クラブツーリズム×東北大学 共同研究 旅行が認知症予防にもたらす効果を研究
PR TIMES / 2016年7月6日 19時20分
~健康寿命延伸に寄与できる可能性も~
KNT-CTホールディングス株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:戸川和良)のグループ会社であるクラブツーリズム株式会社(本社:東京都新宿区、代表取締役社長:小山佳延、以下クラブツーリズム)と、東北大学加齢医学研究所(宮城県仙台市、所長:川島隆太教授、以下、東北大研究所)は、旅行が脳にもたらす健康作用についての共同研究を、2016年7月より開始いたしました。
本共同研究は、シニア世代の旅行に強みを持つクラブツーリズムと、脳科学分野の世界的権威である東北大研究所が連携し、同研究所の「生涯健康脳」研究の一環として、「旅行」と「認知症予防・抑制」の相関関係について医学的見地から調査・研究するものです。具体的には、東北大研究所の瀧靖之教授とクラブツーリズムが共同で、「旅行に行く頻度の高い高齢者は主観的幸福感やストレスコーピング(対処)能力が高く、認知機能が保たれている。また、旅行前・旅行後で脳に変化があり、主観的幸福感は向上、認知機能は低下抑制が見られる」という仮説を、今後3年間かけて、検証していきます。
事前調査として、2016年5月に45名のお客様を対象にアンケート(以下・事前調査ご参照)を実施したところ、頻繁に旅行に行くほど、あるいは明確な動機を持って旅行に行きその動機が満たされるほど、主観的幸福感が高くなる可能性が示唆されました。
クラブツーリズムは、60歳以上のお客様が参加者の約65%を占める旅行会社であり、旅先で何をするかを重視した目的志向型の「テーマ旅行」を業界の先駆けとして提案してまいりました。本研究を通じて、旅行による健康改善効果や脳・認知機能へのポジティブな影響を科学的に解明することで、お客様の健康や自己実現、社会全体の喜びに資するより質の高い商品やサービスを提供してまいります。共同研究の実施にあたっては「旅行」と「脳の健康」に関連する各種ツアーや講座、イベントなどの実施を予定しております。
【共同研究 実施概要】
<検証項目>
・旅行が高齢者の主観的幸福感やストレスコーピング(対処)能力の向上、脳萎縮の抑制、認知機能の維持に影響
することを、脳科学的に示す。
・旅行の頻度および経験が、脳のどの領域の構造に関連し、どのような認知機能のレベルの維持に関連するかを
明らかにする。
<研究対象、研究デザインおよび採取するデータ(予定)>
・研究対象
60歳以上の日本人(性別は問わず)
・研究デザイン
旅行高頻度群、低頻度群(約30名ずつ)に分け、脳の灰白質体積と認知機能検査の成績、主観的幸福感などの心理指標のデータを比較する。また、クラブツーリズムのツアー参加者を対象に、ツアー参加前・参加後の認知機能検査の成績や主観的幸福感の変化を分析する。
・採取するデータ(予定)
脳MRI、認知機能検査、心理検査、生活情報、旅行に関する情報、社会経済的地位
<共同研究における役割>
・クラブツーリズム
ツアー参加者に対する調査への協力依頼、および「旅行」と「脳の健康」に関連する各種ツアーや講座、イベントなどの実施。
・東北大研究所
調査対象に対する脳MRIや認知機能検査、心理検査等の実施、およびそのデータから旅行の認知機能への維持改 善効果、主観的幸福感の増進などの心理的影響を分析する。
<瀧靖之教授 略歴>
1970年生まれ。医師。医学博士。
東北大学大学院医学系研究科博士課程卒業。
東北大学加齢医学研究所機能画像医学研究分野教授。
東北大学東北メディカル・メガバンク機構教授。
東北大学病院加齢核医学科長としての画像診断、東北大学加齢医学研究所で脳のMRI画像を用いたデータベース を作成し、脳の発達、加齢のメカニズムを明らかにする研究者として活躍。読影や解析をした脳MRIはこれまで に16万人にのぼる。
