FIF主催セミナー「人工知能(AI)で起こすビジネス革命」開催報告
PR TIMES / 2017年3月27日 14時25分
フューチャー イノベーション フォーラム(代表:牛尾治朗・ウシオ電機株式会社会長、金丸恭文・フューチャー株式会社会長兼社長、略称:FIF)は、3月1日に「イノベーションセミナー」を開催しました。FIFは企業と連携し社会貢献活動を行う団体として2006年に発足し、次世代リーダーの育成と交流を目的としたセミナーやワークショップを開催しています。
今回のセミナーは「人工知能(AI)で起こすビジネス革命」をテーマに、米国スタンフォード大学アジア太平洋研究所の櫛田健児様に講演いただき、敷島製パン株式会社 樫平丈一様と全日本食品株式会社 佐藤隆様にAIやビッグデータを活用した各社の事例を紹介いただきました。
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【講演概要】(敬称略)
◆特別講演「シリコンバレー発 AIの衝撃と活用への道」
スタンフォード大学 アジア太平洋研究所 リサーチアソシエート 櫛田 健児
シリコンバレーにいると、人類が革命の真っただ中にいることを実感する。特に人工知能(AI)の進化は目覚ましく、その根底にはコンピュータリソースが豊富になったことがある。革命が加速する中、国や企業が生き残るにはこの豊富なコンピュータリソースをいかに活用するかにかかっている。
AIとは簡単に定義すると、大量の画像・音声・データなどのパターンを認識するしくみだ。AIの基本である「ラーニング」には膨大なプロセシングパワーと豊富なデータが必要だが、クラウドの登場でコンピュータリソースが増え、スマートフォンの普及によって各種センサーから得られるデータ量が爆発的に増えたことから、AIの技術が飛躍的に進歩した。
2016年3月、Google傘下のDeepMind社が開発した囲碁プログラム「AlphaGo」が世界最高峰の棋士に勝利し世界に衝撃を与えたが、これは序章に過ぎない。その後GoogleはDeepMindのAIエンジンを自社のデータセンターの空調に活用し、効率を40%も向上させ、電力消費量を15%削減した。すでに最適化されていたシステムが、AIの活用でさらに効率化できることに驚くばかりだ。これが「シロモノ家電」ではなく「シロモノAI」となって誰でも安価に使えるようになる日は、思っているよりも近い。そこで何が起きるだろうか。AIで何を最適化できるかを考えてみてほしい。
AIの進化は、人間が行う活動の生産性をソフトウエアで向上させ、その先で自動化する「アルゴリズム革命」を加速させている。「AIは人の仕事、特にローエンドの仕事を奪う」と一般的に言われているが、一方で人間の能力を補完する「Intelligence Augmentation(IA)」も可能にする。たとえばコマツは、長年の経験と熟練した技術が必要だった作業を経験の浅いオペレータでもできるようなシステムを建機に導入した。少子高齢化が進む日本にとって、IAを使った人間の活動の自動化は、あらゆる分野において切り札になるだろう。
日本企業がAIをビジネスに活用していくには、AIの最前線であるシリコンバレーのしくみを理解し、活用し、共存することを考えるべきだ。産学間の人材交流が盛んなシリコンバレーには世界中からトップの人材が集まり、スタートアップを立ち上げて躊躇なく新しいことを試みる。その開発スピードは非常に速く、米国の大企業の多くが生き残りをかけてスタートアップとの共存を模索している。日本企業もシリコンバレーと手を組み、最新のテクノロジーをどう活用するかに注力すべきだ。
