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JCI認定前後における手術時間を比較検証

PR TIMES / 2019年1月10日 15時40分

~ 手術室の患者安全と効率は両立可能 ~

順天堂大学医学部戦略的手術室改善マネジメント講座の天野 篤教授、猪俣 武範助教らの研究グループは、JCI認定※1前後の手術室における安全性と効率の変化を明らかにするという目的で、JCI認定前後における全身麻酔下手術13,228症例の手術時間を検証しました。その結果、JCI認定における国際患者安全目標※2の導入は、手術室において手術効率を損なわず、患者安全の保持が可能なことを明らかにしました。この成果は手術室運営の改善に役立つと考えられ、今後の病院における診療の質と効率の向上に貢献します。本研究結果は学術誌に2018年9月22日付で掲載されました。



本研究成果のポイント


JCI認定前後の手術効率への影響について手術室在室時間を5つに分類して検証した
手術時間および手術室在室時間の延長は認められない
国際患者安全目標の導入は手術室の安全性と効率を損なわない


背景
わが国では、超高齢社会による脳・心疾患などの手術をはじめとした急性期医療の増加と国民皆保険における医療費の増加という問題に直面しています。そのため、急性期医療の有効な提供には、手術室の運営の効率化が必要不可欠になっています。順天堂医院は、「医療の質と患者安全に関する継続的な改善」を評価する国際的な第三者評価機関のJoint Commission International (JCI)認定を2015年12月12日に取得しました。JCI認定を受け、順天堂医院では、JCI認定の遵守事項である患者識別、ハイリスク薬の管理、安全な手術を行うための確認プロセスなど、国際患者安全目標(IPSG)の導入と遵守をしています。今回、研究グループは、国際患者安全目標の導入の手術室における安全性と効率の変化を明らかにすることを目的に、JCI認定前後の手術時間と安全性について比較検証を行いました。

内容
本研究では、JCI認定前後における、全身麻酔下手術の手術室在室時間について検証しました。2014年3月11日から2016年6月12日において順天堂医院にて全身麻酔下手術を受けた13,228例を対象とし、手術室在室時間をプロセス毎の5つに分類し、JCI認定前とJCI認定後において比較、解析を行いました。JCI認定前後において、条件をそろえた比較をするため、年齢、性別、手術の種類でマッチングしたところ、3,222症例が対象として選定されました。手術室在室時間を患者入室時間、麻酔導入時間、手術時間、麻酔覚醒時間、患者退室時間の5つに分類し比較検証しました(図1)。その結果、JCI認定前と比べJCI認定後では、平均患者入室時間が延長(8.2分 vs. 8.5分)し、麻酔導入時間が減少(34.4分 vs. 33.6分)しました。さらに、手術時間と手術室在室時間では、有意差は認められず、むしろ減少傾向にあることがわかりました。以上の結果から、JCI認定後において、国際患者安全目標の導入は患者安全を保持しつつ、手術時間および手術室在室時間は延長せずに手術室の効率を損なわないことが明らかになりました。このことから、JCI認定により導入された国際患者安全目標を遵守した患者安全と手術室の効率の向上の両立は可能であることが示されました。

今後の展開
国際患者安全目標の導入による手順やプロセスの増加により手術時間などが延長するなどの懸念がありましたが、本研究により、患者識別や安全な手術を行うための確認プロセスなどの国際患者安全目標の遵守は、患者安全を配慮しリスクを低減させながらも手術室の効率を損なわないことが明らかになりました。これは、国際患者安全目標の導入により、手術室における業務プロセスの標準化がなされた結果、医療従事者間の業務の可視化やコミュニケーションの円滑化されたため、患者安全に関わるプロセスが増加しても、結果として手術室在室時間には影響を与えなかったと考えられます。今後も、順天堂医院および戦略的手術室改善マネジメント講座では、継続的な診療の質の改善と患者安全の向上に取り組んでいきます。

[画像: https://prtimes.jp/i/21495/90/resize/d21495-90-240315-0.png ]

図1 手術室在室時間
手術室在室時間を、患者入室時間、麻酔導入時間、手術時間、麻酔覚醒時間、患者退室時間の5つに分類

用語解説
*1 JCI認証
JCIとは1994年に設立された非営利組織Joint Commission Internationalに略で、米国の医療分野における「医療の質と患者の安全に関する継続的な改善」に関する第三者評価認証機関。大学病院に対するJCI認定基準は1218項目と多岐に渡り、それぞれの評価項目について審査され、認定基準を満たすことにより、国際基準の医療の質、患者安全を担保した医療施設であると認定される。認定施設は認定後も継続的な改善が求められ、認定機関の3年ごとに再審査を受け、認定されることで認証が更新される。JCI認証は世界的にも審査基準が厳しく、JCIを取得できるのは世界の上位1~2%の病院であると言われている。

*2 国際患者安全目標
国際患者安全目標の目的は、患者の安全における具体的な改善を促進することである。患者識別の精度の向上、医療従事者間の効果的なコミュニケーションの向上、ハイリスク薬の安全な管理、手術などの外科的/侵襲的処置における安全性の向上、医療関連感染のリスク低減、転倒転落による患者の危険リスクの低減などが含まれる。

原著論文
タイトル:「The impact of Joint Commission International accreditation on time periods in the operating room: A retrospective observational study」
タイトル(日本語訳): JCI認定の手術時間への影響: 後ろ向き観察研究
著者: Inomata T, Mizuno J, Iwagami M, Kawasaki S, Shimada A, Inada E, Shing T, Amano A
掲載誌: PLoS One
DOI: 10.1371/journal.pone.0204301

本研究はホギメディカル株式会社との共同研究により実施されました。

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