TPP:日本を含む交渉参加各国は、医薬品の普及流通を損なう協定案の修正を
PR TIMES / 2013年5月14日 14時43分
ペルーの首都リマで現地時間の5月14日、環太平洋パートナーシップ(TPP)協定交渉が再開され、薬の普及流通問題が約1年ぶりに議題に復帰する。国境なき医師団(MSF)は、交渉参加各国に対し、同協定案中の不備を解消しなければ、開発途上国で暮らす数百万人が、手ごろな価格のジェネリック薬(後発医薬品)の入手を阻まれる恐れがあると訴える。
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<手遅れになる前に、有害条項の削除を>
MSF日本の必須医薬品キャンペーン渉外担当、ブライアン・デイビスは、「薬の普及流通に関する実質的な議論は、1年余りにわたり棚上げされてきました。交渉参加国やMSFを含む多くの団体が、協定案が及ぼす悪影響に懸念の声を上げていたにもかかわらずです。リマ会合は、TPP交渉参加国が、手遅れになる前に通商協定案中の有害条項を削除する絶好の機会です」と訴える。
環太平洋地域11ヵ国間の広域通商協定であるTPPの交渉進捗は相変わらず非公開だ。しかし、漏洩した協定案の文書によると、米国が過去に途上国に提案したどの通商協定よりも有害な知的財産保護の条項群を推していることが明らかになっている。
こうした条項案は、ジェネリック薬メーカーの市場参入を著しく阻害し、薬価を高止まりさせるもので、公衆衛生に甚大な影響を及ぼすことになる。例えば、特許付与の基準が引き下げられることで、製薬企業による二次的特許の取得および既存薬の製造独占期間の延長が容易になる。根拠が薄弱または皆無の特許付与に対する事前の異議申し立ては禁止される。また、ジェネリック薬承認に必要な臨床データの独占が容認され、不正な専売状態が正当化されてしまう。
詳細はMSFの「TPP協定-医薬品入手機会への影響」をご覧ください:
http://www.msf.or.jp/news/essential/images/MSF_Briefing_Note_TPP2013_JAP.pdf
<将来に悪い先例を残すな>
MSF日本の事務局長エリック・ウアネスは、「特許権の乱用を規制して、ジェネリック薬の適時調達を保障する各国の裁量が、TPPにより制限される恐れがあります。ジェネリック薬はMSFのような医療提供者にとっても非常に重要なのです。心配なことは、TPPが今後の通商協定の“金科玉条”つまり有害な先例となることです。有害な条項案が今すぐ削除されなければ、後に続く世界的な貿易協定で、さらに多くの途上国が規制の対象となるでしょう」と述べている。
現在の国際ルールでは、各国が医薬品に対して20年の特許期間を認めることだが、同時に、特許の質の管理や、製薬会社による既存薬の二次的特許取得の条件設定に関しては、各国に柔軟な裁量が認められている。製薬会社は、最初に付与される20年の特許期間以上に自社製薬の専売状態を維持するため、様々な手法を考案してきた。いわゆる“エバーグリーニング”という手法だ。セーフガードを設けて、エバーグリーニングを規制し、商業的利益と公衆衛生上の必要の折り合いをつけるか否かは、各国政府の裁量に委ねられなければならない。
一例を挙げれば、インド特許法第3条(d)は、そうした折り合いの実現を意図したもので、エバーグリーニングの抑止策となっている。先発医薬品に対し、明らかな効果の向上がない限り、その先発薬への二次的特許付与を認めていないためだ。スイスの製薬企業ノバルティスが先ごろ敗訴した7年にわたる係争は、インド最高裁にまで至ったが、同法の適用に異議を申し立てるものだった。TPPが現行案のまま批准されれば、各国政府は同様のセーフガードを設ける権利を奪われてしまう。
MSFは日本を含むTPP交渉参加国政府に、医薬品の普及流通阻害につながる条項案の取り下げを求める。
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