アフガニスタン:病院爆撃の原因調査に国際事実調査委の始動を呼びかけ
PR TIMES / 2015年10月7日 20時9分
国境なき医師団(MSF)インターナショナル会長のジョアンヌ・リュー医師は10月7日、スイス・ジュネーブの国連欧州本部にて会見を行ない、10月3日に起きたアフガニスタン・クンドゥーズのMSF医療施設への爆撃に関して、国際事実調査委員会(IHFFC)による調査を呼びかけた。これまでの米国とアフガニスタンによる説明は一貫性に欠けており、MSFは独立した機関による調査を求めていた。今回の爆撃でMSFはスタッフ12人、患者10人を失い、地域で唯一専門治療を行える場所であった外傷センターでの活動を停止に追い込まれた。会見での声明は以下の通り。
[画像: http://prtimes.jp/i/4782/290/resize/d4782-290-923460-1.jpg ]
「戦争にもルールがある」
10月3日未明、クンドゥーズのMSFスタッフと患者は、世界の紛争地で命を奪われ、「副次的被害」または「戦争では避けられない犠牲」と呼ばれる数知れない人びとの列に加わりました。国際人道法においては「過失」かどうかが問題なのではなく、その意図、事実および原因こそが問題なのです。
米国による今回の攻撃はMSFにとって、一度の空爆としては最も多くの命を奪いました。また、医療が最も必要とされている今この時に、クンドゥーズにいる何万人もの人びとは医療へのアクセスを失いました。本日はこう申し上げたいと思います。「もう限界です。戦争にもルールがあります」
クンドゥーズで、MSFの患者はベッドの上で焼かれて亡くなりました。MSFの医師、看護師、その他のスタッフは、仕事をしている中で命を奪われました。生き残ったスタッフは、互いに外科処置をし合わなければなりませんでした。医師のうちの1人は、同僚が救命に努めましたが、事務机を使った即席の手術台の上で亡くなりました。
本日は、この忌まわしい攻撃で亡くなった方々に哀悼の意を捧げます。そして、同僚の死に遭遇し、病院がまだ燃えている中、負傷者の治療を遂行したMSFスタッフに敬意を表します。
ジュネーブ諸条約への攻撃
今回の出来事はMSFの医療施設への攻撃というだけでなく、ジュネーブ諸条約への攻撃でもあります。これは看過できません。ジュネーブ諸条約は戦争のルールを定めるもので、紛争に際し、民間人を保護するために制定されました。傷病者と保健医療従事者、そして保健医療施設も保護の対象です。この諸条約によって、非人間的な状況に一定の人間性がもたらされるのです。
ジュネーブ諸条約は概念的な法的枠組みであるだけでなく、戦線付近で活動する医療スタッフの生死を分けます。この諸条約は、患者がMSFの医療施設を安全に利用し、私たちが攻撃の標的とならずに医療を提供することを認めるものです。
戦闘地域の保健医療施設への攻撃は禁じられているからこそ、私たちは保護されることを見込んでいました。それにもかかわらず、今回の空爆では子ども3人を含む10人の患者と、12人のスタッフが命を奪われました。
この攻撃の実態と実情は、独立性と公平性をもって調査されなければなりません。ここ数日の米国とアフガニスタンによる一貫しない説明を鑑みれば、なおさらです。米軍、北大西洋条約機構(NATO)軍、アフガニスタン軍の内部調査だけに頼るわけにはいきません。
今こそ国際事実調査委員会(IHFFC)を活用すべき
本日、MSFはクンドゥーズの攻撃について、IHFFCによる調査を求めることをお知らせします。同委員会はジュネーブ諸条約の追加議定書で制定され、国際人道法侵害の専門調査を目的に結成された唯一の常設組織です。事実が突き止められ、紛争下の保健医療施設の保護が改めて明言されるよう、各調印国に、IHFFCの始動をお願い申し上げます。
IHFFCは1991年から存在しますが、実働実績はありません。76の調印国の1つが調査を提案しなければならないのですが、各国政府は今まで、遠慮や怖さからその実例をつくることはありませんでした。今こそ、この調査が活用されるべき時です。
各国が「紳士協定」を隠れ蓑にし、それによって無法状態や責任逃れを生み出すことなどあってはなりません。医療施設が爆撃され、医療従事者および患者が命を奪われても付随的被害としか見なされず、単なる過失で片付けられることなどあってはならないのです。
このような私たちの反撃は、ジュネーブ諸条約の尊重のためです。医療に携わる者として、私たちの患者のために反撃に転じています。皆様にも、社会を構成する一員として、私たちとともに戦争にもルールがあるのだと声を上げていただきたいと思います。
国境なき医師団(MSF)インターナショナル
会長
ジョアンヌ・リュー
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