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腹部放射線治療後に起こる腸線維症のメカニズムを解明 好酸球除去抗体による革新的治療法に期待

PR TIMES / 2018年2月23日 6時1分

 千葉大学大学院医学研究院粘膜免疫学/東京大学医科学研究所国際粘膜ワクチン開発研究センター自然免疫制御分野・植松智教授の研究グループは、これまで治療法のなかった腹部放射線治療後の重篤な合併症である腸線維症において、好酸球(注1)が重要な役割を果たすことを発見し、発症のメカニズムを解明しました。好酸球除去抗体の投与が、放射線照射後の線維化を著しく抑制したことから、新規治療法の開発につながることが考えられます。




研究成果の概要


[画像: https://prtimes.jp/i/15177/250/resize/d15177-250-626482-0.jpg ]

1.腹部放射線治療後に起こる腸線維症のメカニズムを解明
 放射線誘発性腸線維症(注2)は、骨盤内腫瘍または腹膜転移のための腹部放射線療法後の重篤な合併症で、特に小腸の粘膜下組織に顕著な線維化を引き起こします。この病態には、粘膜下組織での活性化好酸球の過剰浸潤が関連していました。腹部放射線照射後、腸管陰窩では慢性の細胞死が誘導された結果、細胞外にアデノシン三リン酸(ATP)(注3)の漏出を引き起こし、陰窩直下の筋線維芽細胞を活性化させました。この活性化筋線維芽細胞は、粘膜下に好酸球を浸潤させるとともに、活性化させることが分かりました。粘膜下の活性化した好酸球は、TGF-βの産生を介して、逆に筋線維芽細胞からのコラーゲン産生を促し、粘膜下に著明な線維化を誘導することが明らかになりました。

2.好酸球除去抗体による革新的治療法
 今回、協和発酵キリン株式会社との共同研究において、新規にマウスInterleukin (IL)-5 receptor(R)αを標的とした好酸球除去抗体を開発しました。この抗体の投与によって、腸管の好酸球浸潤は消失し、放射線誘発性腸線維症は、顕著に改善しました。以上のことから、好酸球を標的とした抗体治療を行うことによって、放射線誘発性腸線維症の新しい治療戦略を示すことができました。


今回の研究成果によって期待されること

 放射線誘発性腸線維症は、腹部放射線治療後に起こる重篤な合併症であり、これまで治療法がありませんでした。好酸球除去抗体の投与は、腸管の線維化を抑制することができ、放射線治療後の患者さんの合併症を防いで、QOL(Quality Of Life)の低下を回避できると考えます。

 この成果を報告した論文は、2018年2月21日(米国東部時間)発行の米国学術誌Science Translational Medicineオンライン版にて発表されます。なお、本研究は、AMED免疫アレルギー疾患等実用化研究事業(免疫アレルギー疾患実用化研究分野)における研究開発課題「腸管免疫統合的制御による炎症性腸疾患新規予防・治療戦略研究開発(研究開発代表者:清野宏)」の一環として行われました。


用語解説
注1)好酸球・・・白血球の一種である顆粒球の一つである。アレルギーや寄生虫感染で重要な役割を果たす。
注2)放射線誘発性腸線維症・・・放射線による晩発性の腸管障害の一つである。腸管の繊維化から、狭窄、蠕動障害が起こる。
注3)アデノシン三リン酸(ATP)・・・アデノシンのリボースに、3分子のリン酸がつき、2個の高エネルギーリン酸結合を持つ化合物のこと。ATPは、細胞内に存在し、生命活動に必須のエネルギー産生を制御する。細胞が障害を受けると、ATPが細胞外に流出し、その受容体を介して様々な作用を及ぼすことが知られている。

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