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乳がんの遺伝リスク検査、普及率3割未満

PR TIMES / 2024年6月3日 10時15分

医療現場が対応しづらい制度設計に課題



 女性のがん患者数が最も多い乳がんにおいて、がんが子どもに遺伝するリスクを確かめる検査の実施率が3割にも満たない可能性が、病院の経営支援を行うグローバルヘルスコンサルティング・ジャパン(GHC ※1=本社・東京都新宿区、代表取締役社長・渡辺幸子)の調査で明らかになりました。本来であれば高い実施率であるべき検査が伸び悩む背景について、専門家は「病院側が対応しづらい制度設計が主因」と指摘しています。
アンジーの決断で注目「遺伝性乳がん卵巣がん(HBOC)」
 厚生労働省国立がん研究センターが公表する「全国がん登録(2019年)」(詳細はこちら)によると、乳がんは女性の患者数が最も多いがんです。昨今、乳がんの早期発見・治療において「遺伝要因」が注目されており、親から子にがん遺伝情報が受け継がれる可能性が高い「遺伝性乳がん卵巣がん(HBOC=Hereditary Breast and Ovarian Cancer)」については、対象者への検査(BRCA遺伝学的検査)の実施が推奨されています。HBOCは、米国の女優アンジェリーナ・ジョリーさんがHBOCと診断され、まだがんができていない両方の乳房、その後卵巣と卵管を切除したことで知られています。

 BRCA遺伝学的検査は、国内でも2020年4月から保険適用になりましたが、その実態はこれまで明らかになっていませんでした。そこでGHCはこのほど、同社が保有する医療ビッグデータ(※2)を用いて、BRCA遺伝学的検査の実施状況について分析しました(分析結果の詳細は『ミクスOnline』(株式会社ミクス発行)2024年6月1日付掲載『乳がん症例におけるBRCA1/2遺伝子検査の実施状況を分析、検査実施率が伸び悩む背景に制度設計の課題』参照 ※会員制サイト)。
人材不足の中小病院が主体では限界
 分析結果によると、検査の実施率は増加傾向にあるものの、2024年3月時点の実施率は3割未満でした(図表)。
[画像: https://prcdn.freetls.fastly.net/release_image/46782/37/46782-37-c0fc707e21b78f9db17af5793bf9f4bf-600x389.png?width=536&quality=85%2C75&format=jpeg&auto=webp&fit=bounds&bg-color=fff ]
図表:45歳以下の乳がん症例におけるBRCA遺伝学的検査の実施率 月次推移

 データ分析をした薬剤師でGHCコンサルタントの吉田昌史は、検査の実施率が低い要因について「病院が検査実施に伴う診療報酬を得るための算定条件が、医療現場の現状に則していない」と指摘します。

 BRCA遺伝学的検査の保険適用には、専門医の配置やカウンセリング実績などの算定条件があり、ある程度の規模がある病院でないと算定が難しいのが現状です。そのため、算定条件を満たせない病院は、算定条件を満たす病院と連携すれば条件を満たせるとする制度設計になっています。

 ただ、「HBOCの症例は母数が少なく、がん診療にあまり注力しておらず、慢性的な人材不足に悩まされる中小規模の病院の立場を考えると、年に数例しかないHBOC疑いのBRCA遺伝学的検査を算定するため、他の病院との連携体制を整えることは、優先順位が低くなりがち」と吉田は指摘します。このような実態を踏まえると、「検査する病院が主体になるのではなく、算定条件を満たせる病院が主体になる制度設計に改めることで、BRCA遺伝学的検査の実施率が飛躍的に向上するのではないか」(吉田)との考えを示しています。

(※1)株式会社グローバルヘルスコンサルティング・ジャパン
医療専門職、ヘルスケア企業出身者、IT専門家らで構成される経営コンサルティングファーム。急速な高齢化で社会保障財政の破たんが懸念される中、「質の高い医療を最適なコストで」の理念を実践する具体的な手法として、米国流の医療マネジメント手法「ベンチマーク分析」を日本に初めて持ち込み、広めたパイオニアです。http://www.ghc-j.com/

(※2)医療ビッグデータ
医療ビッグデータは、患者データを含む医療に関するさまざまなデータの総称。ここでは、包括支払い方式で入院医療費を請求する「DPC(診療群分類別包括払い)制度」の対象病院が作成を義務付けられている「DPCデータ」を指す。DPC制度は、従来型の出来高制度と比較して、1日当たりの報酬が決まっているため、過剰な診療の抑制やコスト削減を促すことが期待できる。主に病床数が多く、重症患者を診療する急性期病院の多くが導入している。対象病院は1761病院(2023年4月時点)。GHCは1000病院以上のDPCデータを保有しており、カバー率は約6割。今回の分析は、GHC社が保有するデータのうち、2020年4月~2024年3月の入院・外来データをすべて提出している428病院を対象とした。分析対象は乳がん病名が入力されている患者かつ生検(乳腺穿刺又は針生検)を実施した症例のうち、生検時の年齢が45歳以下の症例(14,995症例、当該症例が存在した病院数は341病院)とした。なお、対象症例は症例数のボリューム、DPCデータと分析の相性を考慮し、45歳以下の乳がん症例と設定している。

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