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【共同声明】グリーン保健医療システムの構築に向けた転換点

PR TIMES / 2024年6月6日 16時40分

世界保健機関(WHO)による世界保健総会(WHA)における日本政府代表団による「気候変動と健康に関する変革的行動のためのアライアンス(ATACH)」への正式な参加表明を支持

特定非営利活動法人日本医療政策機構(HGPI: Health and Global Policy Institute)(事務局:東京都千代田区、代表理事:黒川清)は有志一同と共に共同声明「グリーン保健医療システムの構築に向けた転換点」を公表しました。



2024年5月28日の第77回世界保健総会(WHA: World Health Assembly)において日本政府が「気候変動と健康に関する変革的行動のためのアライアンス(ATACH: Alliance for Transformative Action on Heath)」への加盟を発表したことを歓迎し、全面的に支持します。この重要な決定は、日本が気候変動の健康への影響に対処し、持続可能で強靭な保健医療システムの構築を目指す国際的な取り組みに貢献する強い意志を示すものです。

[画像: https://prtimes.jp/i/7152/31/resize/d7152-31-07053b47f93256421dc9-0.png ]

今回、共同声明を公表させていただいた、6月5日は世界環境デーおよび環境の日です。この日は、1972年6月5日からストックホルムで開催された「国連人間環境会議」を記念して定められたものであり、日本の提案を受けて国連が定めました。日本では「環境基本法」により「環境の日」とされ、6月は「環境月間」として全国で様々な行事が行われています。世界的には国連環境計画(UNEP)の主導のもと、世界中の政府、企業、市民社会などが、また日本国内では環境省を中心に、何百万人もの人々が参加し、地球の未来を守るために環境問題の解決や保護について考え・行動する日です。

気候変動は現代社会における最大の健康脅威の一つであり、その影響は既に多くの地域で顕在化しています。極端な気象イベントや気温上昇、感染症の拡大など、気候変動がもたらす多様な健康リスクに対処するためには、国際的な協力と共同行動が不可欠です。ATACHへの参加を通じて、日本はこれらの課題に対する解決策を共有し、83のATACH参加国やその他の国々と共に効果的な対策を講じるための基盤を強化することを期待します。

2023年12月に開催された国連気候変動枠組み条約(UNFCCC: United Nations Framework Convention on Climate Change)の第28回締約国会議(COP28)では、歴史上初めての「健康の日」(Health Day)が設けられ、気候変動が健康に与える影響について深刻な懸念が表明されました。この会議では、「COP28 UAE 気候・健康宣言」が採択され、日本を含む143カ国が署名しました。この宣言は、国際社会における健康と気候変動の相互作用への認識を深め、国際的な協力を促進するものです。

世界保健総会(WHA)は、世界保健機関(WHO: World Health Organization)の最高意思決定機関であり、毎年5月に194の参加国の代表が集まり、組織の優先事項や政策を決定します。今回のWHAでは、2025年から2028年までのWHOの第14次一般業務計画(GPW 14)が決定されました。その中でも、気候変動と健康は6つの戦略目標の一つとなっており、プラネタリーヘルス領域の課題は、世界的な感染拡大(パンデミック)によって進捗が芳しくない持続可能な開発目標(SDGs: Sustainable Development Goals)を2030年までに前進させるうえで、分野・組織横断的な役割を担うことが期待されます。

また、日本においては、2019年に開催されたG20大阪サミットで採択された「大阪ブルー・オーシャン・ビジョン」ではプラスチック汚染について、そして2050年のカーボンニュートラルの目標の下では「GX2040ビジョン」「エネルギー基本計画」「地球温暖化対策計画」などの議論が進められています。これに加え、2023年12月に改定されたSDGs実施計画では、「プラネタリーヘルス」の考え方を踏まえ、地球規模の課題の相互連関に留意することが強調されています。さらに、2024年5月に閣議決定された環境基本計画では2030年頃までの選択が、数千年先まで影響を及ぼす「勝負の10年」になると指摘し、「プラネタリーヘルス」の考え方などが示されています。今回の「気候変動と健康に関する変革的行動のためのアライアンス(ATACH)」への参加は、厚生労働省と環境省はもとより、経済産業省や国土交通省、そして農林水産省など分野・組織横断的な取り組み推進のきっかけとなることが期待されます。

