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顧みられない熱帯病:何百万の命を救うため政治的意志と研究開発に進展を

PR TIMES / 2012年6月11日 13時50分



プレスリリース
2012年6月11日

国境なき医師団(MSF)は本日、報告書「顧みられない熱帯病:沈黙との闘い」を発表し、顧みられない熱帯病に向けた取り組みの前進には、既存の患者の診断と治療を拡大するとともに、より簡便で効果の高い治療法の研究開発を後押しする必要があると訴える。

MSFは25年間にわたりシャーガス病(アメリカ・トリパノソーマ症)、アフリカ睡眠病(アフリカ・トリパノソーマ症)、カラアザール(内臓リーシュマニア症)の診断と治療に開発途上国で取り組んでいる。

カラアザールやアフリカ睡眠病は、治療しなければ、命に関わる病気であり、シャーガス病も含め、「顧みられない熱帯病」と呼ばれるこれらの病気には、毎年数百万人が感染し、数十万人が命を落としている。これらの病気の診断と治療は可能である一方、国際的には数十年間進展がない状態が続いている。

MSFインターナショナル会長のウンニ・カルナカラ医師は語る。
「顧みられない熱帯病はやっかいな病気ですが、十分に治療が可能です。この病気に向けた取り組みが進まない現状も改善出来ますし、何百万人の命も救えるはずです。ただ、そのためには強い政治的意志が必要です。」

第一に、既存の治療プログラムを支援することで、診断・治療法の大幅な進展が可能になる。例えば、シャーガス病の治療薬「ベンズニダゾール」の新たな生産者が登場したことで、南米でのシャーガス病の治療拡大が期待される。また、ブラジルでは昨年、ベンズニダゾールの小児用製剤が薬品登録され、治療を受けられる子どもの数が増えていく見込みである。南アジアでは、アムホテリシンBのリポソーム製剤を用いたカラアザールのより実行可能な治療法の導入が求められるが、価格の抑制と普及の拡大が課題である。

また、新たな診断ツールとより安全な治療法の開発を促進することで、患者の多くが住む孤立した地域の医療ニーズにより的確に対応し、治療の提供を簡便化できるようになる。現在、利用可能な診断方法や薬剤の大半は時代遅れで、特別な訓練を受けたスタッフと手間のかかる輸送手段が欠かせないため、普及が難しい。東アフリカでは、カラアザールの治療は現在も1930年代に開発された毒性の高い薬剤に頼る部分が多く、痛みを伴う注射が複数回必要となる。症状が進行したアフリカ睡眠病の新しい治療法が25年振りに2009年に登場したが、それでもなお病院での14回にわたる静脈注射が必要である。

MSFの顧みられない病気対策顧問、ジェンマ・オーティスは次のように述べている。
「政策決定者たちは、患者を適切に治療するための効果的な方法がないと言い張り、顧みられない病気に目を向けません。製薬業界は、これらの病気がもっぱら、世界でも最も貧しく、利潤の見込める市場を形成できない人びとが患者であるため、新規研究開発に投資をしません。」

一方で、顧みられない熱帯病に向けた国際社会における注目の高まりは明るい材料である。2012年1月、ロンドンで世界保健機関(WHO)が、米英をはじめとする支援国の後押しを受け、一部の顧みられない熱帯病の制御と駆逐を促進するロードマップを発表した。しかし、具体的な成果はまだ出ていない。また、WHO内では、このところ、米国や欧州が、貧しい国の患者のニーズを最優先事項とする、世界規模の新たな研究開発の枠組み形成案に否定的な姿勢を見せている。

MSFの必須医薬品キャンペーン責任者、ジュディット・ライアスは次のように結ぶ。
「より効果的な診断法や治療薬の開発には、研究開発のあり方を見直し、開発途上国における公衆衛生のニーズに確実に結びつけていかなければなりません。人命を脅かすこれらの病気を駆逐するために必要なことは行動であり、リップサービスではないのです」


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