空前のカワウソブーム!マスメディアとSNSの情報発信が需要の引き金に
PR TIMES / 2018年10月19日 15時40分
TRAFFICが日本のカワウソ取引の緊急評価報告書を公開
公益財団法人世界自然保護基金ジャパン(東京都港区 会長:末吉竹二郎 以下、WWFジャパン)内の野生生物取引監視部門であるTRAFFICは、日本のカワウソブームにともなう密輸急増を受け、その取引実態に関する調査を実施しました。結果を報告書『Otter Alert: 日本に向けたカワウソの違法取引と高まる需要の緊急評価)』にまとめ、公開いたしました。
[画像: https://prtimes.jp/i/18383/44/resize/d18383-44-592972-2.jpg ]
日本国内における取引の実態について、2018年1月から6月にかけて調査を実施し、同時に、日本におけるカワウソのペットとして需要の高まりの背景についても調べました。
2000年から2017年にかけて起きた、日本が関係する東南アジアでの押収事例などを調べたところ、少なくとも7件で52頭のカワウソが日本を密輸の目的地とし、そのうち17頭はコツメカワウソでした。
2017年の3件はすべて日本人がタイで逮捕されており、各々10頭を超え、転売をねらった組織的な密輸が背景にあると推察されました。タイと日本の市場での価格差は300倍もあります。
国内での販売については、確認できただけで12人の販売者が少なくとも85頭を販売していましたが、74頭(87%)はコツメカワウソであり、広告における価格は80万円~162万円。
5年で約2倍になり、高騰しているとの証言も得ました。
こうした違法取引活発化の背景にカワウソブームがあります。インターネットでの検索ワードを分析したところ、「カワウソ」というワードは2012年以降に増加し、2017年以降は顕著に増加。
2012年以降は「ペット」、2016年以降は「価格」、2017年以降は「カフェ」、「選挙」がカワウソというワードとともに検索されていました。
つまり、ペット人気が近年高まっており、カワウソカフェや人気投票である「カワウソゥ選挙」などの企画がブームを引き起こしていることがわかりました。
「カワウソカフェ」について調査したところ、いずれも2015年以降に開業し、少なくとも10ヶ所で、コツメカワウソばかり32頭が展示されていました。
そのうち、22頭(69%)が2017年以降に生まれた若い個体であり、しかも、店員への聞き取りからは出所に関して確かな情報は一件も得られませんでした。
また、個人の飼育するカワウソに関する投稿がSNSで盛んになされており、最高で75万を超えるフォロワーを有するアカウントがありました。
7人の飼育者がカワウソの購入動機を明らかにしており、うち4人が特定のテレビ番組の影響を受けたと述べました。
日本テレビのこの人気番組は、芸能人が長期にわたり、カワウソと旅行したり、飼育したりする内容であり、マスメディアがカワウソの認知度と人気を高め、ペットとして飼育しやすいという誤った認識を広めている可能性が指摘できます。
以上のことを踏まえ、今回、TRAFFICでは、以下のような提言をいたします。
急激な需要の増大がペット市場での価格高騰を引き起こし、東南アジアでの安価な個体の入手と密輸を刺激している可能性があります。
特に、カワウソを擬人化し、飼いやすいと誤解させるテレビ番組、カワウソカフェ、カワウソゥ選挙、飼育者によるSNS投稿などは、需要を大きく昂進させたと思われます。
これ以上の需要拡大に歯止めをかけるために、マスメディアやSNSプラットフォームは絶滅危惧種に関する情報発信がおよぼす影響について自ら評価し、自主的に規制する方針を策定するよう提言します。
また、密輸個体を押収した事例では確実に起訴に持ち込み、罰則を科すことで、違法取引を撲滅することが求められます。
「種の保存法」は、ワシントン条約附属書I掲載種しか対象としていないため、附属書IIのコツメカワウソを違法取引から保護する法的手段が存在しません。
TRAFFICは、国内法で保護されていない種の国内取引を規制する新たな法制度を検討し、かつ動物愛護法の下でトレーサビリティを義務とし、有効なシステムを構築することを政府に提言します。
その他の提言の全体および詳細は報告書本体をご参照下さい。
報告書『Otter Alert: 日本に向けたカワウソの違法取引と高まる需要の緊急評価』
https://www.wwf.or.jp/activities/data/20181019_wildlife01.pdf
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