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市民グループが国土交通省に、都市開発事業支援機構(JOIN)に情報公開と人権配慮に関する制度整備を求める要請文を発表

PR TIMES / 2024年8月23日 17時40分



[画像: https://prcdn.freetls.fastly.net/release_image/106253/37/106253-37-10b3d182255f08542937aaba4c8d9c79-2560x1920.jpg?width=536&quality=85%2C75&format=jpeg&auto=webp&fit=bounds&bg-color=fff ]


 本日、アーユス仏教国際協力ネットワーク、国際環境 NGO FoE Japan、日本国際ボランティアセンター(JVC)、武器取引反対ネットワーク(NAJAT)、メコン・ウォッチの5団体は、国土交通省所管の株式会社海外交通・都市開発事業支援機構(JOIN)が、6月に巨額な損失を公表したことを受け、国土交通省と同省が設立した「海外交通・都市開発事業支援機構(JOIN)の役割、在り方、経営改善策等に関する有識者委員会」に対し、JOINの情報公開と人権配慮に関する制度整備を求める要請書を提出しました。
 今回公表された損失のうち179億円は、ミャンマーでの都市開発3事業で計上されたものです。特に、3事業の1つ通称「Yコンプレックス事業」は、軍事博物館の跡地に大規模複合不動産を建設・運営する事業で、土地の賃料の支払い先がミャンマーの兵站局であることから、私たちはこの事業がミャンマーで市民に残虐行為を続けるミャンマー軍を利するものとして、クーデター前から問題にしてきました。詳細は、要請書をご覧ください。
2024年8月22日

国土交通大臣 斉藤 鉄夫様
海外交通・都市開発事業支援機構(JOIN)の役割、在り方、経営改善策等に関する有識者委員会委員長 土居丈朗様

【要請書】
株式会社海外交通・都市開発事業支援機構(JOIN)に関する
情報公開と人権配慮に関する制度整備を求めます

アーユス仏教国際協力ネットワーク
国際環境 NGO FoE Japan
日本国際ボランティアセンター(JVC)
武器取引反対ネットワーク(NAJAT)
メコン・ウォッチ


 国土交通省所管の株式会社海外交通・都市開発事業支援機構(JOIN)は6月25日、2023年度決算における当期純損失が約799億円にのぼるとホームページの情報を更新する形で公表しました(1)。そのうち約179億円がミャンマーでの都市開発3事業で計上された損失でした(2)。

 JOINは官民ファンドとされていますが、実質的には公的資金で運用されているファンドです。現在公開されている2023年3月末現在の株主情報によると、民間出資は全体の3%にも満たない約60億円しかなく、国の財政投融資特別会計からの支出が2,188億円と97%以上を占めます(3)。

 今回公表された損失のうち約179億円は、ミャンマーの最大都市ヤンゴンで建設の進む以下の3事業についてです。
 ・ヤンキン都市開発事業(投資額最大57億円+債務保証額約137億円)
 ・ヤンゴンランドマーク事業(別名称ヨマセントラル事業。投資額最大45億円)
 ・ヤンゴン博物館跡地再開発事業(通称Yコンプレックス事業。投資額最大56億円+債務保証額約47億円)

 JOINのこのような投資は、日本の国民に損害を与えるのみならず、重大な人権問題とも関係しています。

 3事業の一つ、Yコンプレックス事業は、軍事博物館の跡地に大規模複合不動産を建設・運営する事業です(4)。施設はミャンマー軍の管理する土地で建設中であり、その土地の賃料の支払い先が兵站局であることから(5)、私たちはこの事業がミャンマーで市民に残虐行為を続けるミャンマー軍を利するものとして、クーデター前から問題にしてきました(6)。

 米国、英国、カナダは、2021年12月に兵站局を制裁対象としました。英国は、兵站局が国軍のための弾薬、爆弾、ジェット燃料などの調達にきわめて重大な役割を果たしており、文民の弾圧を可能にしていると指摘しています(7)。問題の指摘に対し、出資と債務保証を行うJOINも、融資を提供した財務省所管の輸出信用機関である国際協力銀行(JBIC)も(8)、兵站局が国防省内にありミャンマー政府の一機関であるため、土地賃料の支払いによってミャンマー軍を利することはないと説明してきました。しかし、2023年6月21日には、米国が「数十年にわたり抑圧的な軍事支配を行い、2021年のクーデター後にそのような支配を暴力的に復活させたミャンマー軍を指揮し支配している」として、ミャンマー国防省も制裁対象としたことで(9)、その説明の根拠も崩れています。

