世界初!SPANと樹脂箔を用いた軽量リチウム-硫黄二次電池の試作・実証に成功
PR TIMES / 2024年11月21日 17時40分
~ADEKAのSPANで“軽量化・安全性・実用性”を兼ね備えた二次電池の実用化を加速~
[画像1: https://prcdn.freetls.fastly.net/release_image/72203/25/72203-25-014586ef5823bea2eb5e95ca26b49455-3500x2625.jpg?width=536&quality=85%2C75&format=jpeg&auto=webp&fit=bounds&bg-color=fff ]
今回試作した「軽量Li-SPAN/樹脂箔パウチセル」
株式会社ADEKA(代表取締役社長兼社長執行役員: 城詰秀尊、本社:東京都荒川区)は、うるたま株式会社とともに、世界で初めて(※1)当社で開発中の次世代二次電池向け正極材「SPAN」と樹脂箔から構成される正極を用いた軽量二次電池「軽量Li-SPAN/樹脂箔パウチセル」(※2)の試作に成功しました。さらに、試作品の充放電および安全性(釘刺し)試験において、重量エネルギー密度500Wh/kg以上と未発火を達成し、樹脂箔を用いたなかで世界最軽量(※1)かつ発火安全性に優れる二次電池の実証にも成功しました。
本成果は、2024年11月20日~22日開催の「第65回電池討論会」にて発表を予定しております。
現在、クルマや飛行体、モバイル機器などに搭載されるリチウムイオン二次電池(以降、LIB)は、その重量や寿命、安全性が課題となっており、次世代二次電池の研究開発が進められています。
なかでも、リチウム-硫黄二次電池は、正極にレアメタルを使用せず、世の中にありふれた硫黄を使用することから、サステナブルで軽い電池として、その研究開発の動向が注視されています。
今回試作した「軽量Li-SPAN/樹脂箔パウチセル」は、重量エネルギー密度は最大で552Wh/kgに達し、現行LIBの値(※3)を大きく上回りました。さらに、満充電状態の試作セル(500Wh/kg級)に鉄釘を刺しても発煙・発火が起こらないことを実証しました。実証は、ソフトバンク株式会社、KISCO株式会社、国立研究開発法人産業技術総合研究所の協力を得て実施したものです。
本成果は、リチウム-硫黄二次電池の“軽い”という強みはそのままに、更なる“軽量化”と“安全性”、そして“実用性(プロセス性)”を兼ね備えた画期的な次世代二次電池の実用化に進展をもたらすものと考えており、ドローンやHAPS(成層圏通信プラットフォーム)、eVTOL(電動垂直離着陸機)等の飛行体分野への適用が期待されます。
ADEKAでは現在、次世代二次電池向け正極活物質「SPAN」(アデカアメランサ SAMシリーズ)の量産化を当社相馬工場(福島県相馬市)で進めており、世界に先駆けて、年間100kg以上の合成に成功しています。2026年度には年間数トンレベルへのスケールアップを目標としています。今後も、SPANの製造とこれを用いた様々なセルの試作・実証・ご提案を通じて、リチウム-硫黄二次電池の実用化に貢献するとともに、電池材料分野の早期事業化を目指してまいります。
◆試作セルについて
今回試作した軽量Li-SPAN/樹脂箔パウチセル「LiLiSPRing-model ADETAMA」(電池容量:9Ah)は、当社の次世代二次電池向けメタルフリー硫黄系ポリマー材料「SPAN;アデカアメランサ SAMシリーズ」を正極活物質に使用しました。また、SPAN正極の集電体には、現行のアルミニウム箔の代替として、KISCO株式会社とソフトバンク株式会社が共同で開発している樹脂箔(※4)を使用しました。SPANと樹脂箔を組み合わせた電池設計は世界初(※1)となります。
セルの構成は当社が着想し、セルの設計は当社とうるたま株式会社が共同で行いました。また、実用プロセスを志向した樹脂箔へのタブ溶接はKISCO株式会社とソフトバンク株式会社に、セル作製はうるたま株式会社に協力をいただきました。
[画像2: https://prcdn.freetls.fastly.net/release_image/72203/25/72203-25-72cafdef712b73b848ebbe759166fd05-1650x1650.jpg?width=536&quality=85%2C75&format=jpeg&auto=webp&fit=bounds&bg-color=fff ]
