ゲノム解析から『シミのできやすさ』や『肌あれのしやすさ』など肌質の個人差に影響する新たな遺伝子領域を発見
PR TIMES / 2021年7月27日 15時15分
日本メナード化粧品株式会社(愛知県名古屋市中区丸の内3-18-15、代表取締役社長:野々川純一)は、約1200人の日本人女性のゲノム(遺伝情報)データおよび肌質に関するアンケートデータから『シミのできやすさ』や『肌あれのしやすさ』など肌質の個人差に影響を与える複数の遺伝子領域を新たに発見しました。
[画像1: https://prtimes.jp/i/48666/29/resize/d48666-29-c920e0def54eb31edb83-0.png ]
一般的に肌質には個人差があることが知られています。例えば、同年代でもシミのできやすい人とできにくい人がいる、肌あれしやすい人としにくい人がいるなど、人によって様々です。最近のゲノム(遺伝情報)解析技術の進歩により、個人の肌質には紫外線などの『環境要因』だけでなく、その人が生まれつき持っている『遺伝的要因』が関与していることが分かってきました。
今回メナードは、約1200名の日本人女性のゲノムデータを解析するとともに肌質に関するアンケートを実施し、両者の関連解析を行った結果、『シミのできやすさ』に『rs1001949』と呼ばれる遺伝子領域が影響していることを発見しました。さらに、『肌あれのしやすさ』、『顔の紅潮のしやすさ』など様々な個人の肌質に影響を与える遺伝子領域も発見しました。今回の結果は、個人の肌質の特徴を精度よく予測する技術の開発や、それぞれの肌質にあった化粧品・美容方法の提案などに応用できると期待されます。
本研究成果は、国際科学雑誌「Experimental Dermatology」オンライン版に掲載されました。
<参考資料>
1.ゲノム(遺伝情報)データについて
ゲノムデータは、研究への協力を承諾した日本人女性約1200名のSNP※1を解析することで得られました。解析したSNPの数は、遺伝子型インピュテーション※2の技術を用いることにより約630万箇所(一人の被験者あたり)に及びました。
※1 SNP
DNAは、アデニン(A)、チミン(T)、シトシン(C)、グアニン(G)という4種類の塩基が並んでできています。この塩基の特定の並び方が遺伝情報となります。ヒトの遺伝情報は約30億個のDNAの塩基配列で構成されており、この塩基配列には個人間で差があります。特に一つの塩基配列だけが人によって異なっている領域をSNP(Single Nucleotide Polymorphism、一塩基多型)と呼びます(図1)。ヒトのゲノム中には約1000万箇所のSNPがあると推定されており、その塩基配列の違いが体質や病気のかかりやすさなどの個人差の要因であると考えられています。SNPには、一つひとつにrs番号という世界共通のIDが割り振られています(例:rs1001949)。
[画像2: https://prtimes.jp/i/48666/29/resize/d48666-29-3b06aa7309e9e6f5f010-1.png ]
※2 遺伝子型インピュテーション
ヒトゲノムに存在するSNPを一度に大量に解析するには、SNPアレイという技術が用いられます。SNPアレイには、塩基の違いを検出するDNA断片が高密度に敷き詰められており、一度に大量のSNPを判定することが可能です(実際にアレイ上に搭載されているSNPは数十万程度)。遺伝子型インピュテーションは、過去に行われたヒトの『全ゲノム配列情報』を参考にすることにより、アレイには搭載されていないSNPまでも統計的に予測する方法です。この技術により、解析対象のSNPを数百万箇所以上にまで増やすことが可能になります。
2.個人の肌質と関連する遺伝子領域
SNP情報を解析した被験者に対し、シミの状態や肌あれのしやすさといった自身の肌質に関する様々なアンケートを実施しました。
このアンケートデータと個々のゲノムデータを用いて、個人の肌質に影響を与えるSNPを探索した結果、『シミのできやすさ』に最も強い関連があるSNPとして『rs1001949』が見出されました。具体的には、SNP『rs1001949』において、GGタイプの人はシミが濃くなりやすく(できやすい)、反対にCCタイプの人はシミが濃くなりにくい(できにくい)肌質であることが分かりました(GCタイプの人はその中間)。
さらに、『肌あれのしやすさ』には『rs10785826』というSNPが関連していること、その他にも、『顔の紅潮のしやすさ』、『化粧品に対する肌トラブルの起こしやすさ』など様々な肌質に影響を与えるSNPを新たに発見しました。
今回の結果は、個人の肌の特徴を精度よく予測する技術の開発や肌質にあった化粧品・美容方法の提案などに応用できると期待されます。また、新たに見出された遺伝子領域をさらに詳しく研究することで、より詳細なシミや肌あれのメカニズム研究の進歩にもつながると期待しています。
[画像3: https://prtimes.jp/i/48666/29/resize/d48666-29-fb4db4fb90eb72f16d52-2.png ]
3.掲載雑誌・タイトル・著者について
雑誌名: Experimental Dermatology
論文タイトル: Search for genetic loci involved in the constitution and skin type of a Japanese women using a genome-wide association study
掲載アドレス: https://doi.org/10.1111/exd.14430
著者: 井上 悠1, 2, 長谷部 祐一1, 2, 五十嵐 敏夫1, 堀田 美佳1, 2, 奥野 凌輔 1, 2, 山田貴亮1, 長谷川 靖司1, 2
所属: 1 日本メナード化粧品株式会社 総合研究所
2 名古屋大学大学院 医学系研究科 名古屋大学メナード協同研究講座
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