勇払原野(ゆうふつげんや)での風力発電計画、タンチョウやチュウヒなど希少鳥類への影響を懸念
PR TIMES / 2020年9月29日 19時45分
日本野鳥の会、日本自然保護協会、世界自然保護基金ジャパンと連名で、大阪ガス(株)に中止の要望書を提出
■勇払原野の風力発電計画 日本野鳥の会は反対
(公財)日本野鳥の会(事務局:東京。以下、当会)は、2020年7月以来、希少鳥類の重要な生息地である勇払原野の東部(苫小牧市字弁天~むかわ町字鹿沼)での、「Daigasガスアンドパワーソリューション株式会社」(本社:大阪)が計画する「(仮称)苫東厚真風力発電事業」に対し、事業の中止を求めています。
この度、全国規模で活動する自然保護団体である、日本自然保護協会、世界自然保護基金ジャパンと3団体連名で、事業主体の親会社である大阪ガス株式会社に対し、事業の見直し(中止)を求める要望書を提出しました。
6月に縦覧された計画段階環境配慮書に示された事業実施想定区域(以下、計画地)周辺では、国内希少種や天然記念物に指定されているタンチョウやオジロワシ、チュウヒやマガンなどの生息が明らかになっており、当会は、これら希少鳥類の保護の観点から、計画に反対するものです。
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■計画地は希少鳥類の宝庫
4,000kw級の風車を最大10基建設するこの事業は、1960年代から進められた苫小牧東部開発地域内に計画地があり、面積は564.7ha(うち風車設置対象面積は332.1ha)と、他の一般的な風力発電計画と比べて特に規模が大きいという訳ではありません。しかし、開発地域指定後に放置されたことで生まれた湿地や草原に、今ではマガン、タンチョウ、オジロワシ、オオワシ、チュウヒ、ハヤブサ、オオジシギ、アカモズなど絶滅危惧種等に指定される鳥類が多く生息し、計画地にある湿地や草原は、さながら希少種の「ゆりかご」のようになっています。
計画地に生息する希少鳥類には、風車建設によるバードストライクや生息地放棄などの影響を受けやすい種が多く、この計画が希少鳥類に大きな影響を及ぼすことは確実です。特に国内希少種に指定されるチュウヒは、国内推定数90つがいのうち7つがいが計画地内で繁殖しており、風車建設で全つがいが生息地放棄等を起こした場合、国内繁殖数の約8%が消失することになります。
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■事業者に計画中止を要請、道や環境省へは事業者が計画を見直すよう指導することを要望
当会は、風車建設が上記の希少鳥類の生息に影響を及ぼすことは回避不可能と判断し、希少鳥類保護の観点から、令和2年6月30日付で事業者に対し「(仮称)苫東厚真風力発電事業に対する要請書」を提出し、事業計画の中止を要請しました。
また、令和2年7月9日付で北海道知事宛および環境大臣宛に「(仮称)苫東厚真風力発電事業に係る計画段階環境配慮書に対する北海道知事(環境大臣)意見に関する要望書」を提出し、計画段階環境配慮書に対して事業の見直しを含む厳しい意見を事業者に提出、行政指導をするよう要望しました。
■添付資料
(仮称)苫東厚真風力発電事業に対する要望書
下記よりダウンロード:
https://prtimes.jp/a/?f=d39807-20200925-2109.pdf
■日本野鳥の会 組織概要
組織名 :公益財団法人 日本野鳥の会(会員・サポーター 約5万人)
代表者 :理事長 遠藤孝一
所在地 :〒141-0031 東京都品川区西五反田3-9-23 丸和ビル
URL : https://www.wbsj.org/
■これまでに勇払原野の計画地周辺で確認されている希少鳥類
[画像6: https://prtimes.jp/i/39807/29/resize/d39807-29-902716-5.jpg ]
■勇払(ゆうふつ)原野について
[画像7: https://prtimes.jp/i/39807/29/resize/d39807-29-650254-6.jpg ]
勇払原野とは?
道央圏にある石狩低地帯の一角で、苫小牧から太平洋に至る一帯を「勇払原野」と呼んでいます。 勇払原野はかつて釧路湿原、サロベツ原野とともに北海道の三大原野と言われていました。 約3万6千haの原野を構成する湿原の面積は、過去50年間で著しく減少しているものの、 残された自然環境は、ラムサール条約湿地であるウトナイ湖を含み、水鳥や草原性鳥類、 絶滅のおそれのある鳥類の生息地として重要な役割を果たしています。
[画像8: https://prtimes.jp/i/39807/29/resize/d39807-29-274409-7.jpg ]
勇払原野の歴史と現状
勇払原野は台地、砂丘、湿原、湖沼と複雑な環境を持ち、先住のアイヌ民族が暮らしていた時代から、川を利用した太平洋側と日本海側を結ぶ交通の要衝として、またサケやシカ等の資源に恵まれた土地として、自然と共存した文化がありました。勇払原野の開拓は江戸時代後期からで、農業開拓は湿地と霧、火山灰土に阻まれ、あまり進展しませんでした。
その後1960年代からの高度成長期に、空港に近く、海にも面した広大な平地として目をつけられ、 第三次全国総合開発計画の一環として、国内有数規模の重化学工業地帯をめざした「苫小牧東部開発計画」がスタートしました。しかしその後オイルショック等の社会情勢の変化により、当初計画の1万700haの 土地の多くが未利用地域として残され、また農地として開拓された場所が放置されて原野化し、結果として鳥類の良好な生息地となっています。
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