宿泊業の倒産、件数は前年度比66.7%増の125件 増加率が過去最高
PR TIMES / 2021年4月13日 18時15分
Go Toトラベルで需要回復するも新型コロナ関連倒産が急増
昨年より新型コロナウイルスの感染拡大で東京オリンピック・パラリンピックの延期やインバウンド需要が消失し、観光・宿泊業界は大打撃を受けている。頼みの綱だった「Go To トラベル」も昨年末に停止し、今年1月には再度の緊急事態宣言が発出され、宿泊業者は苦戦を強いられている。特に都市部ではコロナの感染者数の増加に伴い予約のキャンセルが相次ぎ、京都などの人気観光地エリアにおいては客室稼働率が10%台まで低下したホテルもあった。今後は新型コロナの収束がカギを握るが、コロナワクチンの普及などで需要回復となるか、動向が注目されている。
帝国データバンクでは、2000年度以降で宿泊事業を主業とする事業者〈法人・個人事業者、負債1000万円以上、法的整理)〉について集計・分析した。帝国データバンクでは、2000年度以降で宿泊事業を主業とする事業者〈法人・個人事業者、負債1000万円以上、法的整理)〉について集計・分析した。
<調査結果(要旨)>
2020年度の宿泊業者の倒産件数は前年度比66.7%増の125件となり、増加率が過去最高となった。また125件のうち、新型コロナウイルスの影響による倒産は72件に上り、全体の57.6%を占めた
業態別では「ホテル・旅館」(117件)が最多となり、前年度比で約1.7倍の増加となった。コロナ禍でインバウンド需要が激減し、緊急事態宣言後に宿泊予約のキャンセルや施設の休業で経営が立ち行かなくなったケースが目立つ
地域別では「中部」(30件)がトップ。「長野県」(10件)など団体旅行やスキー客の減少に新型コロナウイルスが直撃した事例もあった
負債額別では1億円~10億円が70件となり、全体の56.0%を占めた
件数・負債動向:倒産件数は過去3番目の高水準
[画像1: https://prtimes.jp/i/43465/282/resize/d43465-282-624673-0.jpg ]
2020年度(2020年4月~2021年3月)の宿泊業者の倒産件数は前年度比66.7%増の125件となり、増加率が過去最高となった。倒産件数の推移をみると、リーマン・ショックの影響を受けた2008年度(131件)、東日本大震災後の2011年度(130件)に次いで過去3番目に多かった。新型コロナウイルスの影響で、インバウント需要が激減。緊急事態宣言の発出や外出自粛の影響により2020年度上半期の時点ですでに73件発生しており、前年度(75件)の倒産件数に差し迫っていた。
しかし、下半期は「Go To トラベル」や雇用調整助成金など支援策が奏功し、52件に留まった。また2020年度に倒産した125件のうち、新型コロナウイルスの影響による倒産は72件に上り、全体の57.6%を占めた。
負債総額は前年度比10.9%増となる863億6600万円となった。負債トップは、関西や北海道でリゾートホテル事業を展開していたWBFホテル&リゾーツ(株)(大阪市北区、民事再生法、負債約160億円)となり、関西屈指の設備を誇るリゾートホテル「ロイヤルオークホテルスパ&ガーデンズ」運営の(株)ロイヤルオークリゾート(滋賀県大津市、破産、負債約50億円)、山口県萩市で「萩本陣」の名称で旅館を経営していた(株)BJC(山口県萩市、特別清算、負債約40億円)が続いた。
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業態別動向:「ホテル・旅館」が最多、前年度比1.7倍増
業態別の内訳をみると、2020年度は「ホテル・旅館」(117件)が最多となり、前年度比で1.7倍の増加となった。宿泊業は設備投資費用や人件費が嵩み、多額の有利子負債を抱える業者が多く、インバウンドや東京オリンピック・パラリンピックに向けて新規開業や施設の改修を行っていた宿泊施設は大打撃を受けている。コロナ禍で海外からの訪日外国人旅行客が激減し、緊急事態宣言後に宿泊予約のキャンセルが相次ぎ施設の休業を余儀なくされ、経営が立ち行かなくなったケースが目立つ。
2020年度はデザイナーズカプセルホテル「ファーストキャビン」運営の(株)ファーストキャビン(東京都千代田区、破産、負債約11億3000万円)グループの経営破たんが「簡易宿所」が増加した要因となった。また従来であれば、スポンサーやM&A(合併・買収)で再建できた可能性がある宿泊業者においても新型コロナウイルスの長期化でスポンサーが見つからず、倒産を余儀なくされたケースもあった。
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地域別動向:「中部」が最多、スキー客減少に新型コロナが直撃
地域別の内訳をみると、2020年度は、「中部」(30件)がトップとなった。前年度に比べて1.5倍の増加となった。「中部」の内訳をみると「長野県」(10件)が最も多く、スキー宿泊客の減少で業績が悪化するなか新型コロナウイルスの影響が追い打ちとなった事例もあった。次いで、「近畿」(23件)、「関東」(18件)が続いた。
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負債額別:「1億円~10億円未満」が56%占める
負債額別にみると、2020年度は「1億~5億円未満」(49件)が最多となり、次いで「1000万~5000万円未満」「5億~10億円未満」「10億~50億円未満」がそれぞれ21件となった。1億~10億円が70件となり、全体の56.0%を占めた。
[画像5: https://prtimes.jp/i/43465/282/resize/d43465-282-327877-4.jpg ]
起爆剤の「Go To トラベル」が停止、今後も倒産増加する見込み
2020年度の宿泊業者の倒産件数は前年度比66.7%増の125件となり、増加率が過去最高となった。倒産件数の推移をみるとリーマン・ショックの影響を受けた2008年度(131件)、東日本大震災後の2011年度(130件)に次いで過去3番目に多かった。緊急事態宣言の発出や外出自粛の影響により2020年度上半期の時点ですでに73件発生しており、前年度(75件)の倒産件数に差し迫っていた。しかし、下半期は「Go To トラベル」や雇用調整助成金などの支援策が奏功し、52件に留まった。
昨年より政府の各種支援策やコロナ緊急融資で延命している業者が多く、倒産は抑制傾向にある。一方で、コロナ禍で宿泊業者の身売り案件が増えているが、過去の設備投資による有利子負債を抱え、インバウンド需要も見込めないことから昨年破産したカプセルホテルのファーストキャビンのように、スポンサーが見つからず破産を余儀なくされる例が増加した。
宿泊業者にとっては一縷の望みだった国の観光支援事業「Go To トラベル」も昨年12月28日から全国で停止されている。新型コロナウイルスの感染拡大が続き政府は再開に慎重な姿勢を見せており、1年で最も需要が多いゴールデン・ウイークなどの大型連休や夏休みシーズンまでに再開しない可能性もある。今後も全国的に宿泊業の倒産が高水準で推移していくだろう。
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