日本メナード化粧品、表皮のターンオーバー速度の個人差を見極めるDNAの特徴を発見
PR TIMES / 2023年8月24日 13時45分
日本メナード化粧品株式会社(愛知県名古屋市中区丸の内3-18-15、代表取締役社長:野々川 純一)は、肌の新陳代謝(表皮のターンオーバー)の速さに個人差があることに注目し、約600人の遺伝情報と角質細胞の面積の関連解析から、表皮のターンオーバーに関わるDNAの特徴(SNP※1)を発見しました。このようなDNAの特徴を解析することで、個人ごとの表皮のターンオーバー速度を見極め、将来的な肌悩みの現れやすさや最適なスキンケア方法を導き出すことができると考えられます。今後、本研究成果を、個人の肌の老化リスクを予測する技術の開発などに応用し、個人の肌に合った美容提案や商品開発につなげていきます。
[画像1: https://prtimes.jp/i/48666/56/resize/d48666-56-dce5b6478250268fe2a3-0.png ]
肌質には個人差があり、この個人差には紫外線などの「環境要因」だけでなく、個人が生まれつき持っている「遺伝的要因」が関与していることが知られています。これまでにメナードでは、シミのできやすさやシワのできやすさなど様々な肌質に対して個人差を生み出す「遺伝的要因」について研究を進め、それぞれの肌質に関与するDNAの特徴(SNP※1)を見出してきました。
今回、約600人の日本人男女を対象に、遺伝情報の解析と、表皮のターンオーバー速度の指標である角質細胞の大きさを組み合わせた関連解析を行いました。その結果、表皮のターンオーバーと関連性が高いSNPとして『rs2278431』を発見しました。表皮のターンオーバーの遅延は、肌のくすみやゴワつきにつながるほか、メラニンが排出されにくくなることでシミにもつながるなど、様々な肌悩みに関与します。そのため、rs2278431のDNA配列を調べることで、表皮ターンオーバー速度の違いに起因する肌悩みの現れやすさが予測できると考えられます。
本研究成果は、個人の表皮のターンオーバー速度について遺伝的傾向を予測することで、多様な個人の肌質に合った化粧品や美容方法の提案などへの応用が期待されます。
なお、本研究成果は、国際科学誌「Experimental Dermatology」オンライン版に掲載されました。
※1 Single Nucleotide Polymorphism、一塩基多型。DNA配列の個人差のうち、一つの塩基のみが人によって異なっている部分。
<参考資料>
1.表皮のターンオーバーについて
肌の最も外側に存在する表皮は、外部の刺激から肌を守る、肌内部から水分を逃さないようにするといった役割を担っています。表皮は基底層、有棘層、顆粒層、角質層の4層から構成されており、最も下層の基底層に存在する角化細胞が生まれてから最外層で垢となって剥がれ落ちるまでの過程を「表皮のターンオーバー」と呼びます。表皮のターンオーバーの周期が遅延すると、バリア機能が低下し肌あれなどの原因となるほか、メラニンが排出されにくくなることによりシミの原因にもなります。また、表皮のターンオーバーが遅延して古い角質細胞が肌に蓄積することにより、くすみやゴワつきにもつながります。
[画像2: https://prtimes.jp/i/48666/56/resize/d48666-56-b18c909ae1604e4e37a9-4.png ]
2.表皮のターンオーバーに関連するSNP『rs2278431』
日本人男女606人(20代~70代、平均年齢41.1歳)を対象に、個人の遺伝情報と表皮のターンオーバー速度との関連を調査しました。遺伝情報は唾液サンプルよりDNAを抽出し、約69万箇所のDNAの特徴(SNP)を解析しました。表皮のターンオーバーの速度は、紫外線の影響が少ない前腕内側からテープストリッピングにより角質細胞を採取し、その大きさを測定することで推定しました。一般的に、表皮のターンオーバーの速度と角質細胞の大きさに関連があることが知られており、表皮のターンオーバーの速度が遅いほど角質細胞が大きくなることがわかっています。
解析の結果、表皮のターンオーバーと関連性が高いSNPとして『rs2278431』を発見しました。rs2278431には、GGタイプ、AGタイプ、AAタイプの3つのタイプがあります。このうちGGタイプ<AGタイプ<AAタイプの順に角質細胞のサイズが大きくなっていました。すなわち、rs2278431がGGタイプの人は表皮のターンオーバーが遅延しにくく、AAタイプの人は遅延しやすいと考えられました。また、rs2278431の近傍に存在するSPINT2遺伝子が表皮の角化細胞の細胞増殖能に影響を及ぼすことも確認しました。そのため、SNPの違いが細胞の増殖に関与し、その結果ターンオーバー速度の違いを生じさせると考えられました。
[画像3: https://prtimes.jp/i/48666/56/resize/d48666-56-7ee802981010e7856b1b-3.png ]
3.SNPについて
DNAは、アデニン(A)、チミン(T)、シトシン(C)、グアニン(G)という4種類の塩基が並んでできています。この塩基の特定の並び方が遺伝情報となります。ヒトの遺伝情報は約30億個のDNAの塩基配列で構成されており、この塩基配列には個人間で差があります。特に一つの塩基配列のみが人によって異なっている部分をSNP(Single Nucleotide Polymorphism、一塩基多型)と呼びます。ヒトのゲノムの中には約1000万箇所のSNPがあると推定されており、その塩基配列の違いが体質や病気のかかりやすさなどの個人差に関わると注目されています。SNPには、一つひとつにrs番号という世界共通のIDが割り振られています。
メナードはこれまでに、シミのできやすさやシワのできやすさなど様々な肌質に対して個人差を生み出す「遺伝的要因」について研究を進め、それぞれの肌質に関与するSNPを見出しています。
[画像4: https://prtimes.jp/i/48666/56/resize/d48666-56-b12b02014bbb096571e4-4.png ]
4.掲載雑誌・タイトル・著者について
雑誌名: Experimental Dermatology
論文タイトル: Genome-wide association studies in the Japanese population identified genetic loci and target gene associated with epidermal turnover
掲載アドレス: https://doi.org/10.1111/exd.14908
著者:奥野 凌輔1, 2, 井上 悠1, 2, 長谷部 祐一1, 2, 五十嵐 敏夫1, 堀田 美佳1, 2, 山田貴亮1, 長谷川 靖司1, 2
所属:1 日本メナード化粧品株式会社 総合研究所
2 名古屋大学大学院 医学系研究科 名古屋大学メナード協同研究講座
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