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世界初、遺伝性早老症ウェルナー症候群の診療ガイドラインを英文で発表

PR TIMES / 2021年1月22日 19時45分

 千葉大学大学院医学研究院 横手 幸太郎 教授(千葉大学医学部附属病院 病院長)、国際医療福祉大学医学部 竹本 稔 主任教授らを中心とした国内8機関14名からなる研究グループは、遺伝性早老症ウェルナー症候群の診療ガイドラインを発表しました。このガイドラインおよび関連する研究成果は、2020年10月~12月にかけて日本老年医学会の公式英文誌Geriatrics & Gerontology Internationalに掲載されました。


研究の背景


 ウェルナー(Werner)症候群は、20歳代から白髪、脱毛、両目の白内障がおき、手足の筋肉や皮膚もやせて固くなり、急速に老化が進んでいくようにみえることから、「早く老いる」病気=早老症のひとつといわれています。国内の推定患者数は推計700名から2000名、世界の報告の6割を日本人が占める、日本に多い病気です。1996年にウェルナー症候群の原因遺伝子は同定されましたが、その早老機序は十分には明らかになっておらず、根本的な治療法はまだありません。
 かつては、多くのウェルナー症候群の患者さんが40歳代で悪性腫瘍や心筋梗塞などにより亡くなっていましたが、今では治療法の進歩により、寿命が延びて50~60歳代の方もいます。寿命は延びたものの、糖尿病、脂質異常症(コレステロールや中性脂肪の異常)などの代謝性疾患、動脈硬化性疾患、悪性腫瘍 (主に肉腫)を合併することが多く、加えて下腿から足部を中心として深いキズがいつまでも治らない難治性の皮膚潰瘍(上図)が好発するため、その疼痛や感染症によって生命予後や生活の質(QOL)を大きく損なっています。さらに、希少疾患がゆえに、ウェルナー症候群との診断に至らない症例や、診断を受けても適切に治療を受けられていない方も多く見受けられ、なお多くの患者さんが大変な日常生活の苦労を強いられています。


研究の成果

 今回、本研究グループはウェルナー症候群に合併する、
1.脂質異常症、脂肪肝 2.サルコペニア 3.糖尿病 4.骨粗鬆症 5.感染症
6.皮膚潰瘍 (皮膚科治療) 7.下肢潰瘍(形成外科治療) 8.アキレス腱石灰化
 の8つの項目に関して、2012年に発表した日本語版の診療ガイドラインに1996年から2020年までの臨床論文のシステマティックレビューや最新の治療経験を加え、より実臨床に即した診療ガイドライン (management guideline)を作成し、世界で初めて英文で発表しました。
 この診療ガイドラインが用いられることにより、日本国内のみならず世界中のウェルナー症候群の治療が標準化され、患者の生命予後やQOL向上に寄与することが期待されます。

これまでの経緯および研究プロジェクトについて

 本研究グループは、平成21~25年度の厚生労働科学研究費補助金 難治性疾患克服研究事業により25年ぶりの診断基準改訂と治療の標準化や世界初のWS診療ガイドライン(日本語版)を作成し、平成26年度の政策研究事業によりウェルナー症候群 重症度分類を作成しました。このような成果をもとにして、平成22年6月に設立された「ウェルナー症候群患者家族の会」並びに多くの希少疾患の患者団体が加盟する「日本難病・疾病団体協議会」による研究協力、難病法制定や指定難病の拡充などの要望活動も加わり、平成27年(2015年)5月、ウェルナー症候群は指定難病に認定されました。
 さらに日本医療研究開発機構研究費(難治性疾患実用化研究事業)で現在おこなわれている「早老症レジストリー」(研究代表者 横手幸太郎)では多数の患者様の臨床経過が経時的に登録されています。このような早老症レジストリーは世界的にも数少ないものであり、本研究との情報共有により、本疾患の病態解明・治療法開発に貢献するのみならず、ヒトの「老化」や「加齢とともに増える疾患(動脈硬化、がん、糖尿病など)」の科学的理解にも有益な情報をもたらさすことが期待されます。

参考:千葉大学大学院医学研究院 内分泌代謝・血液・老年内科学ウェブサイト
   「ウェルナー症候群」※日本語版診療ガイドラインもこちらからご覧いただけます。
   https://www.m.chiba-u.jp/dept/clin-cellbiol/werner/

<研究グループ>
横手幸太郎 千葉大学大学院医学研究院
竹本稔 国際医療福祉大学医学部
塚本和久 帝京大学医学部
森聖二郎 東京都健康長寿医療センター
窪田吉孝 千葉大学大学院医学研究院
中神啓徳 大阪大学 医学系研究科
茂木精一郎 群馬大学大学院医学系研究科
葛谷雅文 名古屋大学未来社会創生機構
谷口晃 奈良県立医科大学医学部
田中康仁 奈良県立医科大学医学部
谷口俊文 千葉大学大学院医学研究院
前澤善朗 千葉大学大学院医学研究院
越坂理也 千葉大学大学院医学研究院
加藤尚也 千葉大学大学院医学研究院

<研究援助>
厚生労働科学研究費補助金交付 (難治性疾患政策研究事業)
早老症の医療水準やQOL向上を目指す集学的研究(H30-難治等(難)-一般-009)

日本医療研究開発機構研究費(難治性疾患実用化研究事業)
早老症ウェルナー症候群の症例登録システム構築・運営に基づくデータ集積とエビデンスの創生
(課題管理番号:20ek0109353h0003)

<研究協力>
ウェルナー症候群患者家族の会
http://8nkanja.8nkazoku.justhpbs.jp/

日本難病・疾病団体協議会
https://nanbyo.jp/

※ 関連論文一覧は、千葉大学ウェブサイト記事よりプレスリリース本文をご覧ください。
https://www.chiba-u.ac.jp/others/topics/info/post_945.html

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