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【(一財)沖縄美ら島財団】サメの“小型”人工子宮装置を開発。成果を国際学術誌にて発表。

PR TIMES / 2024年12月2日 17時15分

本技術は、これまで不可能だった胎仔の長時間搬送への道を開いた事で、今後は海上で回収された早産胎仔の長時間搬送など、将来的に絶滅危惧種の保全のために活用されることが期待されます。



[画像1: https://prcdn.freetls.fastly.net/release_image/24500/42/24500-42-8411a2294e1df78cf738f0bff0eae8d5-3900x2925.jpg?width=536&quality=85%2C75&format=jpeg&auto=webp&fit=bounds&bg-color=fff ]
今回、新たに作成した「小型」人工子宮装置の全容

一般財団法人沖縄美ら島財団は、2017年より胎性サメ類の早産胎仔の救命を目的とした人工子宮装置の開発を行なってきました。今回、従来のものより大幅に小型化した装置を新たに作成し、その装置を用いた深海ザメ「ヒレタカフジクジラ」胎仔の育成・人為出産に成功しました。また、この成果を国際学術誌MethodsXにて発表しました。
 従来の装置は非常に大型で、水族館などの施設内での運用に限られていました。本研究で開発した装置は、その仕組みを極限までシンプルにすることで、総重量を20分の1以下まで小型化しました。その結果、人力での移動や、小型船や自動車などに積載可能なサイズとなり、施設内での運用だけでなく野外での使用が初めて可能になりました。本技術は、海上で回収された早産胎仔の長時間搬送など、将来的に絶滅危惧種の保全のために活用されることが期待されます。
 なお、本装置は沖縄美ら海水族館(サメ博士の部屋)にて展示中となります。
【本研究のポイント】
1. 携行可能なサイズのサメの人工子宮装置の開発を行なった。
2. 従来の装置の仕組みを極限までシンプルにしたことで、大幅な小型化に成功した。
3. 本装置は、これまで不可能だったサメの早産胎仔の長時間搬送などに活用できる。

[表: https://prtimes.jp/data/corp/24500/table/42_1_5759507422ad8f35ee482b1af1c0a1db.jpg ]
論文閲覧はこちら(フリーアクセス)
【研究の背景】
1. 美ら海水族館におけるサメの人工子宮開発
サメは約6割の種類が胎生で、胎仔は数ヶ月~数年の妊娠期間を経て出産します。一般財団法人沖縄美ら島財団の研究チームは、2017年より、母体外で胎仔を育成するための「人工子宮装置」の開発を行なって来ました。その結果、2020年には、独自に開発した装置を用いて、深海ザメ「ヒレタカフジクジラ」の胎仔を5ヶ月間にわたり育成することに成功しました*1。さらに、その翌年には装置で育成したヒレタカフジクジラ胎仔の人為出産に世界で初めて成功しました*2。
*1 概要は公式HPにて掲載
*2 概要は公式HPにて掲載
2. これまでの人工子宮装置の課題
2020年に開発された装置は、サメの血液を模して作成した人工羊水と、良好な内部環境(水質・水温)を維持するための複雑な機構によって構成されており、総重量が1t程度と非常に大型でした。このような大型の装置は、室内に設置して運用する必要があり、搬送に数日かかるような遠隔地で回収された早産胎仔には適用できないという課題がありました。さらに、定期的に必要な人工羊水の交換作業が大掛かりになるという運用上の課題もありました。これらの課題の解決のため、小型の人工子宮装置の開発が求められていました。
[画像2: https://prcdn.freetls.fastly.net/release_image/24500/42/24500-42-636ae9e667a8dc904e6a69a554b08349-1908x1348.jpg?width=536&quality=85%2C75&format=jpeg&auto=webp&fit=bounds&bg-color=fff ]
円筒ガラス容器に入れた胎仔を、人工羊水で満たした水槽に収容する(A)水槽を冷蔵庫に入れ、12℃で維持する(B)。

1.究極の単純化が、小型化の鍵
 今回、装置の設計を根本的に見直し、
(1)最小限の人工羊水で育成する。
(2)水濾過フィルターを省略する。
(3)水温維持に小型冷蔵庫を利用する。
などの大胆な変更を加えました。その結果、装置の総重量は約40kgまで小型化することができ、人力での移動や、自動車や小型船舶への積載が可能になりました。
 
2.装置の有効性を確認
 装置の有効性を検証するため、2023年12月から2024年2月にかけて、ヒレタカフジクジラの胎仔6尾を新装置で育成しました。その結果、胎仔は出生サイズまで成長し、人為出産を迎えました。
[画像3: https://prcdn.freetls.fastly.net/release_image/24500/42/24500-42-031e55d14f3dce926e098eb0b5e3a8dd-3900x2925.jpg?width=536&quality=85%2C75&format=jpeg&auto=webp&fit=bounds&bg-color=fff ]
育成中の深海ザメ(ヒレタカフジクジラ)の胎仔

【本成果の意義】
本研究は、これまで不可能だった胎仔の長時間搬送への道を開いたという点で画期的であると言えます。これは、人工子宮技術を野生個体の保全のために利用していく上で重要なステップになると考えられます。今後、さらに装置の改良を進め、水族館における獣医療の充実と、野生個体の保全のために寄与していきたいと考えています。

■代表研究者プロフィール■
冨田武照(とみた たけてる)
2011年、東京大学大学院理学系研究科博士課程修了。フロリダ州立大学研究員等を経て、2015年より当財団総合研究所所属。主査研究員。専門はサメの機能形態学。

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