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多層グラフェンの光学特性を包括的に解明

PR TIMES / 2024年12月13日 10時45分

研究成果が国際科学雑誌「Carbon Trends」に掲載





[画像1: https://prcdn.freetls.fastly.net/release_image/109169/144/109169-144-f6f3a250576dbb4aa9ea2c73ac1adf75-875x540.jpg?width=536&quality=85%2C75&format=jpeg&auto=webp&fit=bounds&bg-color=fff ]


アンリツ株式会社(社長 濱田 宏一)は、アンリツの先端技術研究所(以下、先端研)が、多層グラフェンの可視光域での光学コントラスト、反射率、ラマン散乱[※]の性質とこれらの関係を包括的に解明したことをお知らせいたします。
本研究成果は、NTT物性科学基礎研究所との共著論文として、炭素系物質について最先端の研究を掲載する国際科学雑誌「Carbon Trends」に公開されました。

先端研では、アンリツの経営ビジョンである“「はかる」を超える。限界を超える。共に持続可能な未来へ。”の実現を目指し、基礎研究を進めています。
そのひとつとして、グラフェンや多層グラフェンを用いた次世代デバイスの実現を目指しています。

グラフェンは炭素の単原子層膜のことで、極めて薄く、軽量かつ透明であることに加え、非常に高い強度と柔軟性を持ち、電気伝導・熱伝導に優れるため、次世代エレクトロニクス、エネルギー、通信、医療など多様な分野での応用が期待されています。
このような性質を持つグラフェンを積層させることで、グラフェンの優れた特性を保持しつつ、新しい機能を発現させる試みが注目されています。
しかし、多層グラフェンの光学的な性質に関する研究は、ごく薄い(層数の少ない)領域に限られていたり、各研究が独立に行われたりして、各特性の関係についてはこれまで明らかにされていませんでした。

本研究では、厚さ約0.3 nmの単層グラフェンから約100 nm (約318層) に至る多層グラフェンについて、可視光域での光学コントラスト、反射率、ラマン散乱という光学特性を包括的に研究し、これらの性質と相関を世界で初めて明らかにしました(2024年8月、アンリツ調べ)。

本研究により多層グラフェンの研究や応用利用への貢献が期待できます。
例えば光学コントラストでは、層数による多層グラフェンの色の変化を定量的に示すことに成功しました。この知見を用いれば、高額な装置を使わなくても、光学顕微鏡写真から多層グラフェンの厚さ(層数)を±1 nm(~5層)の精度で知ることができます。
また光学素子として応用する際には、その反射率を正しく予測する必要がありますが、本研究ではそれがごく単純な計算で得られることを示しました。

今後は光の波長を可視光域から光ファイバ通信の波長帯(近赤外域)まで伸ばし、多層グラフェンの光学素子としての可能性を拡げていきます。
[画像2: https://prcdn.freetls.fastly.net/release_image/109169/144/109169-144-57629ddac82ce332d1e995349504b976-730x537.jpg?width=536&quality=85%2C75&format=jpeg&auto=webp&fit=bounds&bg-color=fff ]


国際科学雑誌「Carbon Trends」掲載箇所
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S2667056924000701
“Comprehensive study of optical contrast, reflectance, and Raman spectroscopy of multilayer graphene”, Masahiro Kamada, Ken-ichi Sasaki, and Tomohiro Matsui, Carbon Trends 16, 100389 (2024).

本研究の理論的な側面については、以下の論文で発表しました。
“Introducing Corrections to the Reflectance of Graphene by Light Emission”, Ken-ichi Sasaki, Kenichi Hitachi, Masahiro Kamada, Takamoto Yokosawa, Taisuke Ochi, and Tomohiro Matsui, C 10, 18 (2024).
https://www.mdpi.com/2311-5629/10/1/18

先端技術研究所について詳しくはこちら
https://www.anritsu.com/ja-jp/about-anritsu/r-d/ar-lab
用語解説
[※] ラマン散乱
物質に光を照射した際、ほとんどの光は同じ波長で散乱されますが、一部の光は入射光と異なる波長で散乱されます。このとき入射光と同じ波長での散乱をレイリー散乱(弾性散乱)、異なる波長での散乱をラマン散乱(非弾性散乱)と言います。ラマン散乱光の波長が入射光と異なるのは、入射した光の一部が物質中の原子や分子を振動させることにエネルギーを消費するからです。したがって入射光とラマン散乱光の波長の違いを調べることで、物質中にどういった原子や分子が、どのような構造で存在しているかを知ることができます。こうして物質の構成を調べる手法をラマン分光と呼び、非接触・非侵襲で分子を分析・同定できる手法として注目されています。
ラマン散乱の名前は、1928年にこの現象を実験的に発見したインドの物理学者の名前 チャンドラシェカール・ラマン に由来します。ラマン博士はこの功績により1930年にノーベル物理学賞を受賞しました。

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