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幹細胞移植と同じ効果を持つ成分を不死化した幹細胞由来成分から発見

PR TIMES / 2024年7月11日 11時15分

次世代医療を支える新たな治療原薬として大きな期待



ポイント
- 乳歯歯髄由来幹細胞の培養上清液には、細胞活性を向上させる成分が存在
- 幹細胞の培養上清成分のサイトカイン類は、遊走能を高め、創傷治癒活性を保有
- 幹細胞の培養上清成分には、抗酸化活性を高める効果がある。
- 未来の医療に革新をもたらす可能性を持つ医薬用組成物として注目。

[画像1: https://prcdn.freetls.fastly.net/release_image/83597/11/83597-11-29433077510b03f7aea2fd300cfb1da7-1396x693.jpg?width=536&quality=85%2C75&format=jpeg&auto=webp&fit=bounds&bg-color=fff ]
乳歯から培養上清成分の抽出までの精製工程の図

概 要
株式会社U-Factor(以下、当社)は、国立研究開発法人 産業技術総合研究所(以下、産総研)細胞分子工学研究部門 寺村裕治上級主任研究員と共同で、不死化したヒト乳歯由来幹細胞(SHED)から産生される培養上清液の精製成分が細胞活性や細胞の遊走能を向上させ、また、抗酸化活性を保持することを発見しました。この結果は幹細胞移植の効果を保有していることから、この技術が幹細胞移植の代替手段として利用できるものと期待でき、より安全かつ効率的な治療法を提供します。

なお、この技術の詳細は、2024年7月3日に「Scientific Reports」に掲載されました。
開発の社会的背景
近年、再生医療分野では幹細胞を用いた治療法が注目を集めていますが、幹細胞移植には免疫拒絶反応や腫瘍形成のリスクが伴い、安全性と効果の両立が課題となっています。このような背景から、幹細胞から生成される培養上清液を用いた新しい治療法が求められています。幹細胞由来の培養上清液は、複数のサイトカインを含み、細胞の再生や修復を促進する効果が期待されています。しかし、その安全性、品質、有効性については未解明の部分が多く、特に初代培養細胞を使用する場合には、細胞増殖の限界や培養上清液の生成量、不純物の混入などの問題が存在します。これらの課題を克服し、安全で効果的な培養上清液の開発が急務となっています。

研究の経緯
当社取締役で名古屋大学大学院医学系研究科名誉教授の上田実が長年にわたり、幹細胞から産生されるサイトカインを含む培養上清液の研究を行ってきました(K Matsubara, M Ueda, et al. J. Neurosci 2015)。この研究により、培養上清液が脊髄損傷や急性臓器損傷などに対して効果があることが確認されています。しかし、初代培養細胞を用いた場合、細胞の増殖限界や培養上清液の生成量に制限がありました。この問題を解決するため、我々は不死化した乳歯由来歯髄幹細胞を用いて、より安定した供給と高品質な培養上清液の生成を目指しました。

研究の内容
本研究では、不死化した乳歯由来歯髄幹細胞の培養上清液の原液(以下、上清液原液)とその抽出した成分(以下、抽出成分)の効果を、様々な細胞を用いて評価試験を行いました。上清液原液とその抽出成分を、細胞内脱水素酵素活性、遊走活性、抗酸化ストレス活性の観点から比較し、抽出成分が、初代培養細胞の培養上清と同等あるいは高活性の結果を得ることが出来ました。


1.脱水酵素活性実験
この実験では、培養上清液をマウス由来の線維芽細胞(NIH3T3細胞)に添加し培養上清液の効果を評価しました。上清液原液や抽出成分をさまざまな濃度で添加し、細胞の活性度合いを測定しました。左のグラフが初代培養細胞の結果で、抽出成分(赤線)のグラフが上昇しており、細胞活性度合いが上清液原液(黒線)や他の抽出成分(青・黄色線)より活性が高いことが解ります。右が上清液原液の結果で、初代培養細胞のグラフと同様の結果であることが解りました。
[画像2: https://prcdn.freetls.fastly.net/release_image/83597/11/83597-11-f62288097dbcf30ba031d180fa91bb29-912x565.jpg?width=536&quality=85%2C75&format=jpeg&auto=webp&fit=bounds&bg-color=fff ]
脱水酵素活性実験の結果

