【開催レポート】第44回パラリンピック研究会ワークショップ「パリ2024パラリンピック競技大会日本代表選手団報告会」
PR TIMES / 2024年11月28日 14時15分
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写真左から小倉、藤田、田口、河合、渡
公益財団法人日本財団パラスポーツサポートセンター(以下「パラサポ」、所在地:東京都港区、会長:山脇康)パラリンピック研究会は27日、第44回パラリンピック研究会ワークショップ「パリ2024パラリンピック競技大会日本代表選手団報告会」を開催。講師に日本代表選手団 団長を務めた田口亜希氏、モデレーターに日本福祉大学スポーツ科学部 教授の藤田紀昭氏を迎え、パネリストとして日本パラリンピック委員会 委員長の河合純一氏、順天堂大学スポーツ健康科学部先任准教授の渡正氏が登壇しました。
ワークショップはオンラインで行われ、今夏パリにて開催されたパリ2024パラリンピック競技大会について、田口氏の団長報告、パラリンピック研究会代表の小倉和夫による仏紙報道分析に続き、河合氏と渡氏を迎えて、藤田氏の進行にてパリ大会を振り返るとともに、競技力強化の方策、今後のパラリンピックの在り方などについて討論し、議論を深めました。
登壇者のコメント
■講師:田口 亜希氏(日本代表選手団 団長)
パリ2024パラリンピックの日本代表選手団は、過去最多となる8競技で金メダルを獲得した。日本パラリンピック委員会が掲げるメダル目標は「過去大会の記録を上回ること」。悔しい思いをした選手もいたものの、日本代表選手団全体としては、男女混合の団体競技として車いすラグビーが史上初の金メダル、ゴールボール男子が史上初の金メダルに輝くなど「史上初」が多い大会となった。過去には破ることのできなかったライバルを制したり、パラリンピックレコードを出したり、2連覇を達成した選手もいて、選手たちはそれぞれの壁を越えた。初出場でメダルを獲得した選手も複数おり、4年後の大会につながるのではないか。期間中は競技の応援に行くことが多かったが、選手村ではガラス張りになっている本部にできるだけ滞在するようにして、選手たちとコミュニケーションを図るようにした。
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【田口 亜希(たぐち あき)氏 略歴】
パリ2024パラリンピック競技大会日本代表選手団 団長。日本財団パラスポーツサポートセンター競技団体支援部ディレクター。日本パラリンピック委員会 運営委員。日本オリンピック委員会 理事。
25歳の時、脊髄の血管の病気を発症し、車いす生活に。退院後、ビームライフル(光線銃)射撃を始め、その後ライフル射撃(エアーライフル銃、22口径火薬ライフル銃)に転向。アテネ、北京、ロンドンと3大会連続でパラリンピックに出場し、アテネでは7位、北京では8位に入賞。東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会では、聖火リレー公式 アンバサダー、選手村 副村長を務めた。
■パネリスト:河合 純一氏(日本パラリンピック委員会 委員長)
パリパラリンピックで日本は、東京大会時の13個を上回る、14個の金メダルを獲得し、国別金メダルランキングで10位だった。直近で夏のパラリンピックを開催した都市の国として、パリで成果を出した要因は、国や様々な機関が強化のシステムを整えた結果のたまもの。日本に限らず、パラリンピックを開催する国は、自国の選手が活躍することがパラリンピックの認知に欠かせないという共通認識があると思う。近年の開催国を見ると、自国での大会に向けて強化育成を進め、そこで強化育成の基礎を整えるのみならず、次の大会に向ける目標を設定したり、新たなチャレンジをしたりするなど継続して取り組もうという姿勢が伝わってくる。日本においては、障がい者スポーツが厚生労働省から文科省に移って10年、国の屋内トレーニングセンター・イーストができて5年。パリ大会の好成績は、これまでの施策の成果なのではないか。また獲得したメダル総数は41個だったが、団体競技でメダルを獲得しているのでメダリストは57人いる。選手たちが地域で語ったり、子どもたちと触れ合ったりすることでより多くの価値を生む可能性がある。
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【河合 純一(かわい じゅんいち)氏 略歴】
日本パラリンピック委員会 委員長。日本パラスポーツ協会 常務理事。
バルセロナからロンドンまで6つのパラリンピック大会に出場し、合計で金5個、銀9個、銅7個のメダルを獲得。2016年にはアジアから初の国際パラリンピック委員会殿堂入りを果たす。東京2020夏季パラリンピック競技大会、北京2022冬季パラリンピック競技大会では日本代表選手団 団長を務める。早稲田大学大学院教育学研究科修了。
■パネリスト:渡 正氏(順天堂大学スポーツ健康科学部 先任准教授)
