ウクライナ紛争激化から1年半、日本に避難してきた女性たちの今~「ウクライナ避難民の日本での生活状況に関する調査」国際NGOプラン・インターナショナルが発表
PR TIMES / 2023年8月24日 13時45分
ウクライナ出身のアンナ・シャルホロドウスカー職員による調査~見えてきたのは言葉の壁と子どもの教育への懸念
国際NGOプラン・インターナショナル(所在地:東京都世田谷区 理事長:池上清子 以下、プラン)は、「ウクライナ避難民の日本での生活状況に関する調査」を発表しました。
2022年2月24日のウクライナ紛争激化から1年半が経過したなか、依然としてウクライナでは数百万人の人々が国内外への避難を強いられています。日本にも、2023年8月現在、約2000人のウクライナ避難民が暮らしています。
プランは、ウクライナから日本に避難してきた女の子や、子どもとともに避難してきた女性たちの日本における生活状況を把握するため、アンケート調査とインタビューを実施しました。本調査を担当したのは、自身も2022年5月に避難民として来日し、同年12月よりプランに勤務しているアンナ・シャルホロドウスカー職員です。
[画像1: https://prtimes.jp/i/12939/201/resize/d12939-201-23f02cbe3def87ca41c4-1.jpg ]
「ウクライナ避難民の日本での生活状況に関する調査」
https://www.plan-international.jp/about/pdf/Research_Report_About_Ukrainians_jp.pdf
調査実施時期:2023年4月~6月
調査対象:日本に暮らす24歳未満のウクライナ人女の子14人と、子どもを持つ女性17人の合計31人
調査方法:アンケート*とインタビュー
*複数回答を可能とし、回答したくない場合は無回答を許諾
調査内容:24歳未満の女の子に対しては、日常生活や日本で生活することの難しさ、自己実現の障壁となるものについて。子どものいる女性に対しては、子どもを教育するうえでの困難、必要な援助について
[画像2: https://prtimes.jp/i/12939/201/resize/d12939-201-26c0f262efe15a77fd91-0.jpg ]
調査を担当したアンナ・シャルホロドウスカー職員
プロフィール
2022年12月より国際NGOプラン・インターナショナル アドボカシーグループに所属。
マリウポリ国立大学にて歴史学の学士号を取得した後、同大学院にて中等教育、歴史学、ジャーナリズムの修士号を取得。マリウポリ中等学校での歴史指導、乳幼児への英語教育・発達教育カリキュラムの作成など教育分野でのキャリアを重ねるとともに、マリウポリ市ニュースサイトのジャーナリストとして記事作成にも従事
メッセージ
今回の調査では、ウクライナ避難民は似通った困難(家庭の問題、書類手続きの困難、医療問題など)を経験しており、そのほとんどは日本語の知識不足から生じていることが判明しました。
日本とウクライナの制度の違い(雇用制度、医療制度、教育制度、追加教室など)も大きく影響しています。
他方、異なる課題も多くあります。例えば、移動にかかる通費支払いの負担、クラブ活動などへの参加の難しさについては、多くの女の子や子連れの女性が言及していました。
調査では、彼女たちが描く今後の抱負や計画、またそれを実現する際の障壁も明らかになりました。また、日本における子どもの教育からは、さまざまな方法が明らかになり、子どもに快適で質の高い教育を提供する必要性が示されました。私は、多くのウクライナの子どもたちが日本に溶け込み学校に通っていることに感銘を受けました。教育は、将来自己実現のための新たな機会を得るうえで非常に重要です。
私が行った調査やインタビューは対象とした人数が限られていたため、完璧な情報を提供するものではないかもしれませんが、この調査が日本に避難しているウクライナ人の生活や懸念、経験を浮き彫りにし、彼女らを支援するために何が必要であるかを考えるきっかけになれば幸いです。
【調査結果から見えてきたこと】
回答者のほぼ9割が日本での生活に概ね満足していると答える一方で、言葉の壁や仕事探し、医療上の問題を課題としてあげました。また、子どもを持つ女性たちは、子どもを日本の学校に通わせる場合の日本語習得や交通費節約のための外出控えなどの問題をあげています。紛争収束後に自国に戻る可能性を見越し、日本でウクライナの学校教育を継続する際に直面する時差や学習到達について懸念していることも明らかになりました。
● 24歳未満の女の子14人を対象にしたアンケート結果
[画像3: https://prtimes.jp/i/12939/201/resize/d12939-201-1c29f7522b74cfbc5e16-2.jpg ]
日常生活上の問題(71.4%)と言葉の問題(64.3%)が最多。その他にも、言語学習、仕事探し、書類手続きや医療の難しさなどが挙げられました。
[画像4: https://prtimes.jp/i/12939/201/resize/d12939-201-6f8fd376ebf9c1ea51b9-3.jpg ]
支出で最も多いのは食費(57%)です。また、交通費や生活必需品(約30%)も大きな負担となっています。
● 子どもを持つ女性17人へのアンケート結果
[画像5: https://prtimes.jp/i/12939/201/resize/d12939-201-15a87891db5db6651791-4.jpg ]
約60%の子どもは、学校で勉強するために必要な学用品や教材などを所有していましたが、約17%が、避難して日が浅いために教材など購入できていなかったり、経済的理由で、備品や教材などを持っていないことが分かりました。
[画像6: https://prtimes.jp/i/12939/201/resize/d12939-201-fd420a9540d875ac1682-5.jpg ]
ウクライナへの帰国を予定しているか、まだ帰国について明確に決めていないものの、オンライン学習を継続している子どもは約65%に上りました。ウクライナの学校でのリモート教育は成果が上がらないと考えているか、教育を受けるための条件が整っていないため、リモート教育を受けていない子どもは10%に過ぎません。
[画像7: https://prtimes.jp/i/12939/201/resize/d12939-201-e8beba96da89fbfd80db-6.jpg ]
約半数の53%の子どもたちが地元にある日本の学校で学んでいるものの、日本語で勉強することは非常に難しく、カリキュラム通りに学習することは困難と考える割合は67%に上ります。また、約42%が学校の言語サポート不足を指摘しており、多くの子どもたちが孤立を感じています。そのような状況にもかかわらず、母親の中で、日本の学校で子どもがいじめにあったということを確認した人はいませんでした。
● 6人に対するインタビュー
6人の避難民(24歳未満の女の子2名、持病のある女性1名、子どものいる女性3名)に、日本での生活、困難、心配事、勉強、将来の計画などについてインタビューを行いました。彼女たちは全員、日本政府の支援を受けており、快適な避難生活を過ごしていると語りました。一方で、各々の語りからは、各人が直面している困難や課題、祖国への思いが浮き彫りになっています。
「避難民」と一括りにされがちな女性たち一人ひとりが置かれた状況がつぶさに語られています。
[表: https://prtimes.jp/data/corp/12939/table/201_1_990d4ef270c66941529479a50fc8d58a.jpg ]
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