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海外交通・都市開発事業支援機構(JOIN)は、ミャンマーの問題事業から責任ある撤退をすべきーNGO7団体が声明を発表

PR TIMES / 2024年11月28日 13時36分

JOINによるミャンマー軍を利するYコンプレックス事業での損失が109億円に上ることが明らかに



[画像1: https://prcdn.freetls.fastly.net/release_image/106253/46/106253-46-9e12bda8d4ca9ad76e13c1529ef54ce9-1920x1080.jpg?width=536&quality=85%2C75&format=jpeg&auto=webp&fit=bounds&bg-color=fff ]


 株式会社海外交通・都市開発事業支援機構(JOIN)は、2023年度決算で当期純損失が約799億円にのぼると2024年6月に発表しました。損失のうちの約179億円は、ミャンマーでの都市開発3事業で計上されていますが、その一つ、ヤンゴン博物館跡地開発事業(通称、Yコンプレックス)の損失が約109億円と最大です。
 Yコンプレックス事業はミャンマー陸軍が所有する土地に建設され、その賃料は、米英加の制裁対象であるミャンマー兵站局に支払われています。ミャンマー軍はクーデター以降、民間人を含むおよそ6,000人を殺害するなど重大な人権侵害に関与しています。これまでも市民グループはJOINに対し、Yコンプレックス事業からの撤退を求めてきましたが、JOINも、所管する国土交通省もそれには応えてきていません。加えて、JOINの今後について提言をまとめている有識者会議では、国連「ビジネスと人権指導原則」の示す、事業活動に関して人権を保護する国家の義務、及び企業の責任の問題は全く俎上に上がりませんでした。
 JOINと国土交通省は、このYコンプレックスの支援決定から損失に至る経緯を含めた最新の状況を公表し、責任の所在を明らかにすべきです。また、日本の国民をミャンマー軍への間接的な支援に巻き込むこのYコンプレックス事業から撤退すべきであると、私たち市民グループ7団体は改めてここに強く主張します。

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2024年11月28日
【声明】
海外交通・都市開発事業支援機構(JOIN)のミャンマー軍を利するYコンプレックス事業での損失が109億円に上ることが明らかに
JOINは、ミャンマーの問題事業から責任ある撤退をすべき
アーユス仏教国際協力ネットワーク
アジア太平洋資料センター(PARC)
国際環境NGO FoE Japan
国際人権NGOヒューマンライツ・ナウ
日本国際ボランティアセンター(JVC)
武器取引反対ネットワーク(NAJAT)
メコン・ウォッチ

株式会社海外交通・都市開発事業支援機構(JOIN)は国土交通省が所管する官民ファンドですが、「官民」とは名ばかりの存在です。現在公開されている2024年3月末の株主情報では、民間出資は全体の2%にも満たない約60億円しかありません。一方、国の財政投融資特別会計からの支出が2,700億円と資産の98%以上を占め、実質的には公的資金で運用されているファンドと言えます[1]。6月にJOINは、2023年度決算における当期純損失が約799億円に上ることを明らかにしました。うち約179億円がミャンマーでの都市開発3事業で計上された損失でした[2]。

国土交通省はJOINの多額の損失計上を踏まえて、金融の専門家などからなる有識者会議を設置、会議ではJOINの役割、在り方、経営改善策等を議論しています[3]。その第3回会合(2024年10月3日開催)で公開された資料では、ミャンマーでの3事業の一つ、ヤンゴン博物館跡地開発事業(通称、Yコンプレックス)の損失が約179億円のうち約109億円にも上ることが記載されています。損失のうち出資分が約46億円、また約63億円が事業に融資した銀行(三井住友銀行、みずほ銀行)に対する債務保証です[4]。この保証額はドル建てであったため、所管する国土交通大臣が2017年当初認可した約41.8百万ドルは当時のレートで約47億円でしたが、損失計上時には円安で約63億円となり認可時の額を大幅に超え、JOINの損失を増加させる結果となりました。
[画像2: https://prcdn.freetls.fastly.net/release_image/106253/46/106253-46-13b775f218ee6a93f7c0ca79d366af52-1600x1068.jpg?width=536&quality=85%2C75&format=jpeg&auto=webp&fit=bounds&bg-color=fff ]
建設中のYコンプレックス ミャンマーナウ提供

