【政策提言】環境と医療の融合で実現する持続可能な健康長寿社会~プラネタリーヘルスの視点を取り入れた第3期健康・医療戦略への提言~(2024年12月20日)
PR TIMES / 2024年12月20日 16時15分
健康・医療戦略が2040年頃までを視野に入れる中で、気候変動が与える健康影響への対応、環境負荷の軽減、そして持続可能な健康長寿社会の実現を目指した方針を
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特定非営利活動法人日本医療政策機構(HGPI: Health and Global Policy Institute)(事務局:東京都千代田区、代表理事:乗竹 亮治)は、「環境と医療の融合で実現する持続可能な健康長寿社会~プラネタリーヘルスの視点を取り入れた第3期健康・医療戦略への提言~」を公表しました。
日本政府が推進する「健康・医療戦略」は、国民の健康寿命の延伸を目指し、医療研究開発や新産業の創出を通じて社会と経済の持続可能な発展を図る重要な政策です。第3期においては、気候変動や環境汚染、生物多様性の喪失といった地球規模の課題が、人々の健康に直接的かつ深刻な影響を与えることが明らかになっています。これらの課題に取り組むためには、従来の保健医療の枠を超え、環境と健康を一体的に捉える「プラネタリーヘルス」の視点を政策に統合する必要があります。
さらに、2024年11月に開催されたグローバルヘルス戦略推進協議会においても、「気候変動と健康」の重要性が省庁横断的な取り組みとして強調されており、具体的な取り組みとしては、経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)にも明記され、厚生労働省が推進している「気候変動と健康に関する変革的行動のためのアライアンス(ATACH)」、経済産業省による環境インフラや脱炭素・環境負荷低減技術の海外展開促進に向けた支援、そして環境省による気候変動による健康リスク評価システム(Adaptwell)などが示されています。
この政策提言では、健康・医療戦略が2040年頃までを視野に入れる中で、気候変動が与える健康影響への対応、環境負荷の軽減、そして持続可能な健康長寿社会の実現を目指した具体的な提案を提示します。
■プラネタリーヘルスの視点から見た注目分野:プラネタリーヘルスは、人間の健康と地球環境の持続可能性が相互に依存しているという考え方に基づく新しいアプローチです。プラネタリーヘルスの視点から見た健康・医療戦略の可能性として、以下の3つの分野が特に注目されます。
1. 医療分野の研究開発とイノベーションの推進における持続可能性
2. 持続可能な保健医療システムの構築
3. 国際的なリーダーシップの発揮
■プラネタリーヘルスの視点からの具体的提言:気候変動、環境汚染、生物多様性の喪失といった地球規模の環境問題は、医療分野にも直接的な影響を与えており、それに対応するためには、持続可能な医療システムの構築が急務です。この視点を反映した健康・医療戦略の実現に向け、具体的な施策を以下に提案します。
気候変動への適応策
気候変動は、異常気象・極端現象の頻発や気温上昇、大気汚染により、健康へのリスクを大幅に増加させています。特に熱中症や感染症の増加が懸念されておりますが、暑熱に対して脆弱である肥満症や糖尿病などの慢性疾患患者やメンタルヘルスの課題も指摘されています。今後は、これらに対処するための適応策が求められています。
1. 気候脆弱性評価の実施とリスク地域の特定
2. 統合サーベイランス体制の構築
健康影響の軽減策
気候変動がもたらす健康への影響を軽減するためには、医療機関やコミュニティでの適応策を講じる必要があります。
1. 熱中症予防プログラムの強化と普及
2. 感染症対策の強化
温室効果ガス排出削減(緩和策)
医療機関は大量のエネルギーを消費し、温室効果ガスの排出源となっているため、医療分野全体で脱炭素化を進めることが不可欠です。
1. 医療施設のエネルギー効率改善
2. 温室効果ガス排出量のモニタリングと報告制度の導入
3. 医療DXの推進
持続可能なサプライチェーンの構築
医薬品や医療機器の製造・流通過程でも環境負荷が発生しているため、サプライチェーン全体での持続可能性を高めることが求められます。
1. 製造プロセスの改善
2. 調達基準の見直し
3. 健康と環境への利点と炭素取引市場との連携