2.スクラッチアッセイ実験
細胞の移動能力(遊走能)を評価するための実験です。培養細胞の層に傷(スクラッチ)を作り、上清液原液や抽出成分を添加し、細胞がどの程度傷を埋めるかを観察します。細胞が傷を埋める速度や面積を「Cell recovery area(%)」として評価しました。この実験により、各種上清液が細胞の移動や修復をどれだけ促進するかを測定します。右記グラフで、抽出成分の細胞遊走能が、上清液原液(CM)と比較しても抽出成分1が同等であることが解りました。
[画像3: https://prcdn.freetls.fastly.net/release_image/83597/11/83597-11-d3ae40b97d80bda1b6b16564b72df44e-670x656.jpg?width=536&quality=85%2C75&format=jpeg&auto=webp&fit=bounds&bg-color=fff ]
スクラッチアッセイ実験の結果

3.酸化ストレス実験
細胞が酸化ストレスに対しての耐性を確認するために、過酸化水素処理による細胞障害を評価する実験です。右記グラフより、上清液原液や抽出成分1では、過酸化水素処理に伴う細胞障害を抑制できることが分かりました。他の抽出成分では、細胞障害に対する抑制効果は確認できませんでした。この結果から、上清液原液や抽出成分が酸化ストレスによる細胞障害を抑制したことが確認できました。
[画像4: https://prcdn.freetls.fastly.net/release_image/83597/11/83597-11-7f55983b1bd8c2c3154cba8031228c33-764x457.jpg?width=536&quality=85%2C75&format=jpeg&auto=webp&fit=bounds&bg-color=fff ]
酸化ストレス実験の結果


さらに、抽出成分では、上清液原液に比べて、アンモニアや乳酸などの不純物を除去できました。同時に、抽出成分には有効成分と考えられるサイトカイン類(VEGF、HGF、bFGFなど)が豊富に含まれていることから、不純物を取り除いた状態で有効成分が十分に機能する高品質な上清液の精製が実現しました。これにより、治療の安全性と効果が大幅に向上することが期待されます。

今後の予定
今後は、抽出成分を用いた具体的な治療法の開発を一層進めていきます。さらなる再生医療分野での革新を追求し、患者さんの生活の質を向上させる新たな治療オプションを提供することを目指します。今後の研究と臨床試験を通じて、安全性と有効性の確認を行い、実用化に向けたステップを踏んでいきます。最終的には、当社の技術が多くの患者さんに恩恵をもたらすことを目指し、医療現場への早期導入を図ります。
論文情報
雑誌名:Scientific Reports
論文公開日:2024年7月3日
論文タイトル:Activation of cellular antioxidative stress and migration activities by purified components from immortalized stem cells from human exfoliated deciduous teeth
著者:Yujing Shu, Masato Otake, Yasuhiro Seta, Keigo Hori, Akiko Kuramochi, Yoshio Ohba, Yuji Teramura
DOI:10.1038/s41598-024-66213-8

- 用語解説

ヒト乳歯由来幹細胞(SHED)
乳歯から抽出される幹細胞です。これらの細胞は、高い増殖能力と分化能力を持ち、再生医療や組織修復の研究で注目されています。SHEDは、神経や骨、筋肉など多様な細胞に分化できるため、将来的にさまざまな治療法に応用できる可能性があります。

不死化
細胞が自然に老化や死を迎えることなく、無限に増殖できるようにする技術を指します。通常の細胞は、一定の回数分裂した後に老化して機能を失い、最終的に死にます。しかし、不死化技術を用いることで、細胞はこのような老化プロセスを避け、継続的に分裂と増殖を続けることが可能になります。この技術は、研究や医療の分野で非常に有用であり、特に再生医療やがん研究などで広く利用されています。

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