“世界初”ルチル型二酸化ゲルマニウム薄膜にてN型導電性を確認
PR TIMES / 2024年9月30日 23時40分
―半導体デバイス開発へ大きく前進!ー
Patentix株式会社はこの度、ドーパント不純物を添加することによりルチル型二酸化ゲルマニウム(r-GeO2)薄膜のN型伝導性を世界で初めて確認しました。この成果により、本格的な半導体デバイスの開発を開始することが可能となり、パワー半導体への実用化に大きく前進しました。
【背景】
普段使用している様々な家電製品や機械設備、EVなどの電源はパワー半導体で変換した電力を用いて動いています。この電力変換の時に電気エネルギーが熱として損失となることが脱炭素社会の実現の障壁となっています。これを解決するためにはパワー半導体の材料であるシリコン(Si)から、炭化ケイ素(SiC)などのワイドバンドギャップ材料への置き換えが必要です。r-GeO2は、バンドギャップが4.6eVとSiの1.1eVやSiCの3.3eVと比べ非常に大きな値を持つため非常に低損失なパワー半導体の作製が可能です。近年実用化が進んでいるSiCはSiよりも約40%の省エネ効果があるとされていますが、r-GeO2はさらにその90%程度の省エネ効果があると理論的に示されています。
このように、非常に魅力的な物性を持つr-GeO2ですが、これまでは高品質な単結晶膜を作製することが難しいため、あまり研究対象として注目されていませんでした。また、半導体に不可欠なドーピング不純物による導電性の制御手法が確立されておらず、本格的な半導体デバイスの開発が進んでいませんでした(不純物の少ない半導体は、伝導性が極めて低いですが、ドーパントと呼ばれる不純物を微量に添加することで飛躍的に伝導性が上がります。半導体デバイスではドーパントの添加量により導電性の制御をしています)。
【成果】
弊社はPhantom SVDという高品質な薄膜作製技術を独自に開発し、これまで困難であった高品質なr-GeO2薄膜の作製に成功しています。この度、さらに改良を加えることで均質性の高い薄膜結晶を作製することが出来ました(図1)。
[画像1: https://prcdn.freetls.fastly.net/release_image/128234/11/128234-11-df3862d885836b9aeb03e05fa5abdb6b-320x319.jpg?width=536&quality=85%2C75&format=jpeg&auto=webp&fit=bounds&bg-color=fff ]
図1:TiO2基板上に作製した均質なr-GeO2薄膜の写真
今回の成果はこの均質性の高い膜にドーパントの添加量を3水準変えた試料を作製しホール効果測定により導電性の確認を行いました。その結果を表1に示します。ホール効果測定により、すべての試料でN型の導電性を確認しました。r-GeO2薄膜にてN型の導電性を確認したことは世界初の成果となります。また、キャリア濃度についてもドーパントの添加量を制御することでキャリア濃度10の18乗~10の20乗 /cm3台の範囲で制御出来ております。本成果は、半導体デバイス作製には必須の技術であり、材料開発から実用化に向けたデバイス開発へ大きく舵を切っていくことが出来ます。本測定の正確性については、ホール起電力の値が強く表れ、F値が1と測定誤差が小さく対称性の良い値が得られているため信頼性の高い結果が得られたことを示しています。
[画像2: https://prcdn.freetls.fastly.net/release_image/128234/11/128234-11-d46ac1645fddff21b734f8c1b4b5d9a0-3543x1081.png?width=536&quality=85%2C75&format=jpeg&auto=webp&fit=bounds&bg-color=fff ]
ホール効果測定における測定結果
*ホール起電力とは、ホール効果を利用した測定で生じる電圧です。
*F値とは、主にホール効果の測定精度に影響を与える補正係数の一種です。測定誤差を減らし、実際の材料特性を正確に反映するために必要な係数です。F値が1に近い値を示す場合、理想的な試料の状態を意味します。
【将来展望】
今回の成果により、弊社ではr-GeO2の半導体デバイス開発を本格的に進めていきます。当初は、構造の簡便なショットキーバリアダイオードの試作を進め、r-GeO2の省エネ性能などの基本的な特性評価を行います。また、HEMT(High Electron Mobility Transistor)やFET(Field Effect Transistor)等の各種トランジスタの開発も進めていきます。
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