<裁判官の地域手当への意識調査>裁判官の地域手当、弁護士の半数近くが金額を問題視
PR TIMES / 2024年8月8日 13時45分
津地裁の竹内浩史判事が今年7月、現職裁判官としては異例の国家賠償訴訟を起こしました。転勤と地域手当により実質的に報酬が減ったのは、下級裁判所の裁判官の報酬について「減額することができない」と定めた憲法80条2項に反するなどというものです。
裁判官も含めた国家公務員の地域手当は事実上人事院が定めています。もっとも高い東京23区では月給の20%が支給されますが、支給がない地域もあります。また、前任地の一定割合が支給される「異動保障」もありますが、期間は異動後2年間に限られます。
竹内判事は大阪高裁(16%)→名古屋高裁(15%)→津地裁(6%)と転勤し、現在4年目のため異動保障は終わっています。この間昇給がなかったため、過去3年間で報酬が計約240万円減ったと主張しています。
今回の裁判は、現職裁判官が国を訴えたことに加え、今年が地域手当の見直しの年であったことからも注目を集めています。
弁護士ドットコム株式会社(東京都港区、代表取締役社長 兼 CEO 元榮 太一郎)は、弁護士ドットコム(R)の会員弁護士281人(元裁判官7人を含む)を対象に、裁判官の地域手当に関する調査を行いました。
■ 調査概要
調査機関:プロフェッショナルテック総研(弁護士ドットコム株式会社内)
調査方法:弁護士ドットコム(R)会員弁護士を対象にウェブアンケートを実施
調査対象:弁護士ドットコム(R)の会員弁護士で回答が得られた281名
調査期間:2024年7月14日~18日
■ 結果サマリ
[表: https://prtimes.jp/data/corp/44347/table/434_1_c85c43e68b81ae5e24b0ab0166ae72df.jpg ]
1、地域手当の金額設定、弁護士の半数近くが「不当」
裁判官の地域手当について、(A)地域手当を設けることの是非と(B)現状の地域手当の金額の妥当性を尋ねました。
(A)地域手当を設けることについては「妥当」「やや妥当」が52.7%と過半数を超え、「不当」「やや不当」の23.9%を上回りました。
[画像1: https://prcdn.freetls.fastly.net/release_image/44347/434/44347-434-e5be9072f8f3022126b5102be9a55b0e-2855x1870.png?width=536&quality=85%2C75&format=jpeg&auto=webp&fit=bounds&bg-color=fff ]
一方、(B)現状の金額については「妥当」「やや妥当」の26.7%に対し、「不当」「やや不当」が43.0%で逆転する結果となりました。
弁護士の多数は、裁判官の地域手当自体には肯定的であるものの、現状の金額設定には問題があると考えていることが分かります。
[画像2: https://prcdn.freetls.fastly.net/release_image/44347/434/44347-434-4f746065df68ecf5e211bef44d63fb28-2855x1870.png?width=536&quality=85%2C75&format=jpeg&auto=webp&fit=bounds&bg-color=fff ]
2、「不当」の理由、最多は「裁判官の判断がゆがむから」
裁判官の地域手当について問題があると感じる弁護士に対し、その理由を複数回答で尋ねました。最多は「裁判官の判断がゆがむから」で45.4%でした。人事評価を気にして、裁判官が裁判所組織の意向に沿った判断をしてしまうことを懸念している様子がうかがえます。
続いて多かったのが「全国均一の司法が実現できなくなるから」で41.5%でした。組織にとって都合の良い裁判官が地域手当の高い勤務地に配属されるなどして、裁判官の能力に地域差が出ているのではないかと危惧している弁護士が多いようです。
以下、「金額の算定方法に問題があるから」(36.9%)、「同一労働同一賃金に反するから」(35.4%)、「民間や地方公務員の賃金格差の固定化、採用に影響するから」(14.6%)、「その他」(7.7%)と続きました。
[画像3: https://prcdn.freetls.fastly.net/release_image/44347/434/44347-434-54f914ce6f5280a94ab4d61783b38120-3217x1471.png?width=536&quality=85%2C75&format=jpeg&auto=webp&fit=bounds&bg-color=fff ]
3、元裁判官の弁護士「転勤配置が裁判官統制の一番有力な手段となっている」
裁判官の転勤制度について自由にコメントしてもらったところ、元裁判官の弁護士からは次のような意見がありました。
【裁判官の判断がゆがむ】
・転勤配置が裁判官統制の一番有力な手段となっている。判事任官研修の時に人事課長が「家を買った以上は一つ拠点ができるから、単身赴任をする際の負担が半減するし、辞めることもできないから単身赴任をさせる条件がそろう」と話したことが忘れられない
・異動が差別人事に利用されている。組織内での評価を気にして、裁判官の判断が歪む。優遇される裁判官は、東京中心に転勤して、ずっと高額の地域手当を得、差別される裁判官は、ずっと地域手当がほとんどないまま転勤する
【転勤や地方勤務の負担が大きい】
・転勤は家族に多大な影響を与え、退職の原因になった若い裁判官を何人もみている
・地方の方が都会よりも生活費、文化的費用、子の大学費用等が必要なのであるから、むしろ僻地手当を出すべき
【嫌なら転勤を拒否するべき】
・子どもに「ふるさと」を持たせるため、(裁判官は原則意思に反して転所等されないとする裁判所法48条を行使して)約10年間転所をともなう転勤に同意しなかった。個々の裁判官が自身にメリットがあれば転勤に同意すればよいだけ
4、弁護士の8割が提訴を「評価」
現職の裁判官が実名で国を訴えたことについての賛否を問うたところ、「評価する」「やや評価する」が80.1%となり、弁護士の多くが竹内判事の提訴を好意的に見ていることが分かりました。
その理由として以下のような意見がありました。
・どの裁判官も思っていたけど言えなかったことを、弁護士任官の裁判官が訴訟で世に問題提起をした意義は非常に大きい
・地域手当の格差については、裁判官からも不満の声が上がっており、辞める若手裁判官も多いと聞くため、改善が必要
一方で、裁判の行方自体については、「問題意識は理解できるが、法的根拠が難しい」「担当裁判官としては現行制度を否定する判決は書きづらいのではないか」などの意見も多く見られました。
[画像4: https://prcdn.freetls.fastly.net/release_image/44347/434/44347-434-845624753c8c492408470cb03ebf964e-2869x1865.png?width=536&quality=85%2C75&format=jpeg&auto=webp&fit=bounds&bg-color=fff ]
◆弁護士ドットコム株式会社について:https://www.bengo4.com/corporate/
本社:東京都港区六本木四丁目1番4号 黒崎ビル
設立日:2005年7月4日
資本金:464百万円(2024年3月末現在)
代表者:代表取締役社長 兼 CEO 元榮 太一郎
上場市場:東京証券取引所グロース市場
事業内容:「プロフェッショナル・テックで、次の常識をつくる。」をミッションとして、人々と専門家をつなぐポータルサイト「弁護士ドットコム(R)️」「税理士ドットコム(R)️」「BUSINESS LAWYERS(R)️」、契約マネジメントプラットフォーム「クラウドサイン(R)️」を提供
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