若者の半数が「何もしたくなくなる、無気力」な気持ちに変化 3人に1人が「関係構築」「対人スキル」への影響を不安視 保護者の8割は子どもからの相談なく、状況を認知できておらず
PR TIMES / 2022年1月6日 11時45分
国内初感染から2年、コロナ禍の生活が若者の将来への不安に与える影響を日本赤十字社が調査
長らく医療現場でコロナと向き合い、また看護学校の運営や、子どもたちの豊かな心を育む活動などの青少年育成事業に取り組む日本赤十字社(本社:東京都港区、社長:大塚義治、以下「日赤」)は、新型コロナウイルスの初の感染者が日本国内で確認されてから2年が経過するタイミングで、日本全国の高校生・大学生(大学院生)・保護者・教員の合計600名を対象に、若者の行動や意識の変化を明らかにする調査を実施いたしました。
2020年4月に発令された緊急事態宣言から「第5波」が収束し宣言解除となった2021年9月までの期間において、生活や学習の環境変化が、近い将来社会に巣立つ若者にどのような影響を与えうるか、「withコロナ」時代を前に中期的な観点での検証が重要となるため、結果をお知らせいたします。
<調査トピックスのハイライト>
2020年4月の緊急事態宣言から2021年9月の宣言解除までの期間におきた若者の心の変化では「何もしたくなくなる、無気力(高校生43.0%/大学生49.0%)」「孤独を感じ1人でいるのが不安(高校生28.0%/大学生35.0%)」という状態になったことが明らかになりました。
また「自分に価値を感じない、他者から必要とされない(高校生27.0%/大学生20.0%)」「生きていることに意味を感じない、死を考える(高校生18.0%/大学生11.0%)」と、精神的に追い込まれた若者も存在しています。
一方保護者は、上記について相談された経験は少なく「相談されたことに当てはまるものはない(高校生の保護者79.0%/大学生の保護者84.0%)」と回答しました。【図1および図2】
近い将来の進学や就職への不安に関して、高校生は「受験や就職活動で苦労するのでは(42.0%)」、大学生は「進学先や就職先で評価されないのでは(31.0%)」という考えを持っていることが分かりました。【図3】
若者が抱く将来の社会生活に対する不安では「新しい人間関係を築くのが困難(高校生30.0%/大学生33.0%)」と最も多く、次いで「対人コミュニケーションスキルが身につかない(高校生30.0%/大学生27.0%)」と回答し、集団生活で得られる経験に関連する声があがりました。【図4】
不安への対処としては「保護者と話し合った(高校生15.8%/大学生23.5%)」「学校の先生と話し合った(高校生15.8%/大学生11.8%)」にとどまりました。【図5】
なお、現状を乗り越える動きとしては、「何とかなる」とできるだけ楽観的に考えるようにした(高校生24.6%/大学生30.9%)」、「これも貴重な体験の1つだ」と学びの機会として考えるようにした(高校生10.5%/大学生22.1%)」と、年齢が高まるにつれ、少しでも前向きにとらえようとする傾向が見られました。【図5】
※以下の図1~5は、若者(高校生+大学生・大学院生)の値で降順
[画像1: https://prtimes.jp/i/33257/97/resize/d33257-97-57a08fd3ffa634358e57-0.jpg ]
[画像2: https://prtimes.jp/i/33257/97/resize/d33257-97-c474bfab618a610be912-1.jpg ]
[画像3: https://prtimes.jp/i/33257/97/resize/d33257-97-51f3a161cb8a6501744c-2.jpg ]
[画像4: https://prtimes.jp/i/33257/97/resize/d33257-97-e70706f62ec27d00676a-3.jpg ]
[画像5: https://prtimes.jp/i/33257/97/resize/d33257-97-bdaaa8936a4c4b6343b7-5.jpg ]
今回の調査では、これから進学や就職などライフイベントを迎える若者が、自身の将来に対して、コロナ禍の生活が既に影響している、また影響するだろうと感じていることが明らかになりました。また一部の若者はとても深刻な状況に陥っている可能性が示唆されました。
自粛生活やリモート中心の学生生活により、通常であれば身につけられたであろう社会性や対人スキル、それによる人格形成への影響など、将来ある若者だからこそ必要な経験が得にくい環境であったことを周囲の人々が考慮し、寄り添いながら見守っていくことが大切になると考えます。
<調査概要>
調査名 新型コロナ禍と若者の将来不安に関する調査
調査対象 日本全国の男女600名
高校生100名/大学生・大学院生100名
高校生の保護者100名/大学生・大学院生の保護者100名
高校教員100名/大学教員100名
調査方法 インターネット調査
調査期間 2021年12月10日~12日
※その他詳細なデータについては、日本赤十字社広報室にお問い合わせください。
※本調査を引用する場合は「2021年日赤調べ」もしくは「日本赤十字社『新型コロナ禍と若者の将来不安に関する調査(2021年)』」と記載ください。
■専門家からのアドバイス
[画像6: https://prtimes.jp/i/33257/97/resize/d33257-97-6a14a4b13d021b4a3548-6.jpg ]
今回の調査から、精神的な苦痛を抱えている高校生・大学生が一定数いることが分かりました。中でも特に多かったのは「無気力」や「孤独」という項目でした。また「死ぬことを考える」という項目に対し、高校生では18%、大学生では11%が当てはまると回答していたことは見逃せません。先が見通せず、将来への不安も大きい中で、頑張ろうとする気力が出ないのは自然な反応でしょう。10代半ばから20代に差し掛かる彼らにとっては、仲間集団との接触がとりわけ重要です。その仲間との直接交流が大きく制限されたことも精神面に大きく影響を与えたと考えられます。