「脳の発達と加齢に関する脳画像研究」「睡眠と海馬の関係に関する研究」「肥満と脳萎縮の関係に関する研
究」など多くの論文を発表。学術誌はじめ新聞・テレビなど、マスコミでも数多く取り上げられ注目を集めてい る。
クラブツーリズムは、本研究を通じ旅行が健康寿命の延伸に寄与し、旅を通してはつらつたる喜びに満ちた社会が実現できることを期待しています。
【共同研究 実施概要】
1.調査対象:60歳以上の男女45名
当社ツアーの参加履歴がある方を、参加頻度をもとに「高頻度群」「低頻度群」に分類
2.調査実施日:2016年5月23日
3.調査内容:
「旅行に行く頻度」と「個人の主観的幸福感」の関連を調べることを目的としたアンケート調査
以下3項目を質問
(1) 過去5年間の旅行回数
(2) 心理学的に信頼性が確認された質問紙である「主観的幸福感尺度」
→お客様の主観的幸福感(自分は幸せだと思う気持ち)を測定
(3) 旅行の動機
→どのようなモチベーションを持って旅行に行き、そのモチベーションが主観的幸福感と
どのように関連するか調査
4.調査結果:
(1) 旅行回数と主観的幸福感の相関関係
過去5年間の旅行回数と主観的幸福感の関係性を調べる統計解析を行ったところ、「過去5年間の旅行回数が多 いほど、人生に対する『失望感』が低い」という有意な結果が得られました。
『人生に対する失望感』は、主観的幸福感尺度で測定される因子の一つです。「自分の人生は退屈だとか面白 くないと感じていますか」「将来のことが心配ですか」「自分の人生には意味がないと感じていますか」とい う三つの質問に対する回答をスコア化することで測定されます。
この結果から、旅行に行く頻度の高い方ほど、ご自身の人生を肯定的に捉えていることが考えられます。
(2) 旅行の動機と主観的幸福感の相関関係
旅行に対するモチベーションと主観的幸福感の関係性を調べる統計解析を行ったところ、「『現地交流』を動 機として旅行をする傾向が高いほど、人生に対する『満足感』が高い」という有意な結果が得られました。
つまり、「旅先で出会う人々と交流したい」という動機を持って旅行をされる方は、「人生が面白い」「今の 生活は過去よりも幸せ」といった、人生に対するポジティブな気持ち・満足感を高く持っていることが分かりま した。
この他にも、「旅行先の文化や歴史を知りたい」といった、文化の見聞を旅行の動機とする傾向の高い方ほ ど、「人生で起こる困難な状況に自分で対処できる」という自信を強く持っている、という結果も得られま
した。
5.調査結果に関する見解:
上記の結果は、あくまで旅行回数や旅行の動機と主観的幸福感の「関連」を示す結果であり、旅行回数や旅行 の動機が主観的幸福感に「影響」することを示すものではありません。また、なぜ上記のような結果が得られ たのか、考察を深めていく必要があります。
しかしながら上記の結果から、頻繁に旅行に行くほど、あるいは明確な動機を持って旅行に行きその動機が満 たされるほど、主観的幸福感が高くなる可能性が示唆されます。高い主観的幸福感は、長寿命や認知機能の維 持に影響すると考えられています。したがって今回のプレ調査の結果は、旅行が認知症の予防・抑制に効果的で あるという可能性に、期待が持てる結果であると考えられます。
今後、「旅行に行く頻度の高い高齢者は主観的幸福感やストレスコーピング(対処)能力が高く、認知機能が 保たれている。また、旅行前・旅行後で脳に変化があり、主観的幸福感は向上、認知機能は低下抑制が見られ る」という前述の仮説を検証すべく、心理学的な質問紙調査や、認知機能検査、脳のMRI検査等を行い、更に 詳しい調査をしていく予定です。
以上
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