スマートフォンの登場がパソコンやカメラ、ゲームなど複数の市場を席巻したように、今後シリコンバレー発のAI革命が、既存の枠組みを越えた破壊的イノベーションを起こしていくと予想される。そこで、みなさんに問いたい。DeepMindのAIエンジンを月額10ドルで使えるようになったら、自社でどのように活用するだろうか。何を最適化し、どのような付加価値をつけていくだろうか。制約を設けず、あらゆる可能性を想像してみてほしい。近い将来、AIを使うのが当たり前の時代がやってくる。今こそ自社のコアビジネスを大事にしながら、新しいビジネスモデルを模索する“両利きの組織(ambidextrous organization)”に舵を切ることが望まれる。いち早くAIの活用に取り組んでほしい。
◆事例1「需要予測システムを軸に進める営業改革」
敷島製パン株式会社 SPS推進部 部長 樫平 丈一
食パン「超熟」などのPASCOブランドで親しまれている敷島製パン株式会社は、2020年に創業100周年を迎えるにあたり、従来の売上重視から利益重視の経営へ転換を図るため、需要予測を軸にした新基幹システム「Smart Pasco System(SPS)」を2015年11月に本稼働させた。
パンは受注から納品までのリードタイムが非常に短く、受注生産では対応できないため、予測の精度が収益力向上の重要なカギを握る。SPSでは実積値に基づく統計・分析情報を用いて算出した予測数値に、営業部門の意思を入れた需要予測を立て、そのデータを基に最適な生産・物流計画を立てるという一連の流れを構築した。
導入当初は蓄積データの少なさやシステムを使う営業部門が不慣れだったことも影響し、予測精度が低かった。だが月を追うごとに改善され、ある店舗では月額販売数の予測と実績の乖離が0.3%というように、効果事例も増えてきている。またSPSの導入によって、営業部門が本来の仕事に専念できる時間が増え、業務の改善・改革も進んでいる。
改革を進めるにあたり重要なのは、社員の意識改革だと強く感じている。従来は日々の販売実績に注力しがちであったが、今後はそこに「予測=見込み」という考え方を加えて、利益管理の精緻化を図っていく。一人ひとりがシステムを使いこなし、プロセスを重視した営業スタイルに変わることで、全体的な営業力の強化につなげていきたい。
◆事例2「ビッグデータを活用した自動発注、One to Oneマーケティング」
全日本食品株式会社 常務取締役 IT・マーケティング本部長 佐藤 隆
全日本食品株式会社は1962年に小さな商店の共同仕入れからスタートし、現在は全国に約1,700の加盟店を持つボランタリーチェーンだ。加盟店のほとんどが地域に根差した中小商店のため、商品の品揃えや売価、発注や販促において精度と効率の高い店づくりが求められる。そこで10年前に膨大な購買データを活用した「自動発注」と「顧客別販促」のしくみを構築した。
購買データを分析して明らかになったのは、顧客ごとに欲しい商品が異なることだ。たとえばある店舗のあるヨーグルトの売上をみると、わずか0.4%の顧客で54%の売上を占めており、上位顧客の来店が販売数を左右することがわかった。このため自動発注システムは、正確な需要を予測するのではなく、カテゴリごとに欠品率の目標値を設定し、欠品が適性に起こるしくみとした。一方、販促面では、顧客全員を対象にしたチラシでは効果が出にくいため、顧客が来店した際に購買履歴に基づいた販促チラシを個別に作成し、店頭の専用機で発券するようにした。
ふたつのシステムの導入効果は非常に高く、ある店舗では一日の売上高が5年間で26%もアップした。今まで30回以上のシステム改修を繰り返しながら、日々の売上の底上げに努めている。今後はスマートフォンを使ってリアルタイムにお得な情報を発信し、売上減少の要因である優良顧客の店離れと新規顧客の獲得を目指す。一人ひとりにアプローチするサービスをさらに強化し、加盟店を盛り立てていきたい。
【実施概要】
テーマ:人工知能(AI)で起こすビジネス革命
日 時:2017年3月1日(水)15:30~18:30
会 場:パレスホテル東京(東京都千代田区)
参加者:約100名
【本セミナーに関するお問い合わせ】
FIF事務局 TEL:03‐5740‐5817
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