JOINのミャンマー事業への投資は、日本の国民に損失を与えるだけでなく、ミャンマーでの人権侵害にも関係しています。

Yコンプレックス事業はミャンマー陸軍が所有する土地で実施されており、その賃料は、日本企業とともに事業会社に出資する現地企業Ayeyar Hintharの子会社を通し、ミャンマー兵站局に支払われていることが明らかになっています[5]。兵站局は2021年12月10日、米国、英国、カナダの制裁対象となっています[6]。事実、ミャンマー軍政は2021年2月の未遂クーデター以降、現在確認されているだけでも民間人を含むおよそ6,000人を殺害し、2万人以上を不当に拘束しています[7]。また、ミャンマー軍と少数民族武装勢力との戦闘などの影響で、国内避難民が300万人以上に達しています。

さらに、2024年7月18日の東京新聞の報道によれば、JOINの担当者は「ミャンマーで総選挙が行われれば情勢が変化する可能性があったため、22年度までは損失として計上しなかった。23年8月までに実施するとされた総選挙が延期されるなど、回収の見込みが立たないことから今回、損失として計上し、公表した」と述べています[8]。また、有識者会議に提出された資料でも「現地情勢が回復すれば、JOINとしては、共同出資者たる日本企業とともに、状況を見ながら、事業の実現や事業価値の向上に取り組むこととしている」としており[9]、Yコンプレックスなどへの投資が失敗ではなく、事業が再開できると受け取れる説明をしています。つまり、JOINはミャンマーで選挙が行われれば、Yコンプレックスなどの建設を再開できるという認識でいるのです。

JOINのこの考えは受け入れ難いものです。ミャンマー軍は、自由で公正な選挙を行おうとしているのではなく、自らの体制を正当化するために「選挙」と称するものを強行しようとしているのです。このことは、2015年以降の政権与党であり、国民の高い支持を受ける国民民主連盟(NLD)を2023年3月に政党登録抹消[10]、つまり事実上の解党に追い込んだことからも明らかです。さらに、今年5月の時点で、軍の安定した支配下にある郡とその人口は、国土の14%、人口比率で32%にしかならないという分析[11]も出ています。

現在、日本を含めミャンマー軍の主導する体制を正式な国家として承認した国はなく、仮に軍が選挙と主張するものを実施するにしても、その結果を認める国はミャンマー軍を支持する一部の国だけになり、国際的にもミャンマーの市民にも容認されるものにはなり得ません。さらに、仮に日本政府が「選挙」を容認したとしても、Yコンプレックスが陸軍の土地に建設されており、賃料が兵站局に支払われることで、事業がミャンマー軍を利する事実は変わりません。

日本の市民グループはYコンプレックスに関し、複数の要請書や声明を発出し、撤退を求める署名活動も行ってきました[12]。しかし、これまでJOINも所管する国土交通省もそれに応えてきませんでした。また現在、JOINの今後について提言をまとめている有識者会議では、事業活動に関して人権を保護する国家の義務及び企業の責任の問題は全く俎上に上がってはいません。これは、「ビジネスと人権に関する国別行動計画」を2020年10月に、「責任あるサプライチェーン等における人権尊重のためのガイドライン」を2022年9月に発表している、国連ビジネスと人権に関する指導原則の実施を推進すべき日本政府の政策とも明確に相反するものです。

