LIBOR廃止が迫る中、アジアパシフィック地域は1,900億米ドルに上るタフレガシー債券への対応に直面
PR TIMES / 2021年5月27日 18時45分
ブルームバーグとICMAが共同でまとめた報告書によると、アジア太平洋地域(APAC)の発行体によるタフレガシー債の発行残高合計[1]は1,900億米ドル相当で、560銘柄に上る[2]。その内、日本、中国、オーストラリアの発行体が95%を占める
APACでは、LIBOR連動型債券の新規発行が続いているが、その一部にはフォールバックが組み込まれていない
APACにおいて、フォールバック条項が不十分もしくは全く含まれていないタフレガシー債券は、560銘柄中447で、当該地域の発行体によるタフレガシー債券の発行残高の80%を占める
LIBORからリスクフリーレート(RFR)への移行が迫る中、発行体は迅速な行動が求められる
【2021年5月25日:東京、香港、シドニー、シンガポール】 ブルームバーグおよび国際資本市場協議会(ICMA)が共同で発表したアジア太平洋地域(APAC)におけるタフレガシー債券に関する報告書(https://assets.bbhub.io/promo/sites/12/Guide_to_Tough_Legacy_Bonds_in_Asia-Pacific.pdf)によると、ロンドン銀行間取引金利(LIBOR)からリスクフリーレート(RFR)への移行に伴い、APACの債券市場が混乱する可能性を低減するために、迅速な対応が必要であることが判明しました。
英金融行動監視機構(FCA)によるLIBORの恒久的な廃止とおよび代表性喪失に関する2021年3月5日の発表[3]は、LIBORからの移行を成し遂げるための最終段階であり、世界の異なる管轄区域におけるLIBOR公表の終了日程など、LIBOR廃止に向けた道筋をより明確にしました。
APACで発行済みのタフレガシー債券
本報告書で詳細が定義されている「タフレガシー債券」とは、任意の通貨のLIBORに連動し、当該通貨のLIBORが廃止された後に満期を迎える債券です。
ブルームバーグのデータによると、世界のタフレガシー債の発行残高は8,540億米ドル、4,998銘柄に上ります。APACでは、タフレガシー債の発行残高は1,900億米ドル、560銘柄で、日本、中国、オーストラリアの発行体によるものが、当地域全体の発行額の約95%を占めています。その内、74%は主に金融機関が発行する債券です。
ブルームバーグのデータによると、2021年2月1日時点で、タフレガシー債券560銘柄のうち、フォールバック条項付き債券は309(タフレガシー債券の銘柄数の55%)に上っています。しかし、この内の196(タフレガシー債券の銘柄数の35%)は、「市場の混乱事由」のみをトリガーとしており、LIBORの恒久的な廃止は想定されていません。その他の251(タフレガシー債券の銘柄数の45%)には、フォールバック条項が全く含まれていません。合計すると、447(タフレガシー債券の銘柄数の80%)に上り、かなりの数となります。
ブルームバーグのAPACヘッドであるBing Liは次のように述べています。「今回の報告書が発表されるまでは、一般に公開されているデータは各国の市場やサブ・マーケットからのものであるため、集計や照合が困難でした。今回の新たな広範な分析により、市場参加者および監督当局がアジア太平洋地域のタフレガシー債券の問題に取り組み、一段と効率的な戦略を策定する一助となることを期待しています」
ICMAのアジア事務所代表であるムスターク・カパシ氏は、次のように述べています。「APACにおけるタフレガシー債券の問題は決して小さくなく、タフレガシー債券の80%はフォールバックが不十分であるか、あるいはフォールバックが全く含まれていないという状況です。LIBORからの移行に伴い、発行体及び投資家は、既存のLIBOR連動型債券の各種書面を見直し、どのようなフォールバックが含まれているかを評価し、どのような対応が必要であるかを検討する必要があります」
新規 LIBOR連動型債券
本報告書では、LIBOR移行のリスクを最小化するための最善策はLIBOR連動型債券を新規発行しないことであり、英ポンド及び米ドル市場はこれに対応して、債券の新規発行や証券化のために、関連するRFRを積極的に活用していると指摘しています。しかし、もしLIBOR連動型債券の発行が避けられない場合は、米ドルLIBORと円LIBORの新規発行に対してフォールバックが推奨されています。ところが、APACではLIBOR連動型債券の新規発行が続いており、中には推奨されているフォールバックが組み込まれていないものもあります。2019~2020年で見た場合、120億米ドルに上る新発債にフォールバック条項が含まれていませんでした。
新たなRFR
新たなRFRに関連する方法論や取引手法は順調アップデートされており、RFR指数を公表することは、市場参加者がRFRの複利計算などの手法を活用しやすくする可能性があります。基本的なシステムおよびインフラをアップグレードする必要がある一方、発行体や債券保有者は、金利後決め手法や関連する取引手法を含む新たな金利に概ね対応することが可能となります。
Bing Li は次のように付け加えています。「LIBORからの移行を管理する上で、市場参加者が適切なシステムやインフラを整備することは、タフレガシー債券だけでなく、RFRに連動する新発債や投資にとって不可欠です。それは、LIBOR(銀行間調達金利指標)とRFRには、重要な基本的相違点があるためです。新しい計算モデルや取引手法を取り入れる必要がある一方、取引リスクや流動性リスクを十分に考慮することが求められます」
ソリューション
要約すると、本報告書は、APACのタフなレガシー債の80%は、フォールバックが不十分であるか、全く含まれておらず、APACにおける取引は、適切なフォールバックが行われないままLIBORと連携され続けていることを明らかにしました。
また、タフレガシーのリスクに対処するための解決策として、異なる法制度の下でのコンセント・ソリシテーション(同意勧誘)の可能性、ニューヨーク、日本、英国の法律下でのAPACタフレガシー債への特定の法的介入の適用、2021年末以降に「シンセティック(合成)」ベースの円LIBORをさらに1年間継続する可能性などを提案しています。
報告書の全文は、こちらのリンク(https://assets.bbhub.io/promo/sites/12/Guide_to_Tough_Legacy_Bonds_in_Asia-Pacific.pdf)からご覧いただけます。
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[1] 発行体の属する国や地域の権限によって定義
[2] 本報告書で定義・記載されている、タイプ1、タイプ2、タイプ3のいずれかのフォールバックが組み込まれた債券を含む
[3] LIBORの恒久的な廃止とおよび代表制喪失に関するFCAによる発表(https://www.fca.org.uk/publication/documents/future-cessation-loss-representativeness-libor-benchmarks.pdf)
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