メディアの報道について、メダリストが多く取り上げられるのは仕方ないことだが、どのように取り上げるかという「質の問題」があるのではないか。これまでの傾向では「できる」「障がいに打ち克つ」という描かれ方が多く、「障がいのある人はメダルを獲ることができる」という印象を与え、それが社会から見てよいことだと捉えられるエイブリズム(能力主義)につながるといわれている。スポーツの良さは、「する」楽しみもあると思うが、それが浮かび上がらず、障がいがあるというだけで「パラリンピックに出るんでしょ?」と言われてしまう問題も生じている。メディアは、パラリンピックのメダル獲得や出場に至らなかった選手をどう取り上げるか、さらにはパラリンピックを「スポーツの大会」として取り上げることが重要だと思う。
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【渡 正(わたり ただし)氏 略歴】
順天堂大学スポーツ健康科学部 先任准教授。
筑波大学大学院博士過程を単位取得退学後、早稲田大学スポーツ科学学術院 助手、徳山大学経済学部 准教授などを経て、2015年より現職。専門はスポーツ社会学、障害者スポーツ論。車椅子バスケットボールのフィールドワークをベースにした研究で博士号を取得。
■モデレーター:藤田 紀昭氏(日本福祉大学スポーツ科学部 教授)
パリパラリンピックの成果が示しているように、東京パラリンピックから3年が経ち、恐れていた“パラバブル”はそれほど弾けていないと感じている。東京パラリンピックのレガシーを発展させるためには、歩みを止めない努力を続けることが大事。情報をどう届けるか、トップとボトムをどんな方法でつなげるか、競技団体の資金集めなど、その時々で課題が出てくると思うが、課題を解決しつつ成熟させていくことが必要なのではないか。また、パリ大会では競技レベルの高まりも話題になったが、本来スポーツとはそういうものであり、パラの競技も少しずつレベルが上がってきたということ。たとえば、ボッチャなども、他の国のレベルが高くなり、日本のメダル数は(東京では3個だったが)2個に減った。各国、競技レベル向上をサポートする国のお金やシステムなどの仕組みがあるのだろうと思う。
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【藤田 紀昭(ふじた もとあき)氏 略歴】
日本福祉大学大学院スポーツ科学研究科 教授、博士(社会福祉学)。
筑波大学大学院体育研究科修了。徳島文理大学 専任講師、同志社大学スポーツ健康科学研究科 教授などを経て現職。研究分野はスポーツ社会学、障害者スポーツ論。現在、スポーツ庁スポーツ審議会「健康・スポーツ部会」 委員、および日本パラスポーツ協会技術委員会 副委員長。
■日本財団パラスポーツサポートセンターパラリンピック研究会代表 小倉和夫
フランスの新聞及び一部雑誌の報道を分析したところ、パリオリンピック・パラリンピック全体の運営については、歴史的にスポーツと関係ない施設を活用したことについての話題が多かった。スポーツと文化を融合させようとしたことで、これまでスポーツに関心のなかった観客を巻き込んだ側面もある一方、私自身は「アスリートよりも観客ファーストになってしまったのではないか」という疑問が生じた。大会の意義について、パラリンピックのフランス選手団の年齢について注目した記事も多い印象だ。選手の平均年齢を見ても、パラリンピックの33.5歳は、オリンピックの26.9歳よりも高く、50歳以上が14人いた。高齢化社会においては、パラリンピックは障がいのある人以外にとっても意味があるのではないかという記事を興味深く読んだ。
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【小倉 和夫(おぐら かずお) 略歴】
日本財団パラスポーツサポートセンターパラリンピック研究会代表、国際交流基金顧問、全国農業会議所理事、青山学院大学特別招聘教授。1938年東京生まれ。東京大学法学部卒業、英国ケンブリッジ大学経済学部卒業。外務省文化交流部長、経済局長、外務審議官等、駐ベトナム大使、駐韓国大使、駐フランス大使、国際交流基金理事長を歴任。東京2020オリンピック・パラリンピック招致委員会評議会事務総長を経て、現職。国際関係関連の著書多数。
日本財団パラスポーツサポートセンターパラリンピック研究会について
パラリンピックやパラスポーツに関する学術研究、社会調査を行い、それらの研究成果を発表する紀要や、大学・研究機関と連携したシンポジウムなどを開催しています。
http://para.tokyo/
日本財団パラスポーツサポートセンター(パラサポ)について
日本財団の支援を受け2015年5月に活動を開始した日本財団パラスポーツサポートセンター*(パラサポ)は、「SOCIAL CHANGE with SPORTS」をスローガンに、一人ひとりの違いを認め、誰もが活躍できるDE&I社会の実現を目指し、パラリンピック競技団体の持続可能な運営体制構築、全国でのDE&I教育・研修プログラムの提供などを実施しています。
*2022年1月に日本財団パラリンピックサポートセンターから名称変更
https://www.parasapo.or.jp/
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