当機構のプラネタリーヘルスプロジェクトでは、日本国内外の医療政策課題に対応するために、マルチステークホルダーの協力を促進しています。2022年12月には、主要国首脳会議(G7)広島サミットに向けて、日本政府にATACHへのコミットメントを求める要望書を公表しました。この要望でも求めているように、我々は、この度の日本政府の決定が、国内外での気候変動と健康に関する取り組みをさらに加速させるものであると確信しています。

今後、日本政府はATACHへの参加プロセスを通じて、以下の取り組みを強化することが求められます:
気候変動に対する強靭な保健医療システムの構築
気候変動と保健衛生の脆弱性と気候変動への適応能力に関する評価(V&A: Vulnerability & Adaptation Assessments)の実施

保健医療分野の国家適応計画(HNAP: Health National Adaptation Plan)の策定と公表

V&AとHNAPを活用した気候変動資金へのアクセス促進


持続可能な低炭素保健医療システムの推進
保健医療制度の温室効果ガス排出量のベースライン評価の実施

低炭素で持続可能な保健医療制度の行動計画またはロードマップの策定

温室効果ガス排出削減と廃棄物削減への取り組み


気候変動と健康の相互作用に対する包括的な対応
メンタルヘルス、心理社会的幸福、伝統的な薬用知識の喪失、生計と文化の喪失、および気候変動による移住と移動への対応

気候感応性疾病および健康リスクに対する保健システムの対応能力の向上

気候・健康情報サービス、監視、早期警告および対応システムの強化


健康と気候変動に関する研究と協力の強化
ヒト、動物、環境、および気候の健康課題に対する協力の促進

ワンヘルスアプローチの実施と環境的決定要因への対応

パンデミックの予防、準備、対応のための人獣共通感染症の早期発見


資金調達と国際協力の推進
国内予算、多国間開発銀行、多国間気候基金、保健財政機関、慈善団体、二国間開発機関、民間セクターによる気候と健康への投資の拡大

気候資金のモニタリング、透明性、評価の強化



さらに、気候変動以外のプラネタリーヘルス領域の課題として、以下の取り組みが期待されます:
化学物質、廃棄物、汚染の健康への影響への対応
国際機関などによる、化学物質、廃棄物、汚染が健康に与える影響についての評価、特に鉛、水銀、農薬などの有害物質によるリスクを軽減するための取り組みを推進

化学物質と廃棄物の健全な管理を支援するための科学政策パネルの設立と、海洋環境を含むプラスチック汚染に関する国際的な法的拘束力のある手段の開発



健康のための持続可能な環境の確保
気候変動、環境汚染、生物多様性の損失、栄養のすべての形態の問題に対応するため、統合的で協調的な行動を促進

食品・農業、水・衛生、住宅、都市計画、医療、交通、エネルギーなどの分野全体での適応行動の実施



持続可能な開発目標(SDGs)達成の加速
健康の不平等を克服し、持続可能な開発目標、特にSDG3を達成するための政策を推進

貧困と飢餓の削減、健康と生計の向上、社会保護システム、食糧安全保障と栄養の向上、すべての人々への清浄なエネルギー源(クリーンエネルギー)、安全な飲料水、衛生と衛生のアクセスの強化、およびユニバーサルヘルス・ヘルス・カバレッジ(UHC: Universal Health Coverage)の実現



保健部門の廃棄物削減
保健医療分野における廃棄物についての国家保健システムの調達基準(サプライチェーンを含む)の開発を促進



政策と実践の相乗効果の強化
気候・健康ネクサスにおける進展の監視、好事例の共有、横断的・相互的な研究、部門間協力を強化



当機構のプラネタリーヘルスプロジェクトとして、我々はアドバイザリーボードメンバーと共に引き続き日本政府の取り組みを支援し、地球規模の健康・医療課題の解決に向けて、共に努力してまいります。日本政府の活動を後押しする活動は、すでに国内においても産官学民の各セクターにおいて多数実施されています。

日本製薬団体連合会・日本製薬工業協会は、すでに「COP28「気候変動と健康に関する宣言」に対する革新的医薬品産業の声明」公表し、ATACHを歓迎するとともに、カーボンニュートラル行動計画と目標設定を進めており、持続可能な低炭素保健医療システムの推進に向けて取り組みを強化しています。

また、141の加盟学会からなり、全学会の会員数の総和は100万人を超える日本医学会は、2023年3月「未来への提言」を取りまとめ、気候変動をはじめとした地球規模の健康課題への対応を進めることを宣言しました。今回の日本政府のATACH参加をきっかけに、他の主要先進国の学会同様に、各専門領域での議論とそこからの具体的なアクションが待たれます。特に、2024年5月に日本プライマリ・ケア連合学会が公表した「プライマリ・ケアにおける気候非常事態宣言(浜松宣言)」はその流れを国内で進める上で重要な役割を果たすと考えられます。

