トルコへ逃れたシリア難民の過酷な現実
PR TIMES / 2014年11月20日 18時32分
子どもが国境で撃たれる
紛争でシリアを逃れた人は320万人にのぼる。その半数を受け入れているのがトルコだ。しかし、最低限のニーズを満たすだけの体力がトルコにはなく、難民は厳しい生活を余儀なくされている。これまでに、難民受け入れにトルコ政府が費やした費用は約4600億円。国連はトルコにいるシリア難民救済のため、2014年の財政拠出目標を570億円と定めたが、これまでのところ、わずか28%しか集まっていない。豊かな国々が追加支援を出し渋り、難民受け入れにも難色を示しているのは、嘆かわしいことだ。
トルコへのシリア難民が増大する事態に国際社会が手をこまねいている間に、かつてないほど多数の難民が国境での追い返しや発砲を受け、数十万人が極貧状況に置かれている。
アムネスティは、過去3年半の間に保護を求めてトルコに逃れてきた160万人が人権侵害に直面している事態を報告書にまとめた。報告書では、この難民危機に対して世界の各国が応分の財政的責任を果たすことに躊躇するという嘆かわしい状況も明らかにしている。
トルコは建前としてシリアとの国境を開いているが、紛争による荒廃から逃れようとする多くの人びとにとっては、現実は厳しかった。 多くの人たちが国境で足止めを食い、発砲された人もいる。
■国境での発砲
トルコは、シリア難民に対して国境の検問所を開放してきた。しかし実際に開かれているのは、900キロある国境沿いで、2カ所に過ぎない。この2カ所の検問所でさえも、パスポートを所持していなければ、緊急の治療や人道上の必要性がない限り、入国を認めない。
さらに、ほとんどの難民にとって、通行可能な検問所は遥かに遠い。そのため、しばしば越境請負業者を使って、困難で危険な紛争地の不法ルートを選ぶという手段を取らざるを得なくなる。そのルートではしばしば武装勢力に出くわす。
アムネスティは、昨年12月から今年8月までの間に、不法越境で国境警備隊に17人が銃殺されている事実を把握している。紛争を逃れてきて必死に安全を求めてきた人に銃を向けるとは、何とも卑劣である。
今年5月19日の未明、アリ・アジマー君(14歳)はトルコとの国境付近まできて頭部に銃弾を受けた。父親の話では、アリさんは9人の難民と一緒だった。国境までおよそ10mのところでトルコ人の声が聞こえた。怖くなったアリ君は、引き返そうとしたところを、側頭部を撃たれた。事前の警告や呼びかけ、空砲はなかった。この大けがで両目とも失明してしまった。
■国境を超えても
トルコにいる難民160万以上に対して、生活必需品がそろったキャンプに住んでいるのは、わずか22万人だ。130万人以上は自力で生活する方法を見つけなければならない。政府筋によると、公的な難民キャンプ以外にいる難民で人道機関や団体の支援を受けているのは、わずか15%でしかない。(写真はキャンプに入れず、外で何週間も何カ月も待つ難民)
最低限の食糧や場所を確保するために、親は子どもを働かせるなどの窮余の策でやりくりしようとしている。
2年前、イブラヒム君(10歳)とその家族はアレッポを脱出してトルコに入り、キリスという国境の町で暮らしている。 父と息子は生活のためにゴミ箱からプレスチックを探し集め、プラスチック500グラムで50セントの収入を得ていた。「毎朝6時に起きて、作業が終わるのが午後4時ごろ」とイブラヒム君は話す。ときに時間があると、地元の学校で読み書きを教わっている。兄弟10人のうち学校に行っているのは彼だけだ。
紛争の惨禍を逃れてきたほとんどのシリア難民は、希望のない厳しい現実にぶち当たっている。彼らは国際社会に見捨てられている。世界の裕福な国々は、こと難民への資金支援や定住先の提供となると、腰が重い。
難民の97%を受け入れているのは、トルコ、レバノン、ヨルダン、エジプトなどの近隣諸国だ。
アムネスティではシリア難民の受け入れを先進諸国に訴えるキャンペーンを展開します。
日本での展開に先立ち、シリア難民救済イベントを、12月14日(日)東京・秋葉原で開きます。
当日はジャーナリストによるトークとチャリティ・ブレスレットづくりを行います。
詳しくはこちらから
△https://www.amnesty.or.jp/get-involved/event/2014/1214_4978.html
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