 JOINは今回公表した文書の中で未だに、「本事業については、JOINとしても、共同出資者たる日本企業とともに、状況を見ながら事業の実現や事業価値の向上に取り組むこととしている」とし、今後もこの事業に関わる姿勢を見せています。ミャンマー情勢の深刻さを正しく認識しているとも思えません。UNICEFによれば、現在ミャンマーには310万人の国内避難民(IDP)がおり、1800万人以上が人道支援の必要な状況に陥っています(10)。そもそも公表された情報は、単に損失について触れているだけで、ミャンマーで自らが抱えている問題について、JOINは何らコメントしていません。

 その上、事業を行う他の企業が既に2021年時点や2022年に損失を計上し公表する中、JOINの計上は2023年度になってからで、発表は2024年度の今となっており、公的資金を扱う上で国民や納税者に対する説明責任を果たしていません。

 ヤンキン都市開発事業では、JOINと共同で出資している鹿島建設株式会社が損失計上の見込みを2022年度第3四半期に公表し(11)、第4四半期で計上していました(12)。Yコンプレックス事業では、共同で出資をし、日経企業連合特別目的会社(J-SPC)であるヤンゴン博物館開発(YMD)を構成している東京建物株式会社および大和ハウス工業株式会社(子会社の株式会社フジタが事業出資)が、2022年に既に損失を計上し、それを公にしていました(13)。

 また、JOINは2024年7月29日に開催された財政制度等審議会財政投融資分科会に提出した資料で(14)、Yコンプレックス事業について「2024年5月の融資返済期限に際して、J-SPCの手元元金が不足していたため、JOINを含む日方各社による債務保証の履行を実施した」と明らかにしたものの、その詳細は公にしていません。JBICが三井住友銀行とみずほ銀行とともに協調融資したこの事業について、情報を公開し国民に説明すべきです。また、ヤンキン都市開発事業での債務保証についても履行の有無を含め公開すべきです。

 更にJOINは、官民ファンドの海外需要開拓支援機構や農林漁業成長産業化支援機構がExit案件を公開する中、案件名やExit理由などの詳細を公表していません(15)。これについても、一定の情報は公開すべきです。

 また今回公表された情報によれば、「国土交通省がJOINの多額の損失計上を踏まえて、抜本的な対応策を第三者かつ専門的な観点から検証・検討するため、官民ファンド、金融実務、海外プロジェクト、組織ガバナンス等の学識者・専門家から構成される有識者委員会を設置し、JOINの役割、在り方、経営改善策等幅広い論点について、年内を目途にとりまとめを行う」とあります。8月2日に、有識者会議に関し、国土交通省はプレスリリースを発行し(16)、会議のメンバーなどを公表しました。しかし、JOINがミャンマーで抱える人権問題について意見ができる専門家が、有識者に含まれるようには見えません。ミャンマーのように人権リスクの高い国での事業の支援を決める前には、十分な人権デューデリジェンスを行う必要があります。今回のYコンプレックス事業を教訓に、これまでの体制を評価し、その結果に基づき人権デューデリジェンスの体制を整備する必要があると考えます。

 さらにJOINは、「既存事業については、上記の有識者委員会の検証を待つことなく、モニタリング体制の強化や政府機関等との連携強化、広報対策の強化等に着手する。また、有識者委員会での検証の結果が出るまでは、新規支援決定を見合わせる」としておきながら、この損失公表と同時に、駆け込みのごとくベトナム社会主義共和国・ハイフォン大規模住宅都市開発事業への支援に240億円を出資することを明らかにするなど(17)、不誠実な対応も目につきます。

 さまざまな問題を抱えるJOINについて、国土交通省が以下のような対応をとるよう強く求めます。
 ・有識者会議の議論は、詳細な記録を残し、それを公開してください。
 ・有識者会議では、これまでのJOINが支援を決定する際の人権配慮に関し、検証・評価をすべきです。そのために、人権擁護の体制整備に関し、知見を有する専門家からのヒヤリングを行ってください。
 ・JOINの資金はJTやNTT株式の配当のほか、国債で調達された資金であると理解しています。今回の損失は、国民負担で一般会計からそれが補填されるのか等、今後の処理に関して情報を明らかにしてください。
 ・9割以上の資金を公的資金で賄っているJOINが、商業上の秘密を理由に事業の進捗や問題点を秘匿することは許されません。まずは、今回の損失事業で行なった債務保証の金額や対象者を明らかにしてください。また、今後もJOINが存続する場合、JOINの情報公開制度の整備が必要です。
 ・国連「ビジネスと人権に関する指導原則」や「OECD多国籍企業行動指針」で求められている責任を果たすため、少なくともミャンマーのYコンプレックス事業に関しては、JOINの出資を引き揚げるよう指導してください。ヤンキン都市開発事業とヤンゴンランドマーク事業については、ミャンマー軍を利することがないか人権デューデリジェンスを行い、その結果を公表してください。

