国際学生デザイン・エンジニアリングコンペ James Dyson Award 2024、国際最優秀賞が決定
PR TIMES / 2024年11月14日 15時40分
「化学療法患者のための脱毛防止装置」と「カエデの種に着想を得たサステナブルな気象観測気球」
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国際学生デザイン・エンジニアリングコンペであるJames Dyson Award(以下、ジェームズ ダイソン アワード)は、国際最優秀賞の2組の受賞者を発表しました。ダイソン創業者兼チーフエンジニアのジェームズ ダイソンによって選ばれた今年の受賞者には、発明を次なる段階へと展開する支援として30,000ポンド(約590万円*¹)が授与されます。
携帯型のバッテリー式頭皮冷却装置「Athena」が、国際優秀メディカル賞に選出されました。24歳のオリビア・ハンフリーズ(Olivia Humphreys、アイルランド)は、母親ががんで闘病生活を送ったことをきっかけに「Athena」を発案しました。化学療法に伴う脱毛を防ぐための頭皮冷却療法を手頃な価格で行える携帯型の装置で、既存の技術のおよそ20分の1の価格で、病院外でも使用できるため、患者が病院で過ごす時間を短縮することができます。
「Airxeed Radiosonde」が国際優秀サステナビリティ賞を受賞しました。シンガポールの博士研究員であるシェーン・キー・フラ・ウィン(Shane Kyi Hla Win)とダニアル・スフィヤン・ビン・シャイフル(Danial Sufiyan Bin Shaiful)は、落下するカエデの種にヒントを得て、ラジオゾンデによる気象観測をより持続可能なものにする、再利用可能なセンサーを考案しました。既存の気象観測用気球とは異なり、何トンものプラスチックや電子機器の廃棄物を排出せず、航空機の衝突を避け、指定された収集区域に降下して再利用を可能とします。
ジェームズ ダイソン アワードはこれまで、世界中の若いエンジニアや科学者による、400以上の問題解決型の発明を支援しており、今年は2,000を超える応募がありました。
2024年の受賞者について、ジェームズ ダイソンは次のように述べています。
“ジェームズ ダイソン アワードは、問題解決に取り組む大学生を応援するために、約20年前に始まり、これまで何千、何万もの応募がありました。世界的な深刻な問題に対して、学生たちが発案する解決策を目にするたび、勇気づけられてきました。座って議論をするのではなく、彼らは問題解決のために動いているのです。本アワードはそうした若者を奨励するためのものです。今年の受賞者にとって、この賞が将来の成功への足がかりになることを願っています。”
ジェームズ ダイソンは、オンライン・ビデオ通話で受賞者にサプライズで受賞のニュースを伝えました。その様子はYouTube( https://youtu.be/nB-w6pjcYo8?si=zMUPGFGeTtNpBdGK )でご覧ください。
メディカル賞 「Athena」 - 発明者: オリビア・ハンフリーズ(Olivia Humphreys、アイルランド)
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プロダクトデザインとテクノロジーを専攻したオリビア・ハンフリーズは、2019年に母親が、がんの闘病中に、化学療法による脱毛が患者に与える影響を目の当たりにしたことがきっかけで、「Athena」を発案しました。「Athena」は、頭皮冷却を搭載した携帯型のサーモエレクトリック式脱毛防止装置です。治療の質を落とすことなく、現在の通院モデルよりも費用対効果が高く、時間も節約できます。
ジェームズ ダイソンは、次のように述べています。
“私も家族ががんになったことがあり、化学療法による脱毛が憂鬱なものと知っています。施設で頭皮を冷却しなければならず、いつでも利用できるとは限らない上に、費用がかかります。「Athena」は、旅行中や病院への行き帰りの車の中でも、自宅でも使用可能です。誰もが利用できる低価格の代替手段で、真の変化をもたらす可能性を秘めています。”
受賞に際し、オリヴィアは次のように語っています。
“今回の受賞は、私の努力だけではなく、がん治療を経験した人たちに共有していただいた体験談や洞察も評価されたということです。母がインスピレーションを与えてくれたプロジェクトがこのレベルに達したことは、大変感慨深いです。この賞は自分の可能性を認識するきっかけになりました。”
ロイヤル・ユナイテッド・ホスピタル・バースのマーク・ベレスフォード教授は、次のように語っています。
“脱毛は化学療法による最も外見上の苦痛を伴う副作用の一つです。現在の頭皮冷却技術は脱毛のリスクや程度を軽減することができますが、化学療法の前後一定期間は化学療法室で装着する必要があり、患者は病院に長時間拘束されます。この新しい携帯型装置は、患者に自由な時間を与えるものです。”
サステナビリティ賞 「Airxeed Radiosonde」 - 発明者: シェーン・キー・フラ・ウィン(Shane Kyi Hla Win、シンガポール)、ダニアル・スフィヤン・ビン・シャイフル(Danial Sufiyan Bin Shaiful、シンガポール)
