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ヨウ素の高機能化:ヨウ素を導入した不斉有機触媒の開発に成功-医薬などの創生に有用な光学活性アミノ酸類の新規合成法-

PR TIMES / 2018年4月12日 18時1分

千葉大学(学長: 徳久 剛史)大学院 理学研究院 基盤理学専攻 荒井 孝義 教授 (ソフト分子活性化研究センター長、千葉ヨウ素資源イノベーションセンター長、分子キラリティー研究センター兼任)と鍬野 哲 助教(分子キラリティー研究センター)は、「ヨウ素とアミンが協調的に機能する高活性な有機触媒」の開発に成功しました。




【研究の背景と目的】


[画像1: https://prtimes.jp/i/15177/273/resize/d15177-273-895264-0.jpg ]

 分子認識の基本的な相互作用である水素結合は、生体内をはじめとして普遍的に存在しています。この水素結合は反応基質の活性化にも幅広く用いられていますが、高度な触媒化学を制御するに足る十分な官能基選択性を有しているとは言えません。現代の精密化学の推進では、特異的な活性化を達成するために、新奇な活性化様式の導入が求められています。
 「ハロゲン結合」は、明確な方向性をもち、ソフト性の高い化学種(官能基)を選択的に活性化できると期待できるため、機能性分子を創製するための新たな相互作用として注目を集めています。
しかしながら、「ハロゲン結合」は分子骨格のR-X結合の裏側に展開するσ*₋結合(σ₋hole)を用いて形成されるため、立体選択性など高度な構造認識を達成することは困難でありました。
 本研究では、ハロゲン結合を基軸とする高立体選択的不斉触媒の開発を目指しました。


【研究成果】

 ハロゲン結合は、ルイス酸の一種として理解できることから、ソフトなヨウ素と塩基性のアミノ基を有する酸‐塩基協調機能型触媒をデザインしました。このような触媒を用いることで、活性メチレンとシアノ基を有するマロノニトリルのような基質を効果的に活性化できると期待しました(図1)。

[画像2: https://prtimes.jp/i/15177/273/resize/d15177-273-509414-1.jpg ]
 図2に示す触媒Aの存在下、マロノニトリルのN-Bocイミンへの不斉マンニッヒ型反応を行ったところ、目的の付加体を48%収率、80% eeで与えました。ヨウ素が含まれていない触媒Bや、ヨウ素をメチル基に置き換えた触媒Cでは、目的化合物の光学純度(ee値)が低下したことから、触媒中でヨウ素が重要な役割を担っていることがわかります。
[画像3: https://prtimes.jp/i/15177/273/resize/d15177-273-291703-2.jpg ]

 さらに収率の改善と選択性の向上を目指して光学活性第三級アミン部位の構造について精査した結果、シンコナアルカロイド由来の含ヨウ素触媒を開発することで、高立体選択的な不斉マンニッヒ型反応の開発に成功しました(図3)。本触媒反応の一般性は広く、イサチン由来のケチミンにも適用可能でした。

[画像4: https://prtimes.jp/i/15177/273/resize/d15177-273-411842-3.jpg ]

 これらの生成物からは、天然及び非天然型(人造)の光学活性アミノ酸を合成でき、医薬など生物活性物質の創生に貢献するものであります。


【独創性・先駆性】

 ハロゲン結合ドナーをキラルな触媒へ導入し高立体選択的な触媒反応に成功した例はなく、未開拓な研究領域であります。ソフト性とハロゲン結合の直線性に着目した分子設計は独自の分子設計に基づくものであり、千葉大学から世界に先駆けて発信する研究となりました。


【社会貢献性・波及効果】

 ハロゲン結合供与部位を組み込んだ協同作用型有機塩基触媒、及びそれを用いる不斉反応の開発が達成されれば、今後、多様なソフト官能基含有分子を活用した不斉合成が展開できます。溶液中におけるハロゲン結合を自在に制御できるようになれば、ハロゲン結合を有する医薬やセンサーなど、新規機能性分子の創製にも繋がると期待できます。
本研究成果は、イギリス王立化学会出版のChemical Communications誌に掲載されました。
Kuwano, S.; Suzuki, T.; Arai, T. Chem. Commun. DOI: 10.1039/c8cc00865e.


[画像5: https://prtimes.jp/i/15177/273/resize/d15177-273-360632-4.jpg ]

【ソフト分子活性化研究センター】触媒化学、分析化学及びマテリアルサイエンスを融合することで分子認識と活性化の新概念を樹立し、国際的な高機能性ソフト分子創生研究拠点を構築すべく、平成30年4月1日に千葉大学に設置されました(センター長:荒井 孝義)。

[画像6: https://prtimes.jp/i/15177/273/resize/d15177-273-882007-5.jpg ]

【千葉ヨウ素資源イノベーションセンター】千葉が生産するヨウ素の高機能化を目指し、平成28年度文部科学省 地域科学技術実証拠点整備事業に採択されました。600MHz NMRやXPSなど最先端分析機器を整備し、産学官共同研究を推進する拠点として、平成30年春に西千葉キャンパスに竣工します(センター長:荒井 孝義)。
【関連ニュース】
千葉県産の「ヨウ素」資源は世界シェア21%!千葉大が世界をリードするヨウ素製品の製造拠点を設立:
http://www.chiba-u.ac.jp/general/publicity/press/files/2017/20170105_3.pdf
千葉大学と連携企業4社が5者合同の包括連携研究協定を締結しました:
http://www.chiba-u.ac.jp/others/topics/info/post_402.html

[画像7: https://prtimes.jp/i/15177/273/resize/d15177-273-427310-6.jpg ]

【分子キラリティー研究センター】キラルな光による物質制御を中心に、分子エレクトロニクス、キラル分子化学及び生命科学に関連する教員が連携し、分子キラリティーに関する学際研究及び国際活動を推進することを目的に平成29年4月1日に千葉大学に設置されました(センター長:尾松 孝茂)。
分子キラリティー研究センターHP:
http://www.tp.chiba-u.jp/MCRC/index.html

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