ロヒンギャ危機:バングラデシュの難民キャンプが危機的状況――援助拡大が急務
PR TIMES / 2017年9月22日 18時46分
ミャンマーから隣国バングラデシュに避難しているイスラム系少数民族ロヒンギャに対する援助拡大が急務となっている。難民キャンプの衛生状況は劣悪で、食糧不足、予防接種率の低さにより、健康被害の拡大が想定されている。国境なき医師団(MSF)は約3週間で1万3500人を超える患者の治療を行っているが、ニーズは膨大で、大規模な公衆衛生被害を避けるために人道援助の大幅な拡大が必要となっている。
[画像: https://prtimes.jp/i/4782/379/resize/d4782-379-503691-0.jpg ]
汚水と排泄物にまみれたキャンプ
3週間で少なくとも42万2000人のロヒンギャがミャンマーのラカイン州からバングラデシュへ逃れた。2016年10月に一連の暴力が始まって以降、バングラデシュにはすでに数十万人が避難していたが、今回さらに多くの難民が加わった格好だ。同国南東部では、クトゥパロンとバルカリという既存の難民キャンプが統合し、人口約50万人の過密な大規模キャンプとなり、世界的にも最大級の難民受入施設となっている。新たに到着した難民の大部分はこうしたキャンプに滞在しているが、住居、食糧、清潔な水、トイレが足りていない。
「キャンプは実のところスラムのような場所で、アクセスは悪く、援助を届けるのにも困難を伴います。起伏の多い地形で地滑りが起きやすく、トイレが全くありません。キャンプ内を歩くと、流れる汚水と排泄物の中を進むしかありません」。MSFの緊急医療コーディネーターのケイト・ホワイトはキャンプ内の劣悪な衛生環境を指摘する。
飲み水もわずかにしか手に入らないため、難民は水田や水たまり、そして手掘りの浅い井戸から集めた水を飲んでいる。こうした浅井戸は大抵、排泄物に汚染されてしまう。クトゥパロンのMSF診療所では、9月6日から17日にかけて487人が下痢性疾患の治療を受けた。ホワイトは、「MSFが連日受け入れている成人患者は脱水症で生死の境をさまよっています。これは成人患者にはめったに見られないことで、公衆衛生の緊急事態が今にも起こりかねないという前兆です」と話す。
食糧と医療も足りない
キャンプとその周辺における食糧の確保も困難となっている。新着の難民が人道援助に全面的に頼る一方で、周辺では物価が急騰、道路の不備で最も無力な人びととの接触すら難しい。食糧配給は不十分で、金銭をほとんど持っていない難民の多くは1日米飯1杯のみで暮らしている。「何日か食糧配給のなかった時は、バングラデシュ人の飲食店経営者から差し入れられたどんぶり1杯のご飯を6人家族で分けていたという難民もいました」(ホワイト)。
医療面でも援助は足りておらず、MSFの診療所をはじめとする医療施設も全く手が回っていない状況だ。複数あるMSF診療所は8月25日から9月17日までの約3週間に、合計で外来患者9602人、救急患者3344人、入院患者427人、暴力被害の負傷患者225人、性暴力被害者23人を受け入れているが、膨大なニーズの前では十分ではない。
大規模災害となる前に
ミャンマー国内におけるロヒンギャの予防接種率は低いことが知られており、バングラデシュの難民キャンプで感染症が集団発生するリスクも非常に高い。こうしたリスクを回避するには、はしかとコレラの包括的な集団予防接種を迅速に実施する必要がある。MSFはコレラやはしかの疑い症例と確定症例を1件も残さず速やかに抑止できるよう、クトゥパロンの医療施設に隔離用区画を予備的に用意した。
「住居、食糧、水・衛生の不足により、ちょっとしたことがきっかけとなって集団疾病を引き起こし、大災害にまで発展する恐れがあります。ここには公衆衛生分野の災害を引き起こす前提条件がそろっています」。MSF緊急対応コーディネーターのロバート・オウナスは、大規模災害になる前に対処する必要性を訴える。
バングラデシュにおけるMSFの活動
MSFは1985年からバングラデシュで活動。現在はコックスバザール県下の難民キャンプの近隣で医療施設と診療所を運営、基礎・緊急医療とともに、ロヒンギャ難民と地元住民を対象に入院診療・検査も提供。今回の難民の大規模移入を受け、水、衛生設備、医療活動を拡大している。バングラデシュ国内では他に首都ダッカのスラム地区カムランギルチャルで、心理ケア、リプロダクティブ・ヘルスケア、家族計画、産前診療、工場労働者のための産業保健プログラムを提供している。
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