アサヒクオリティーアンドイノベーションズ、SyntheticGestalt、東京科学大学が、AI技術を活用しPETボトル分解技術を共同開発
PR TIMES / 2024年12月20日 10時45分
「ボトルtoボトル」(水平リサイクル)を推進する新技術の開発。より効率的な「バイオリサイクル」の確立で、PETボトル分解の環境負荷、コスト低減に貢献を目指す取り組み
アサヒグループホールディングス株式会社(本社 東京、社長 勝木敦志:以下AGH)の独立研究子会社であるアサヒクオリティーアンドイノベーションズ株式会社(社長 永富康司:以下AQI)は、SyntheticGestalt株式会社(社長 島田幸輝、以下SyntheticGestalt)および国立大学法人東京科学大学(理事長 大竹尚登、以下Science Tokyo)と共同で、2024年下期から、AI技術を活用したPETボトル分解技術「バイオリサイクル」の研究を開始しました。本研究は、従来のPETリサイクルの手法と比較して、環境負荷やコストの低減に貢献することを目指しています。
「バイオリサイクル」は、PET素材を中間原料に戻した上で再重合する新たなPET樹脂をつくる方法です。「ケミカルリサイクル」※1と本質的には変わらない反応を行うものの、化学的な分解工程を酵素分解に置き換え、生物由来の分解酵素を利用することで、反応温度を大幅に低下でき、常温・常圧でリサイクルを行えることから、従来の手法が抱える課題を解決できる可能性を持っています。PET素材を最も効率的に分解できる新規PETase(PETプラスチックの分解酵素、読み方:ピーイーティーエース)を早期に発見し、「バイオリサイクル」の確立を目指します。
【3者の役割】
本研究は、AQIと、学術的な基盤を持つScience Tokyo、最先端のAI技術を有するSyntheticGestaltが参画しています。
AQIは、グループの独立研究子会社であることで、アサヒ飲料などの事業会社から得られる知見を活用して、本研究で得られたPETaseに関する市場ニーズや事業課題も含め、実用化に向けた評価を行います。
アサヒグループは、気候変動への中長期目標として2040年にScope1,2およびScope3にてCO2排出量“ネットゼロ”を目指す「アサヒカーボンゼロ」を設定しています。また、アサヒグループは飲料事業を展開しており、相当量のPET製容器を流通させていることから、2030年までに「PET ボトルを100%リサイクル素材、バイオ由来の素材等に切り替える」という目標を掲げています。本研究は、それらの目標実現に向けた重要な取り組みとなります。
SyntheticGestaltは同社のAI技術を用いて、世界で2例目となる新規MHETase(PETボトルのバイオリサイクルに不可欠な酵素)の発見や、4種類の新規PETase(PETプラスチックの分解酵素)の発見など、多くの未知の酵素を発見してきた実績を持っています。本研究では、教師データ※2を5倍に拡大して改良した同社のAI技術を活用し、2.5億種類の遺伝子ライブラリーから高機能かつ高付加価値の新しいPETaseを探索します。同社は経済産業省・NEDOによる国内基盤モデル開発支援プログラムであるGENIACの採択事業者であり、世界最大の分子基盤AIモデルを開発しています。また、経済産業省のJ-Startupにも選定されており、日英の多国籍チームで本研究に取り組んでいます。
Science Tokyo地球生命研究所の藤島研究室及び寺坂研究室は主に分子進化工学の研究で培った実績を活かして実験(ウェットラボ)及び評価を担当します。藤島研究室と寺坂研究室は数百万種類の配列の中から特定の機能を有するタンパク質を選別し、さらに改変する技術を有しており、本共同研究では、最先端の実験技術と学術的な観点からプロジェクトを推進します。
【今後の展望】
現在、自然界には酵素が数十億種類以上存在すると言われていますが、その多くは機能が解明されておらず、既知の酵素よりも機能面で優れた未知酵素が多数存在すると考えられます。
本研究では、AIの活用によってこれまで人類が知り得なかった新しいPETaseを効率的に発見することを目指します。AIによる分析は、膨大な遺伝子データの中から有望な酵素候補としての配列を迅速に特定し、従来では不可能だったスピードでの新酵素探索を可能にします。このアプローチにより、環境への負荷が低いペットボトルリサイクル技術の実現が期待されます。
3者は既に、10種類の有望なPETase候補を新規に発見しており、実験により一定の分解機能を持つことを確認しています。今後はScience Tokyoの実験チームがこれらの候補を更に検証し、酵素の選定と改良を進めることで、技術の実用化に向けてさらに革新的な酵素の発見を期待します。これらの取り組みを通じて、2026年までに実証プラントスケールを稼働可能なレベルの活性を持つPETaseの開発を目指します。
※1 化学分解により中間原料に戻した上で再重合する新たなPET樹脂をつくる方法。回収された使用済み
PETボトルを選別、粉砕、洗浄して異物を取り除いた後に、解重合を行うことによりPET樹脂の原料
または中間原料まで分解、精製したものを重合して新たなPET樹脂とするもの。
※2 AIに学習させる問題と解答を情報として付加したデータ
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