『エクソダス アメリカ国境の狂気と祈り』、第43回 講談社本田靖春ノンフィクション賞、受賞!
PR TIMES / 2021年7月16日 8時45分
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第43回 講談社本田靖春ノンフィクション賞の選考会が7月15日15時30分から行われ、フリージャーナリスト村山祐介さんの『エクソダス アメリカ国境の狂気と祈り』(新潮社刊)の受賞が決定しました。
2017年、当時、朝日新聞グローブ記者だった村山さんは「トランプの壁」の取材を始めました。以来、足掛け2年半、文字通り歩き続ける取材で、米・メキシコ国境を目指す移民たちが、メキシコのみならず、中南米各地、さらにはアジア、アフリカからも来ていたことを明らかにします。それは地球規模に展開する「格差」が吹き溜まる現場を世に知らしめることでもありました。
村山さんは移民たちと行動をともにしながら、ジャングルを越え、小舟で荒海を渡り、ギャングが仕切るスラム街にも入りました。自らの内に生じた疑問を一つ一つ解き明かすために足で事実を追い求めた村山さんの行動には、今や失われつつある「記者」の在るべき姿を見ることができます。
本書はその後新聞社を辞めてフリージャーナリストとなった著者が、さらなる深奥部、本当に伝えなければならなかった危険な「分断世界」の実像を活写した完全書き下ろし作品です。
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村山祐介さんの受賞コメント
「受賞の報を聞き、嬉しく思っております。母国を逃れて、命がけで新天地を目指す人たちに託されたメッセージを、この1冊に込めました。報じられることも少ない世界の現実の一端を、これからも伝えていきたいと思っています。」
村山祐介(むらやま・ゆうすけ)
ジャーナリスト。1971年、東京都生まれ。立教大学法学部卒。1995年、三菱商事株式会社入社。2001年朝日新聞社入社。ワシントン特派員、ドバイ支局長、GLOBE編集部員、東京本社経済部次長などを経て20年3月に退社。米国に向かう移民の取材で18年の第34回ATP賞テレビグランプリのドキュメンタリー部門奨励賞、19年度のボーン・上田記念国際記者賞を受賞した。
『エクソダス アメリカ国境の狂気と祈り』の読みどころ
世界規模で起こる格差と分断の真実
本作品はアメリカとメキシコを隔てる国境に世界中の移民が終結する実情を、自らの足で丹念に歩き、緻密な取材で明らかにしたものです。
国境の砂漠地帯で息絶えてゆく移民たちの姿だけではなく、彼らを手引きする麻薬密売組織、さらには移民たちを捕らえる自警団や反対に水や食料をあたえるボランティアなど、どちらか一方に肩入れすることなく、あらゆる当事者にあたり、その真意を探っています。「それぞれに理由がある」――それがこの問題をより複雑にする要因となっています。
殺される子供たち
米国境を目指しているのがメキシコ人ばかりではなく、むしろそれ以外の中南米の国の人びとが多く、さらにはアフリカ、アジアからの人びとの姿もありました。このことは、日本はもちろんアメリカでもほとんど認識されていないことです。とくに中米エルサルバドルでは、青年ギャング団「マラス」が都市を支配し、その脅迫から逃れるため、多くの子供たちが危険を顧みず爆走する貨物列車に飛び乗り、国外脱出を図っています。「マラス」の勧誘を断ると、本人はもちろん一族皆殺しという現実がこの国には存在しますが、実はこの「マラス」はアメリカ由来の組織です。つまり、アメリカにも責任の一端があると言えるのです。
虐殺の地から南米のジャングルへ、そして脱出
南北アメリカの結節点にあたるパナマとコロンビアの国境地帯にダリエンギャップと呼ばれる密林地帯があります。猛獣や毒蛇、疫病、さらには山賊、麻薬密売組織、左翼ゲリラなど思いつく限りの困難が待ち受ける、まさに道なきジャングルで、探検家すら尻込みする場所として知られていました。しかしそのダリエンギャップに今、アフリカ、アジアの移民たちが集結して、国境を越えようとしているのです。その中には国際ニュースでもほとんど報じられないカメルーン国内の民族浄化から逃れてきた人たちもいました。筆者はこの地帯に潜入するため、小舟でカリブ海の荒波を渡り、ある町に辿り着きましたが、ひとたび入るとそこから脱出する術がないことがわかりました。果たしていかにしてそこを出たのか……まさに現地ルポルタージュの真骨頂というべきシーンです。
なぜ移民たちはそんな危険な場所を進むしかないのか。その背景には、私たち日本人も決して無関係とは言えない事情があります。そのことを本作を通じ、是非考えていただきたいと思います。
『エクソダス―アメリカ国境の狂気と祈り―』
村山祐介著
1,980円(税込)
発売日:2020/10/16
四六判変型 319ページ
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