さらに、日本医師会も、2009年の「環境に関する日本医師会宣言」をはじめ、環境省が中心に取り組んでいる「脱炭素につながる新しい豊かな暮らしを創る国民運動」であるデコ活に参加するなど、地球と人類の健康を守るべく取り組みを進めています。

最後に、当機構も、日本を含む約83カ国以上の保健省や30以上のパートナーとともに、ATACHの一員として、5つのワーキンググループ(1.ファイナンシングワーキンググループ(FIN-WG: Financing Working Group)、2.気候変動に対して強靭な保健医療システムワーキンググループ(CRHS-WG: Climate Resilient Health Systems Working Group)、3.持続可能な低炭素保健医療システム(LCSHS-WG: Low Carbon Sustainable Health Systems Working Group)、4.サプライチェーンワーキンググループ(SC-WG: Supply Chain Working Group)、5.気候行動と栄養ワーキンググループ(I-CAN-WG: Climate Action and Nutrition Working Group))の中で活動し、役割を果たしていきたいと考えています。


■謝辞:
本声明の作成にあたっては、これまでの活動を通じてご協力いただいた、以下のアドバイザリーボードご参加の有識者などから、ご意見をいただきました。深く御礼申し上げます。本声明は、独立した医療政策シンクタンクとして日本医療政策機構が取りまとめたものであり、アドバイザリーボードメンバーなど、ご賛同いただいている有志の方々が所属する団体の見解を示すものでは一切ありません。

■ご賛同いただいた方々:(敬称略・順不同)
有馬 覚(第一三共株式会社 サステナビリティ部 企画グループ)

今井 亮翔(武田薬品工業株式会社 医療政策・ペイシェントアクセス統括部 渉外主席部員)

尾崎 治夫(公益社団法人 東京都医師会 会長)

鹿嶋 小緒里(広島大学 IDEC 国際連携機構 プラネタリーヘルスイノベーションサイエンス(PHIS)センター長/広島大学大学院 先進理工系科学研究科 環境保健科学研究室 准教授)

工藤 泰子(京都気候変動適応センター 研究協力者)

近藤 尚己(京都大学 大学院医学研究科 社会健康医学系専攻 社会疫学分野 主任教授)

菅原 聡(一般社団法人Green innovation 代表理事)

鈴木 定彦(北海道大学 ディスティングイッシュトプロフェッサー/北海道大学 人獣共通感染症国際共 同研究所 バイオリソース部門 教授/北海道大学 ワクチン研究開発拠点 研究支援部門長・教授)

中野 夕香里(公益社団法人 日本看護協会 常任理事)

中村 桂子(東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科 国際保健医療事業開発学分野 教授)

中村 安秀(公益社団法人日本WHO協会・理事長)

南齋 規介(国立研究開発法人国立環境研究所 資源循環領域 領域長)

西場 洋介(ノボ ノルディスク ファーマ株式会社 医療政策・渉外本部 パブリックアフェアーズ&サステナビリティ部)

橋爪 真弘(東京大学大学院 医学系研究科 国際保健政策学 教授)

原口 真(MS&ADインターリスク総研 上席フェロー/MS&ADインシュアランスグループホールディングス TNFD専任SVP)

夫馬 賢治(信州大学 グリーン社会協創機構 特任教授/株式会社ニューラル CEO)

細川 秀一(公益社団法人 日本医師会 常任理事)

松尾 雄介(公益財団法人 地球環境戦略研究機関 ビジネスタスクフォース ディレクター)

光武 裕(アストラゼネカ株式会社 ジャパンサステナビリティディレクター)

山野 博哉(国立研究開発法人国立環境研究所 生物多様性領域 上級主席研究員)

山本 尚子(国際医療福祉大学 大学院 教授/国際医療協力センター長)

渡辺 知保(長崎大学 前学環長/熱帯医学・グローバルヘルス研究科 教授 兼 学長特別補佐(プラネタリーヘルス))

一般社団法人みどりのドクターズ

アジア医学生連絡協議会 日本支部(AMSA Japan: Asian Medical Students’ Association Japan)

日本国際保健医療学会 学生部会(jagh-s: Japan Association for Global Health, Students Section)



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