日本再生医療学会、エクソソーム等の調製・治療に対する考え方を国際誌で発表
PR TIMES / 2022年5月13日 23時40分
細胞(幹細胞)から産生される100~200nm前後と非常に小さい細胞外小胞(International Society for Extracellular Vesicles [ISEV], 国際細胞外小胞学会はextracellular vesicleと命名)、日本ではその中の一部をエクソソームとして呼ばれることが多くあります。この小胞は膜に覆われ、内部に治療効果を及ぼすタンパク質や核酸などを含み細胞間に情報を伝達します)が新たな治療ツールとして注目を集め、基礎研究のみならず、欧米では臨床試験に移行する動きが加速しています。
日本再生医療学会では、再生医療を、法整備も含め安全で有効に患者さんに届けることを理念として研究開発を推進してきましたが、新たに近年急速に発展してきている細胞(幹細胞)から分泌される細胞外小胞を利用した治療開発の現状を踏まえ、2つの立場を表明してきました。それは 1)自由診療下での治療に対する懸念 と 2)科学的な根拠に基づく治療に対する積極的な推進という立場です。
現在、細胞外小胞を利用した治療は、研究開発段階であり広く一般的に理解が深まっているとはいえず、安全性・有効性確保の上でのリスク、法規の整備状況、世界の研究開発動向などの周知・理解も不十分な現状があります。細胞外小胞を用いた臨床研究や自由診療は、再生医療等安全性確保法の対象とはならないため、医師法と医療法以外の実質的な法規制がなく、安全性・有効性についての科学的根拠が客観的に十分評価されない状態で治療が実施される懸念があります。このような懸念がある一方、世界では細胞外小胞を用いた治療開発が進んでおり、原材料となる細胞の安定確保・大量培養技術および細胞外小胞の大量抽出技術の開発、安全性・有効性確保の上でのリスクの明確化、さらに法規の整備が進めば、新たな治療法開発につながる可能性があります。
日本再生医療学会として、この発展性のある分野が、安全性高く推進され国民に届くことを希望しています。この度、日本再生医療学会では、新たに公式英文誌Regenerative Therapy誌に、細胞外小胞を用いた治療法についての基本的な考え方について“Basic points to consider regarding the preparation of extracellular vesicles and their clinical applications in Japan ”について発表しました。引き続き日本再生医療学会はこの分野の発展に寄与してまいります。
日本再生医療学会
日本再生医療学会 エクソソーム調整・治療に対する考え方ワーキンググループ
委員長 紀ノ岡正博(大阪大学)
委員 落谷孝広(東京医科大学)
委員 寺井崇二(新潟大学)
委員 佐藤陽治(国立医薬品食品衛生研究所)
委員 中村憲正(大阪大学)
委員 斎藤充弘(大阪大学)
委員 本間康弘(順天堂大学)
委員 堀口一樹(大阪大学)
委員 土屋淳紀(新潟大学)
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