以上

(1) JOIN. 「補足資料:2023年度決算について」
https://www.join-future.co.jp/about/financial-statements/pdf/about-the-settlement_2023.pdf (2024/6/27閲覧)
(2)注1と同じ。
(3) JOIN. 「株主情報」https://www.join-future.co.jp/about/shareholders/ (2024/6/27閲覧)
(4) JOIN. 「ミャンマー・ヤンゴン博物館跡地再開発事業 (2017/7/28) 」
https://www.join-future.co.jp/images/topics/1602825053/1602825053_10001.pdf
(5) "B.O.T System Land Lease Agreement," Appendix II, Environmental Impact Assessment Y COMPLEX PROJECT Dagon Township, Yangon, dated July 2019.
(6) 【プレスリリース】 ヤンゴンの複合不動産開発でミャンマー国軍に資金が流れる恐れを市民社会が指摘 国際協力銀行は人権侵害への加担回避について説明を(2020/8/25)
http://www.mekongwatch.org/resource/press.html
【共同要請書】日本政府はミャンマーに対する経済協力事業の全面的な見直しを (2021/6/1)
http://www.mekongwatch.org/PDF/rq_20210601.pdf
【共同声明】ミャンマー:クーデターから半年 日本政府は国軍の暴挙を止めるための具体的な行動を(2021/8/1)
http://www.mekongwatch.org/PDF/rq_20210801.pdf
【要請書】ミャンマー:クーデターから10ヶ月 日本政府は国軍との経済的関係を断ち切ってください(2021/12/1)
http://www.mekongwatch.org/PDF/rq_20211201.pdf
【プレスリリース】日本の官民ミャンマー事業 Yコンプレックスの契約相手が米・英・加の制裁対象に(2021/12/13)
http://www.mekongwatch.org/PDF/pr_20211213.pdf
【公開書簡】米国がミャンマー軍政の国防省を制裁対象に 日本政府は直ちにYコンプレックス事業からの完全撤退をすべき(2022/7/25)
http://www.mekongwatch.org/PDF/rq_20230725_Ycomplex_J.pdf
【要請書】ミャンマー軍を利するODAと公的資金供与事業の停止を日本政府に求めます(2022/12/1)
http://www.mekongwatch.org/PDF/rq_20231201.pdf
(7)【プレスリリース】日本の官民ミャンマー事業Yコンプレックスの契約相手が米・英・加の制裁対象に(2021/12/13)
http://www.mekongwatch.org/PDF/pr_20211213.pdf
(8) JBIC. 「ミャンマー連邦共和国において日本企業が実施する複合不動産の開発・運営事業に対する融資 (2018/12/18)」
https://www.jbic.go.jp/ja/information/press/press-2018/1218-011714.html
(9)【公開書簡】米国がミャンマー軍政の国防省を制裁対象に 日本政府は直ちにYコンプレックス事業からの完全撤退をすべき(2023/7/25)
http://www.mekongwatch.org/PDF/rq_20230725_Ycomplex_J.pdf
(10) UNICEF. Myanmar Humanitarian Situation Report No. 4, 1 - 31 May 2024.
https://reliefweb.int/report/myanmar/unicef-myanmar-humanitarian-situation-report-no-4-1-31-may-2024 (2024/6/27閲覧)
(11) 鹿島建設株式会社. https://www.kajima.co.jp/ir/yuho/pdf/125-quarterly3.pdf
(12)鹿島建設株式会社. https://www.kajima.co.jp/ir/finance/pdf/kessan-20220513-j.pdf
(13)東京建物. https://tatemono.com/ir/stock/pdf/204_internetkaiji_01.pdf (2024/6/27閲覧)
日本経済新聞.「ミャンマー、日系企業参画の不動産開発停滞 政変が影響(2022/7/24)」
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM042JO0U2A700C2000000/ (2024/6/27閲覧)
衆議院.「海外交通・都市開発事業支援機構のミャンマーにおける事業の進捗に関する質問主意書(櫻井周議員提出)」
https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_shitsumon.nsf/html/shitsumon/a211047.htm (2024/6/27閲覧)
(14)国土交通省 株式会社海外交通・都市開発事業支援機構. 「投資計画等の進捗状況(2024年7月29日)」
https://www.mof.go.jp/about_mof/councils/fiscal_system_council/sub-of_filp/report/zaitoa20240729/zaitoa20240729_1.pdf
(15)同上
(16) 国土交通省プレスリリース「海外交通・都市開発事業支援機構(JOIN)の役割、在り方、経営改善策等に関する有識者委員会」を開催します」
https://www.mlit.go.jp/report/press/sogo05_hh_000355.html
(17) 国土交通省プレスリリース「海外交通・都市開発事業支援機構(JOIN)の役割、在り方、経営改善策等に関する有識者委員会」を開催します」
https://www.mlit.go.jp/report/press/sogo05_hh_000355.html

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