環境汚染への対策
環境汚染は、呼吸器疾患や心血管疾患などの健康リスクを引き起こし、公衆衛生に重大な影響を及ぼします。特に医療廃棄物の管理が重要です。
1. エコフレンドリーなパッケージングの導入
2. 廃棄物管理システムの改善
3. 医療従事者への教育
国際協力とルールメイキングの強化
気候変動や環境問題は国境を越えた課題であり、国際的な協力とルールメイキングが不可欠です。世界保健機関(WHO)による2025年から2028年までの取り組みについて第14次一般業務計画(GPW 14)では、気候変動と健康は6つの戦略目標の一つとなっています。プラネタリーヘルス領域の課題に対して、日本が、2030年までの持続可能な開発目標(SDGs)を推進しその先を指し示するうえで、分野・組織横断的な役割を担うことが期待されます。日本は、これまでの国際的な議論を牽引してきたユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)の考え方に環境負荷を加えたグリーナーUHCを掲げ、継続的なリーダーシップを発揮し、共通の課題解決に取り組むことが期待されます。
1. 気候変動と健康に関する変革的行動のためのアライアンス(ATACH)への積極的な関与
2. 持続可能な保健医療システムの国際展開
■結論:政府による「持続可能な開発目標(SDGs)実施指針改定版」、「第六次環境基本計画」、「第五次循環型社会形成推進基本計画」などには、すでにプラネタリーヘルスの視点が盛り込まれています。厚生労働省が主体となり組み込む厚生労働省における「環境配慮の方針」や「厚生労働省国際保健ビジョン」「厚生労働省低炭素社会実行計画」などにおいてもプラネタリーヘルスの視点に基づき対策を進めるとともに、第3期健康・医療戦略にもプラネタリーヘルスの視点を統合し、持続可能な健康長寿社会の形成に向けた戦略としていくことが求められます。
本提言に対して、特定非営利活動法人 日本医療政策機構 菅原丈二 副事務局長は下記のようにコメントをしています。
"日本医療政策機構では、地球環境と人間の健康が密接に関連するという『プラネタリーヘルス』の概念に基づき、持続可能な健康長寿社会の実現を目指す取り組みを推進しています。日本政府が掲げる第3期健康・医療戦略においても、この視点を統合することが期待されており、気候変動や環境汚染、生物多様性の喪失など、地球規模の課題が健康に及ぼす影響を踏まえた政策の必要性が高まっています。
2024年5月の世界保健総会(WHA)では、気候変動に強靭で持続可能な保健医療システム構築へのコミットメントが加盟国間で共有されました。日本は「気候変動と健康に関する変革的行動のためのアライアンス(ATACH)」への参加を表明し、国内外での持続可能な保健医療システムの構築と国際連携の推進に注力しています。さらに、2023年に開催されたブラジルでのG20保健大臣会合では、「気候と健康」に関する宣言が採択され、2025年にブラジルのベレンで開催される国連気候変動枠組み条約第30回締約国会議(COP30)においても継続的に議論することが決まっています。足元に目を移すと、2024年11月に開催されたグローバルヘルス戦略推進協議会においても、「気候変動と健康」の重要性が省庁横断的な取り組みとして強調されており、経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)にも明記されたATACHの推進、経済産業省による環境インフラや脱炭素・環境負荷低減技術の海外展開促進に向けた支援、そして環境省による気候変動による健康リスク評価システム(Adaptwell)などが具体的な取り組みとして示されています。
気候変動の影響を受ける健康課題への対応は、予防医療やデジタルヘルスの活用、環境負荷の低い医療技術の推進を通じて可能であり、日本がその分野でリーダーシップを発揮することにより市場形成なども求められます。
この政策提言では、健康・医療戦略が2040年頃までを視野に入れる中で、気候変動が与える健康影響への対応、環境負荷の軽減、そして持続可能な健康長寿社会の実現を目指した内容を第3期健康・医療戦略に盛り込むことにより、気候変動と健康の相互関係に対する国内外の認識が深まり、保健医療分野における行動が促進されることを期待しています。"
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