対処法に目を向けると、大学生では「親と相談する」「考え方を転換する」など、多くの人は何らかの対処がとれている様子が見受けられますが、高校生ではその割合が低下します。
これらを踏まえ、学生やその周りの大人へ発信したいメッセージを下記にまとめます。感染症流行下であることに加え、高校~大学の時期は精神的に揺れる多感な時期です。芸能関係など悲しいニュースの報道が自殺行動を誘引するという「ウエルテル効果」(※1)は有名ですが、一方で報道の力は大きく彼らを支えうる(パパゲーノ効果)(※2)こともここに強調したいと思います。
【学生の皆さんへ】
気持ちが辛い時に相談できる人を思い浮かべましょう。その人たちとの交流をこれまで以上に意識してみてください。保健室の先生やスクールカウンセラーをはじめ、専門家と相談もできます(下記「相談窓口のご案内」参照)。
また、あなたのストレス対処法は何でしょうか?人と話す、自分の趣味に没頭するなど様々でしょう。今頭に浮かんだその対処法は、いつかまた困難に直面した時にもきっと役に立ちます。セルフケアに活用しましょう。今は大変なときですが、皆さんにとって成長の糧になりうるときでもあります。
【保護者の方々へ】
結果を見て心配される保護者もきっといらっしゃるでしょう。「あなたは大丈夫なの?」と聞きたくなるかもしれませんが、多くの子どもにとってこの時期は第二次反抗期と重なり、親にはあまり相談したくないと自然に思う時期です。細かく聞こうとしても、逆に反抗的な態度が返ってくるかもしれません。
一方で親に対する甘えも残っていて、身近な大人にいつも味方でいてほしいと感じています。話しかけてきた時にはしっかり聞くという態度を示し、子どもにとっての安全基地でいて下さい。また大人自身の安定も子どもにとって大切です。どうかセルフケアもお忘れなく。
【教職員の方々へ】
生徒・学生に対して、今は大変な時期であると伝え、やる気が出なかったり、不安があったりしても、それは自然な反応であると話してあげてください。そして、子ども達にとって悩むときに話せる人がいること、具体的な相談先を伝えてください。
コロナ禍において、授業の工夫や行事の考え方など先生方も大変なご苦労があったのではないでしょうか。学生・生徒のケアが第一となりがちかもしれませんが、先生方ご自身の大変さもないがしろにせず、仲間内で共有したり相談したりするなどしてみてください。
※1ウェルテル効果: 自殺事例のメディア報道が、その後さらなる自殺関連行動を引き起こしてしまうこと
※2パパゲーノ効果:自殺念慮への対処方法を扱ったり、具体的な相談窓口を情報提供したりすることで、自殺関連行動の予防・減少につながること
■ 相談窓口のご案内
文科省 子どものSOS相談窓口(電話・SNS・LINE) https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/06112210.htm
内閣官房 孤独・孤立対策担当室 あなたはひとりじゃない 18歳以下の皆さんへ https://notalone-cas.go.jp/under18/ 19歳以上の方へ https://notalone-cas.go.jp/
厚生労働省 こころもメンテしよう ~ご家族・教職員の皆さんへ~ https://www.mhlw.go.jp/kokoro/parent/teacher/index.html
■コロナ禍の日本赤十字社・青少年赤十字(JRC)活動(※3)
新型コロナの影響による学校生活の変化は、高校生たちに「孤独感」や、新しい人間関係を築くのが困難という「不安」を与えていることが本調査で分かりました。そのような状況下、日本赤十字社の青少年赤十字(JRC)では、通常行っていた研修やボランティア活動が制約を受ける一方、オンライン上で国内・海外の子どもたちに学びの場を設け、交流をはかっています。
【海外の学生との交流と学び(国際交流会)】
2020年11月、日本の青少年赤十字高校生と17のアジア・大洋州姉妹社の500人以上のこどもたちが、オンライン上で、各国でのコロナの現状や学校の様子等を語り合い、意見交換を行いました。
また、2021年9月には、日本の青少年赤十字高校生と香港のこどもたちがオンライン上で、コロナ禍の学校でのストレスマネジメント、不安への対処法について話し合いました。参加した学生からは「画面を通して交流できるから寂しくないね」「議論した内容を今後の学校生活に活かしたい」という感想があり、コロナ禍での交流は良き機会となりました。
【国内の学生との交流と学び(リーダーシップやオンライン上での協働を学ぶプログラム)】
コロナ禍では、集団生活での学びが減少し、新たな人間関係を築き、協働しながらコミュニケーションをとることに難しさを感じるという声がありました。そこで、青少年赤十字では、全国の子どもたちを対象に、リーダーシップやオンライン上での協働を学ぶプログラムを実施しました。
[表: https://prtimes.jp/data/corp/33257/table/97_1_2b050c06850b2f76bde082e871047d67.jpg ]
青少年赤十字は“今年100周年”
1922年に滋賀県守山市の小学校で初めて「少年赤十字団」が設立されてから、今年で100年を迎えます。災害や感染症など様々な世の中の変化の中、どの時代も、子どもたちが赤十字の理念を通じて、人を思いやる豊かな心を持ち、自主的に行動できるよう活動を続けてきました。今年は100周年事業「未来のあなたへ、やさしさを。」を実施し、今後も、さらに活動を活発化させてまいります。
<日本赤十字社について>
社名 日本赤十字社
社長 大塚義治
事業内容 国内災害救護・国際活動・医療事業・血液事業・青少年赤十字・赤十字ボランティア・救急法等の講習・社会福祉事業・看護師等の教育など
WEBサイト http://www.jrc.or.jp/
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