貢献する新たな技術を開発
PR TIMES / 2020年8月31日 16時45分
株式会社日本触媒(本社:大阪市中央区、社長:五嶋祐治朗、以下「日本触媒」)は、NHKと共同で有機ELの低消費電力化と長寿命化に寄与し、様々な有機エレクトロニクスデバイスの高性能化にも用いることのできる新しい電子注入※1技術を開発しました。
これまで、有機ELをはじめとする有機エレクトロニクスデバイスでは、電極金属と有機材料の間での電子のやり取りをスムーズに行うことを目的としてアルカリ金属などの材料が用いられてきましたが、これらは有機材料との反応性が高いことからデバイスの劣化の要因とされています。またアルカリ金属は空気中の酸素や水分に弱く厳重な封止を必要とするため有機薄膜デバイスのフレキシブル化に対する課題でした。
これらの課題に対し、日本触媒とNHKは、電極金属と有機材料との間に大きな分極※2を生じさせる配位結合※3を用いた電子注入技術により、アルカリ金属のような反応性の高い材料を用いることなく有機ELの低消費電力化と長寿命化を実現できることを見出しました。この配位結合による新たな分極型電子注入技術は、有機ELの低消費電力化や長寿命化へ資することはもちろん、電子の取り出し技術へも応用することで、有機太陽電池のエネルギー変換効率の向上や有機センサーデバイスなどの高感度化などへも寄与できると考えられ、フレキシブルデバイスの早期実現への貢献が期待されます。また、当社が開発中のiOLED(R)フィルム光源に対しても、既存製造設備への適用が可能となり製造プロセスの簡略化による大幅なコスト削減が期待できます。
本技術に用いた材料は塩基性の有機化合物で、種々の金属元素への配位によって安定な錯体を形成し、その配位力の強さに応じて金属原子との間で電荷の偏り(分極)が発生します。我々はこの有機化合物について数種類の誘導体を設計・比較することで、配位力の強さと電子注入性の間に相関があることを見出し、有機化合物と金属を含む陰極との界面で生じる分極が電子注入を促進していることを明らかにしました。
今回の研究成果は、7月24日にNature Communications誌に掲載されました。(11号, Article No.3700)
※1:電極から有機材料に電子を供給すること
※2:プラスに帯電した部分とマイナスに帯電した部分が生じた状態
※3:有機化合物の持つ電子を金属に供与することで形成される結合
[画像: https://prtimes.jp/i/54162/11/resize/d54162-11-314364-0.jpg ]
以上
日本触媒について:
1941年の創業以来、自社開発の触媒技術を核に事業を拡大。酸化エチレンやアクリル酸、自動車用・工業用触媒などを世の中に送り出し、現在では紙おむつに使われる高吸水性樹脂で世界1位のシェアを誇っています。日本触媒は「テクノロジー(技術)」を通じて「アメニティ(豊かさ)」を提供する、という企業理念「TechnoAmenity」のもと、グローバルに活動する化学会社です。
https://www.shokubai.co.jp
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