ヒアルロン酸が紫外線ダメージをブロックするメカニズムを発見
PR TIMES / 2020年7月31日 18時45分
―超低分子ヒアルロン酸が日中に外で受けたダメージを軽減する―
ロート製薬株式会社(本社:大阪市、社長:杉本雅史)は、肌本来の機能に働きかけるスキンケアへの挑戦としてヒアルロン酸の機能性に関する研究を進めています。今回、愛媛大学大学院医学系研究科皮膚科学との共同研究により、超低分子ヒアルロン酸(HA4)が、紫外線ダメージを受けた表皮細胞が分泌する物質(DAMPs)による表皮への影響を軽減することを明らかにしました。
なお、本研究内容は2020 SID Annual Meeting Virtual Conference(2020年6月13日~16日、オンラインにて開催)で発表しました。
※DAMPs:Damage Associated Molecular Patterns=ダメージ関連分子パターン。細胞がダメージやストレスを受けた際に放出される物質の総称。中には炎症を増悪化させる引き金となるものも含まれる。
【研究成果のポイント】
◆ HA4が紫外線によって引き起こされる表皮の炎症増悪化を抑制することを発見
◆ HA4は特にDAMPsが引き金となる炎症を抑制することを解明(図1)
[画像1: https://prtimes.jp/i/44879/74/resize/d44879-74-400448-0.jpg ]
【今後の展望】
今回の発見から、紫外線ダメージを受けた肌に対する効果はもちろん、外部刺激や加齢など、様々な要因で起こる自然免疫受容体(TLR)を介した微弱な炎症に対しても、HA4が有用である可能性が考えられます。また、HA4による日常的なケアにより、健康な肌を維持することが期待されます。今後も多種多様なヒアルロン酸の機能性研究を続け、お客様の美と健康の増進に貢献してまいります。
<研究成果の詳細>
1.研究の背景
これまでヒアルロン酸は化粧品を中心に配合されており、高い保湿作用があることが知られていました。一方で、近年生体内では様々な大きさ(分子量)のヒアルロン酸が存在し、それらが細胞に働きかけることで皮膚の恒常性を維持していることが明らかにされています。皮膚は日常的に紫外線を始めとする外部刺激に晒されており、その影響を軽減させることが健常な皮膚を保つためには重要だと考えられます。
今回の研究では、紫外線ダメージを受けた表皮細胞が分泌するDAMPsの一種であるCalprotectinがTLRを介して皮膚に与える影響に着目しました(図2)。
[画像2: https://prtimes.jp/i/44879/74/resize/d44879-74-887362-1.jpg ]
2.研究成果
紫外線を照射した表皮角化細胞を用いた手法により、DAMPsの1種であるCalprotectinの分泌が濃度依存的に亢進することが分かりました(図3)。また、Calprotectin添加により、表皮角化細胞は炎症性サイトカインIL-6の分泌を亢進することが分かり、HA4はその作用を濃度依存的に抑制することが分かりました(図4)。さらに、これまでの知見から、Calprotectinによって引き起こされる炎症を抑制する作用機序としてTLRの関与が考えられたため、TLRを介した炎症に寄与する細胞内シグナル経路に着目して検討を行ったところ、TRAF6タンパク質の量を濃度依存的に抑制することが示されました(図5)。
[画像3: https://prtimes.jp/i/44879/74/resize/d44879-74-620713-2.jpg ]
[画像4: https://prtimes.jp/i/44879/74/resize/d44879-74-221605-3.jpg ]
[画像5: https://prtimes.jp/i/44879/74/resize/d44879-74-819444-4.jpg ]
3.結果の考察
本研究成果により、紫外線ダメージを受けた肌に対してHA4を適用することで、その後に起こる赤みなど炎症に繋がるシグナルをブロックすることが示唆されました。また、今回の発見から、外部刺激や加齢など、様々な要因で起こるTLRを介した微弱な炎症に対しても、HA4が有用である可能性が考えられます。
<用語>
※1 超低分子ヒアルロン酸(HA4)
4糖ヒアルロン酸オリゴ糖のこと。生体内には様々な分子量のヒアルロン酸が存在するが、それらと比較して分子量が非常に小さいことが特徴です。これまでに皮膚のヒアルロン酸産生を促進する作用などが知られています。
※2 Calprotectin(カルプロテクチン)
S100A8/A9複合体とも呼ばれ、関節リウマチ、クローン病、潰瘍性大腸炎、アレルギー性皮膚炎などの慢性炎症性疾患の発症に関与することが知られています。
※3 IL-6(インターロイキン-6)
様々な炎症性疾患との関りが知られているサイトカインの1種です。近年では、IL-6の過剰産生が、炎症性サイトカインの異常な増加によって引き起こされる「サイトカインストーム」に関連することが報告されています。
※4 自然免疫受容体(TLR)
細胞の表面や細胞内小器官の膜に存在し、細胞障害や菌由来の糖たんぱく質、ウイルス由来の2本鎖RNAなどの認識に関わっています。
※5 MyD88、TRAF6
自然免疫受容体にリガンドが反応した際の細胞内シグナル経路に関与するタンパク質。共にTLRシグナルの下流に位置し、量的な変化が炎症性サイトカインの分泌量に影響を与えることが知られています。
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