ソマリア:栄養治療センターから退去、親たちが紛争拡大を懸念
PR TIMES / 2012年10月1日 18時0分
ソマリア南部のキスマヨで国境なき医師団(MSF)が運営している栄養治療センターでは、2012年9月28日までに、同市に迫っている戦闘の影響を恐れた親たちが、重度栄養失調の治療を受けていた子どもを連れて病院を後にした。紛争の影響は、外来治療プログラムにも及んでいる。
キスマヨおよび周辺地域ではこの数週間、武力紛争の脅威によって、医療援助活動、医療施設間の連携システム、通院が著しく阻害されている。ソマリア中南部の広範な地域が栄養危機に見舞われた2011年から、MSFは栄養治療センターで重度栄養失調児を治療してきた。しかし、戦闘勃発への恐れから患者数が激減。避難や帰宅のための退院を望む親たちと同センターのスタッフが話し合いを行ってきた。
9月28日には、最後に残っていた9人のうち8人を親の要望に応じて退院させた。その際に、自宅療養を続けられるように物資の提供と治療方法の指導を行った。退院に耐えられないほど衰弱している少年1人について、MSFとしては同センターでの治療を続けたほうがよいと考えていたが、センタースタッフによるとこの少年も両親とともに避難したという。
同センターは、2011年の栄養危機における栄養失調率の高まりを受け、外来治療プログラムでは治療の間に合わない子どもを対象に開設した。ケニアのナイロビを拠点とするMSFの活動責任者であるダヴィド・ケロルは「はしかや水様性下痢の発生にも対応してきました。栄養失調に伴うこれらの病気は、人びとの健康面での弱さと保健医療ニーズの高さをはっきりと示しています」と話す。
さらに、650人以上の子どもたちが治療を受けている外来治療プログラムも、状況の不安定化に伴って中止となる。MSFは9月下旬、備蓄していた栄養補助食品の配給を行った。しかし、子どもたちの今後への懸念は払拭されていない。
ケロルは「キスマヨの住民が利用できる保健医療はごく限られたものです。元より損なわれている医療体制が、暴力の拡大でさらに収縮することを心配しています。最寄りのマレレにあるMSFの病院への患者紹介もできなくなってしまいました」と話す。
MSFは紛争の各当事者に、キスマヨとその周辺にある無防備な保健医療施設の存在を尊重し、地域住民で需要が高い医療援助の提供を妨げないように呼びかけている。また、いずれの緊急医療についても、必要に応じて保健医療施設への通行を保証する責務を繰り返し訴えている。
MSFの援助は患者の医療ニーズだけに基づくもので、いずれの当事者に対しても独立・中立の立場を維持している。また、人種・宗教・民族・政治的帰属にかかわらず、その援助を確実に提供することを目指し、活動を行っている。
MSFは1991年にソマリアで活動を開始。2011年は、同国各地・エチオピア・ケニアのソマリア人難民キャンプで、合計22本のプログラムを展開した。これらのプログラムで、少なくとも7万8500人の重度栄養失調患者と、3万人の中程度の栄養失調患者が治療を受けている。また、はしかについても、7200人以上が治療を受け、25万5000人以上が予防接種を受けた。さらに、6000件以上の分娩介助と、53万7000件以上の診療も提供している。
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