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住友重機械と大阪大学大学院医学系研究科が世界初、陽子線FLASH照射による細胞保護効果を細胞試験レベルで観測

PR TIMES / 2024年10月29日 17時15分



[画像: https://prcdn.freetls.fastly.net/release_image/100192/68/100192-68-3bed0172fa78fe05c4feb9247065990d-1920x1280.jpg?width=536&quality=85%2C75&format=jpeg&auto=webp&fit=bounds&bg-color=fff ]


住友重機械工業(本社:東京都品川区、代表取締役社長:下村真司、以下「当社」)の佐々井健蔵 主任技師、大阪大学大学院医学系研究科 放射線治療学講座の小川和彦 教授らの研究グループ(以下「研究グループ」)は、「陽子線を用いた超短時間・高線量照射で細胞生存率が増加すること」を世界で初めて観測することに成功しました。
陽子線による超短時間照射(以下「陽子線FLASH照射」)による細胞生残率の増加は、これまで酸素濃度に関わらず報告がなく、常酸素濃度環境下での陽子線FLASH照射で細胞生残率が増加することは観測されていませんでした。
今回、研究グループは、当社が新しく開発した陽子線治療向け超電導サイクロトロン加速器を用いて高線量を超短時間で照射することで、常酸素濃度環境下の超短時間照射で細胞生残率が増加することを実証しました。これにより、陽子線FLASH照射を利用することで、より副作用の少ない陽子線がん治療への応用が期待されます。

【背景】
放射線治療のひとつである陽子線治療には、陽子線は体内の特定の深さで最も強く作用し、それ以上の深さにはほとんど作用しない「ブラッグピーク」と呼ばれる特性があります。この特性により、深部にある腫瘍に対して高い線量を集中させることができ、がんの放射線治療法のひとつとして注目されています。
しかし、腫瘍の周りにある正常組織へのダメージを抑えるために、正常組織への線量を低減しようとすると、腫瘍への投与線量を妥協しなければならない場合や陽子線治療そのものを断念せざるを得ないケースもあります。陽子線治療の臨床的有用性を拡大するためには、正常組織への線量をさらに低減させる技術が課題となっています。
近年、放射線治療において、超短時間で高線量を照射することによって、腫瘍への治療効果を維持しつつ正常組織へのダメージを抑える保護効果が報告されています。放射線を瞬時に照射することから「FLASH照射」と呼ばれ、世界的に大きな注目を集めています。細胞を使った試験では、細胞生残率の増加が最も典型的な保護効果として観測されています。
これまで、陽子線による超短時間照射では、酸素濃度に関わらず細胞生存率の増加は報告されておらず、常酸素濃度環境下での超短時間陽子線照射でも細胞生存率の増加は観測されていませんでした。高線量の陽子線を超短時間で照射する実験環境は特に国内では整っておらず、一定以上の線量を照射する試みも国内では行われていませんでした。

【実証内容】
当社が開発し、西条アプリケーション開発センターに設置した超電導AVFサイクロトロン加速器および次世代陽子線治療システム試験設備を用いて試験を行いました。これらの設備によって実現された超短時間・高線量の陽子線を細胞に照射し、常酸素濃度環境下の超短時間照射で細胞生存率が増加することを陽子線において世界で初めて観測することに成功しました。
超高線量率のビームは当社のチームにより開発準備および照射され、照射領域の物理的評価、細胞の評価は大阪大学大学院医学系研究科 放射線治療学の研究グループによって行われました。その結果、線量率250Gy/sかつ線量20Gy以上において、研究に使用した細胞群にて生存率が増加することが観測されました。

【社会的意義】
本研究の成果により、陽子線FLASH照射が保護効果を引き起こすメカニズムの理解が深まり、将来的にはより副作用の少ないがん治療法への応用が期待されます。陽子線FLASH照射では、腫瘍への高い線量集中性という陽子線の物理的特性と、正常組織へのダメージ軽減する保護効果の生物学的特性が組み合わさることで、より高いがんへの治療効果と副作用の低減が期待されます。

なお、本研究成果は2024年10月1日の英文科学誌「Anticancer Research」に掲載されました。

以上

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