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シンガポール工科デザイン大学の若きエンジニアであるシェーンとダニアルは、自然からインスピレーションを得て、「Airxeed Radiosonde」を発案しました。より正確な天気予測のデータを収集するために、ラジオゾンデと呼ばれる気象観測気球が各地で打ち上げられていますが、機器は使い捨てで、大量のプラスチックや電子機器廃棄物を排出しています。この問題に対して、研究チームは、ラジオゾンデの降下と寿命を改善し、電子廃棄物を減らして環境への影響を最小限に抑えることに注力しました。
ヒントは、カエデの種にありました。カエデの種の非対称な形状は揚力と抗力を生み出し、落下時にヘリコプターのように回転します。この原理を設計に応用し、降下中に螺旋を描くことで落下速度を遅くし、地面への衝突による損傷を防ぎます。この装置は、航空機の巡航高度を通過する時は、自動回転を停止して急降下モードになり、航空機との衝突や強風を回避します。また、GPSと飛行ナビゲーションを装備し、複数の選択肢から最適な回収ゾーンを選択できます。天候と飛行軌跡にもとづいてスムーズに着地する可能性が高まるため、ラジオゾンデの回収や再利用が容易になります。
ジェームズ ダイソンは、次のように述べています。
“既存の気象観測用気球は、地球に落下した後、電子廃棄物となってしまいます。本作品は、オペレーターが望む場所にラジオゾンデを戻す方法を発見しました。カエデの種の原理を利用して、静かに降下しながらも、飛行機がありそうな場所では急降下するのです。再利用可能で、環境廃棄物の削減と経費節減につながるという、実に賢いアイディアです。”
シェーンは次のように語っています。
“本受賞は、大きな前進です。私たちのデザインに可能性があることを示すとともに、気象業界に改善策を紹介する場を与えてくれました。そして、世界的な課題に取り組む私たちのような若い発明家を、ジェームズ ダイソンさんのような方が励ましてくれることは、本当にモチベーションにつながります。”
そして、ダニアルはチームの次なる目標について、次のように述べています。
“この受賞をきっかけに、さらに実証実験と開発を行うため、気象業界の専門家とつながり、パートナーシップを組めたらと考えています。本受賞は、気象観測をより持続可能でスマートなものにする解決策の実現に向けた、大きな後押しとなるでしょう。”
*1 賞金参考金額:1ポンド=197円(2024年11月12日時点)
参考資料
これまでの受賞者
- 2023年国際最優秀賞 - The Golden Capsule
被災地で使用するハンズフリーの静脈内投与(IV)装置
https://www.jamesdysonaward.org/2023/project/the-golden-capsule/
- 2023年サステナビリティ賞 - E-COATING
高い冷却効果によってエアコンの環境コストを低減するサステナブルな外壁コーティング
https://www.jamesdysonaward.org/2023/project/e-coating/
- 2023年特別人道賞 - The Life Chariot
汎用牽引用オフロードトレーラー救急車
https://www.jamesdysonaward.org/2023/project/the-life-chariot/
- 2022年国際最優秀賞 - SMARTHEAL
pHレベルを測定して傷の治り具合を示す、包帯用スマートセンサー
https://www.jamesdysonaward.org/en-US/2022/project/smartheal/
- 2022年サステナビリティ賞 - Polyformer
ペットボトルを新興国向けの安価な3Dプリンター用フィラメントに再生する装置
https://www.jamesdysonaward.org/2022/project/polyformer-plastic-bottles-to-filament-in-rwanda/
ジェームズ ダイソン財団(James Dyson Foundation)
2002年に英国で設立されたジェームズ ダイソン財団は、現在では英国以外に、米国や日本、シンガポール、フィリピン、マレーシアといった世界中の国々で、デザイン、テクノロジー、エンジニアリング教育事業をサポートしています。ジェームズ ダイソンとジェームズ ダイソン財団はこれまでに慈善目的で1億4,000万ポンドを超える寄付を行ってきました。これには、インペリアル・カレッジ・ロンドンにダイソン スクール オブ デザイン エンジニアリングを設立するため行った1,200万ポンドの寄付や、ケンブリッジ大学にダイソン センター フォー エンジニアリング デザインおよびジェームズ ダイソン ビルの設立に向けた800万ポンドの寄付が含まれます。
ジェームズ ダイソン アワード(James Dyson Award)
ジェームズ ダイソン アワード( https://www.jamesdysonaward.org/ja-JP/ )は、同財団が毎年開催しているデザイン・エンジニアリングアワードで、デザインおよびエンジニアリングを学ぶ学生を対象としています。 2005年の開始以来、同賞は世界中で400以上の発明を支援し、その商業化をサポートする資金を提供してきました。
最新情報はJDAのInstagram( https://www.instagram.com/jamesdysonaward/?hl=en ※英語のみ)や、Dyson Newsroom( https://www.dyson.co.jp/discover/news )でも随時ご案内します。
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