SARS-CoV-2オミクロンXEC株のウイルス学的特性の解明
PR TIMES / 2024年11月13日 16時40分
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【ポイント】
2024年10月現在、オミクロンBA.2.86株の子孫株である「オミクロンXEC株」が世界各地で流行を拡大しつつある。
本研究は、オミクロンXEC株の伝播力、培養細胞における感染性、液性免疫からの逃避能を明らかにした。
オミクロンXEC株は、オミクロンKP.3.3株への自然感染により誘導された中和抗体に対して、現在の主流行株であるオミクロンKP.3.1.1株よりも高い逃避能を有し、高い伝播力(実効再生産数)を有することが分かった。
【発表概要】
東京大学医科学研究所システムウイルス学分野の佐藤佳教授が主宰する研究コンソーシアム「The Genotype to Phenotype Japan (G2P-Japan) consortium」(注1)は、現在流行が拡大しつつある「オミクロンXEC株」の流行動態や免疫抵抗性等のウイルス学的特性を明らかにしました。XEC株は、「オミクロンKS.1.1株」および「オミクロンKP.3.3株」の組み換えにより誕生した変異株で、世界保健機関(WHO)により「監視下の変異株(currently circulating variants under monitoring,VUM)」(注2)に分類されています。
統計モデリング解析により、オミクロンXEC株は、現在の流行株であるオミクロンKP.3.1.1株よりも高い実効再生産数(注3)を示すことを複数の地域において確認しました。また、感染中和試験の結果、オミクロンXEC株は、これまでのオミクロン系統の流行株(XBB.1.5株、JN.1株およびKP.3.3株)の既感染もしくはブレイクスルー感染(breakthrough infection, BTI)(注4)によって誘導される中和抗体(注5)に対してオミクロンKP.3株より高い逃避能を示し、特にKP.3.3株BTI誘導中和抗体に対しては、オミクロンKP.3.1.1株より高い逃避能を示すことが分かりました。
本研究成果は2024年11月6日、英国科学雑誌「The Lancet Infectious Diseases」オンライン版で公開されました。
【発表者】
東京大学医科学研究所 感染・免疫部門 システムウイルス学分野
佐藤 佳 教授
郭 悠 特任助教
奥村 佳穂 技術補佐員
川久保 修佑 特任研究員
瓜生 慧也 特任研究員
陳 犖 大学院生
小杉 優介 日本学術振興会特別研究員、大学院生
伊東 潤平 准教授
ヒトレトロウイルス学共同研究センター熊本大学キャンパス 分子ウイルス・遺伝学分野
池田 輝政 准教授
MST Monira Begum 特別研究員
Sharee Leong 大学院生
研究コンソーシアム「The Genotype to Phenotype Japan (G2P-Japan) consortium」
【用語解説】
(注1)研究コンソーシアム「The Genotype to Phenotype Japan (G2P-Japan) consortium 」
東京大学医科学研究所 システムウイルス学分野の佐藤佳教授が主宰する研究チーム。日本国内の複数の若手研究者・研究室が参画し、研究の加速化のために共同で研究を推進している。現在では、イギリスを中心とした諸外国の研究チーム・コンソーシアムとの国際連携も進めている。
(注2)監視下の変異株(VUM:currently circulating variants under monitoring)
ウイルスの特性に影響を与えると思われる遺伝子変異を持つものの、表現型や疫学的な影響の証拠は現時点では不明である変異株。
(注3)実効再生産数
特定の状況下において、1人の感染者が生み出す二次感染者数の平均。ここでは、変異株間の流行拡大能力の比較の指標として用いている。
(注4)ブレイクスルー感染(BTI:breakthrough infection)
新型コロナウイルスワクチンを2回接種したのち、2週間以上経ってからSARS-CoV-2に感染すること。
(注5)中和抗体
獲得免疫応答のひとつ。B細胞によって産生される抗体でSARS-CoV-2の主にスパイクタンパク質の細胞への結合を阻害し、ウイルス感染を中和する作用がある。
【論文情報】
雑誌名 :The Lancet Infectious Diseases
題 名 :Virological characteristics of the SARS-CoV-2 XEC variant
著者名 :郭 悠#, 奥村 佳穂#, 川久保 修佑, 瓜生 慧也, 陳 犖, 小杉 優介, 上蓑義典, MST Monira Begum, Sharee Leong, 池田 輝政, 貞升健志, 浅倉弘幸, 長島真美, 吉村和久, The Genotype to Phenotype Japan (G2P-Japan) Consortium, 伊東 潤平, 佐藤 佳*.
(#Equal contribution; *Corresponding author)
DOI : 10.1016/S1473-3099(24)00731-X
URL : https://www.thelancet.com/journals/laninf/article/PIIS1473-3099(24)00731-X/fulltext
▼プレスリリース全文はこちら
https://www.kumamoto-u.ac.jp/whatsnew/seimei-sentankenkyu/20241112
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