試作した9Ah級パウチセルの外観(名刺サイズ)
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典型的なリチウム-硫黄(Li-S)二次電池と今回開発した新型Li-SPAN二次電池の構造模式図 (電解液は省略)
◆試作セルの充放電試験について
試作セルは、次世代電池の開発促進を支援しているソフトバンク株式会社の次世代電池Lab.(※5)で充放電試験を行いました。タブと外装体を含んだ試作セルの重量は25.2gであり、25℃, 0.05Cの条件で放電した時の容量(9.27Ah)と電圧(1.50V)から、セルの軽量性の指標である重量エネルギー密度は552Wh/kgと算出しました(充放電の繰り返し特性は、今後検証予定)。
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使用したSPANの外観と部分推定構造(充放電前)
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試作した9 Ah級パウチセルの充放電特性
◆今後の展開
本成果は、「第65回電池討論会」で当社が発表いたします(その他、全固体Li-S電池に関する発表も行う予定です。詳細は11月20日付当社WebサイトWhat’s Newをご参照ください)。
ADEKAはSPANの量産化検討を進めるとともに、引き続き、うるたま株式会社、ソフトバンク株式会社、KISCO株式会社、国立研究開発法人産業技術総合研究所など、産官学との連携を深め、次世代二次電池に関する技術開発と市場開拓にも邁進いたします。そして、リチウム-硫黄二次電池の早期実用化に挑戦するとともに、持続可能な社会に貢献してまいります。
※1 当社調べ。
※2 当社命名:LiLiSPRing-model ADETAMA(Lightweight Li-SPAN/Resin Film Battery-ADEKA & URUTAMA)。
※3 重量エネルギー密度が大きいほど軽い電池であり、現行LIBの重量エネルギー密度は150-350Wh/kg(当社調べ)。
開発されているリチウム-硫黄二次電池のなかでも552Wh/kgは世界トップクラス。
※4 樹脂フィルムの両面に薄いAl層を形成した集電体。
参考(ソフトバンク株式会社):https://www.softbank.jp/corp/technology/research/story-event/029/
※5 参考(ソフトバンク株式会社):https://www.softbank.jp/corp/news/press/sbkk/2021/20210315_02/
補足:ADEKAの「SPAN」について
当社は国立研究開発法人産業技術総合研究所および株式会社豊田自動織機が開発した製造方法をもとに、SPANの量産化検討を進めております。また、素材メーカーながらSPANを用いたリチウム-硫黄二次電池の試作と実証にも取り組み、SPANの素材がもつポテンシャルを広く訴求しています。
【これまで実証した一例】
軽量性と寿命の両立(500 Wh/kg-cell &>200サイクル)、Li-SPANパウチセルの新規設計(論文投稿中:https://www.researchsquare.com/article/rs-3215804/v1)、世界最高の重量エネルギー密度800Wh/kg(特殊プロセス)、ドローンの長時間飛行(現行LIBの1.8倍)、100℃で作動する軽量全固体電池(350Wh/kg)、など。
参考リンク
- 「第65回電池討論会」にて、ADEKAの次世代二次電池材料SPANを用いた研究成果を発表(当社Webサイト2024年11月20日付 What's New)
- ADEKAの二次電池材料(当社Webサイト 開発品紹介ページ)
- 「SPAN」開発担当者のインタビューがYouTube番組「理系の歩き方」に掲載されました(当社Webサイト2024年2月26日付 What's New)
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