中央アフリカ共和国:イスラム教徒の命を奪った暴力の規模が明らかに――MSF調査
PR TIMES / 2014年7月18日 13時58分
国境なき医師団(MSF)がチャド共和国シャリ・バギルミ州シドで避難生活を送る中央アフリカ共和国からの難民を対象に行った死亡率の後ろ向き調査で、2013年11月から2014年4月にかけて2599人が亡くなっていたことがわかった。この期間は、中央アフリカ国内のイスラム系少数派に対する迫害が暴力化した時期にあたる。同調査では、2599人のうち2208人が中央アフリカ出国前に殺害されており、その死因の95%が銃、なた、爆弾による攻撃だったことも明らかになっている。
<全世帯の33%が1人以上の家族失う>
国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)の報告では、2013年12月から2014年1月の間に、数十万人が迫害や暴力を避けるため、中央アフリカから隣国のチャドやカメルーンに避難した。MSFの疫学研究機関「エピエンター」は2013年11月から2014年4月までの期間の暴力の広がりを把握するため、シドの難民3499世帯の聴き取り調査を行った。この3449世帯を当初構成していた3万2768人の約8%にあたる2599人が死亡。全世帯の33%が家族の1人以上を、28%が2人以上を亡くしていた。また、過半数にあたる57%が中央アフリカの首都バンギの出身だった。難民の護送団の大多数はバンギを出発地点にしている。
中央アフリカ出国前の死亡者の約85%にあたる1863人が男性で、特に33-44歳の年齢層が多かった。ただ、暴力は女性、子ども、高齢者にも及び、15歳未満の子ども209人と60歳以上の227人が命を落としている。出国を果たせず亡くなった人のうち、322人がチャドへの移動中に亡くなっており、そのうちの78%、252人の死因は暴力に結び付けられる。
<避難キャンプで孤立状態>
そのほか、MSFが中央アフリカ、チャド、カメルーンで収集した調査データと証言は、人びとが母国と避難先の国の両方で受けた暴力の広がりを明らかにしている。
中央アフリカの西側半分の地域に住んでいたイスラム系住民の大多数はわずか数ヵ月のうちに国外へ脱出した。バンギ、ロバイエ州ボダ、マンベレ・カデイ州ベルベラティおよびカルノーの各都市では、武装した国際部隊の守る避難キャンプに数千人のイスラム教徒がいるが、滞在環境は劣悪で先行きは不透明だ。避難キャンプで孤立状態に置かれたこの数千人は今も連日の脅威に直面している。
<避難先の援助不足も深刻>
チャド政府が5月に決定した国境封鎖と、カメルーン国内の人道援助不足も、周辺国への避難を阻む。MSFは6月、シドで新たに1700人以上の到着を確認。その中には中央アフリカからだけでなく、チャド国内の一時滞在キャンプから来た人もいた。はぐれてしまった家族とシドで合流するためだ。出入国の際、やむなく金銭を支払った人や、国境をより簡単に通り抜けられる場所を探して徒歩で長時間移動した人もおり、さらには銃撃を受けた人もいる。
6月13日、シドを目指し、川を渡ろうとしていた4人が殺害された。7月3日には、住まいの村を襲われ、中央アフリカを出国した100人がやはり行く手を阻まれている。100人の中には村への襲撃で銃創を負った人が少なくとも5人おり、1人は女性、3人は子どもだ。24時間歩き、たどり着いた国境のチャド側の町ベテルで、MSFの治療を受け、当局との交渉を経て、ようやくロゴン・オリエンタル州ゴレの病院への搬送が認められた。
カメルーンに入国できた人びとも、数ヵ月の避難生活で疲弊し、傷ついている。健康状態は特に栄養面が深刻で、約半数の子どもが栄養失調に陥っている。
MSFフランス会長のメゴ・テルジアン医師は「今回の調査は暴力の凄惨さを伝えるものですが、最悪な時期が過ぎたことを示唆するものではありません。どうにか暴力を逃れ、チャドやカメルーンにたどり着いた数十万人への援助が今も大幅に不足しています」と訴える。
MSFは1997年から中央アフリカで活動を続けている。現在は、国内15ヵ所余りで合計2300人以上が5つのMSFオペレーション事務局の医療・外科プログラム従事。チャド南部、カメルーン東部でも中央アフリカ人難民を対象に活動している。
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