JOINと国土交通省は、このYコンプレックスの支援決定から損失に至る経緯を含めた最新の状況を公表し、責任の所在を明らかにすべきです。また、日本の国民をミャンマー軍への間接的な支援に巻き込むこのYコンプレックス事業から撤退すべきであると、私たちは改めてここに強く主張します。撤退にあたっては軍を利することがないように方策を講じることは言うまでもありません。
________________
[1] JOIN. 「株主情報(2024年3月末)」(2024/11/1閲覧)
https://www.join-future.co.jp/about/shareholders/
[2] JOIN. 「補足資料:2023年度決算について」(2024/11/1閲覧)
https://www.join-future.co.jp/about/financial-statements/pdf/about-the-settlement_2023.pdf
[3] 国土交通省.「海外交通・都市開発事業支援機構(JOIN)の役割、在り方、経営改善策等に関する有識者委員会」について. (2024/11/1閲覧)
https://www.mlit.go.jp/kokusai/kokusai_tk1_000124.html
[4] JOIN. 「資料6:検証3.(ミャンマー都市開発3事業)」(2024/11/1閲覧) https://www.mlit.go.jp/kokusai/content/001766358.pdf
[5] "B.O.T System Land Lease Agreement," Appendix II, Environmental Impact Assessment Y COMPLEX PROJECT Dagon Township, Yangon, dated July 2019. (2024/11/1閲覧)
https://ayeyarhinthar.com/pdf/Environmental%20Impact%20Assessment%20Report%20of%20Y%20Complex%20Project.pdf
[6] メコン・ウォッチ.「プレスリリース:日本の官民ミャンマー事業 Yコンプレックスの契約相手が米・英・加の制裁対象に」.
http://www.mekongwatch.org/PDF/pr_20211213.pdf
[7] 政治囚支援協会. https://aappb.org
[8] 東京新聞.「なにが巨額損失を招いたのか…官民ファンドJOINが赤字955億円 ミャンマーで事業中断、安倍氏案件で大損」(2024.7.18)
https://www.tokyo-np.co.jp/article/340698
[9] JOIN. 「資料6:検証3.(ミャンマー都市開発3事業)」(2024/11/1閲覧)
https://www.mlit.go.jp/kokusai/content/001766358.pdf
[10] 外務省. 2023年3月29日の発表。「ミャンマー情勢(国民民主連盟(NLD)政党登録抹消)(外務報道官談話)」
https://www.mofa.go.jp/mofaj/press/danwa/page1_001555.html
[11] Special Advisory Council of Myanmar. Briefing Paper: - Effective Control in Myanmar 2024 Update.
https://specialadvisorycouncil.org/wp-content/uploads/2024/05/SAC-M-Effective-Control-in-Myanmar-2024-Update-ENGLISH.pdf
[12]【要請書】株式会社海外交通・都市開発事業支援機構(JOIN)に関する情報公開と人権配慮に関する制度整備を求めます(2024/8/22)
http://www.mekongwatch.org/PDF/rq_20240822.pdf
オンライン署名. #ミャンマー軍の資金源を断て 日本政府にミャンマー軍を利するODAと公的資金供与事業の停止を求めます.(2024/8/20)
https://chng.it/hZd6LSXjFG
【要請書】ミャンマー軍を利するODAと公的資金供与事業の停止を日本政府に求めます (2023/12/1)
http://www.mekongwatch.org/PDF/rq_20231201.pdf
【公開書簡】米国がミャンマー軍政の国防省を制裁対象に 日本政府は直ちにYコンプレックス事業からの完全撤退をすべき (2023/7/25)
http://www.mekongwatch.org/PDF/rq_20230725_Ycomplex_J.pdf
【プレスリリース】ミャンマー:国軍によるクーデターから1年 日本政府に署名13,201筆を提出「ミャンマー国軍の暴挙を止めるために、日本からの国軍への資金の流れを止めてください」 (2022/1/22)
http://www.mekongwatch.org/PDF/pr_20220131.pdf

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